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Jを目指せ! by 木次成夫

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260回 JFL前期15節 アルテ高崎対松本山雅
by 木次成夫

JFL以下の魅力のひとつは、ファン(サポーター)と選手・監督などスタッフの距離が相対的に近いことだと思います。スタンドからの観戦では知りえないことを、直接的なコミュニケーションで補い、相互理解を深めることが比較的容易。そして、ある程度の『台所事情』を知れば、たとえ低迷しても、逆に愛着が湧く(かもしれません)。『(サッカー・)ファミリー』とは、そういうものではないでしょうか?

「サポーター数が少ないから」と言ってしまえば、それまでかもしれませんが、アルテ高崎も、そんな相互関係があるクラブです。試合後、撤収作業の合間に監督と談議したり、選手を激励したり――。

アルテは昨季17位(7勝=うちホームは2勝=8分19敗)。今季は前期14節終了時点で13位(2勝=共にアウェー=2分3敗)。昨季の前期12節(5月23日)、流通経済大学FC戦以降、ホームで勝っていません。

その要因として考えられるのが、『プレー報酬0円のアマチュア・チーム』の限界です。CBで主将の増田清一(24歳=加入3年目、前TDK←神戸←神戸ユース)いわく、「僕もそうですが、居酒屋でアルバイトをしている選手が多いです。金曜日と土曜日は、お客さんが多いですから。僕は基本的に週に5日、バイトをしているのですが、夜中1~2時くらいまで勤務することもあります」。

つまり、試合前日にバイトを休んで移動するアウェーの方が、試合前日夜までバイトをするホームよりも、フィジカルコンディション面で良い場合が“ありえる”ということ。もちろん、ホーム試合前日のバイトを軽減することができれば良いのですが、アウェー遠征で欠勤した分を補うために、ホーム前後はバイトを目いっぱい入れざるをえない選手も多いようです。

昨季を振り返ると――、

*主に飛行機で移動したアウェーは、
対琉球(沖縄)、前期11節=5月16日、2-1で勝利
対ホンダロック(宮崎)、前期14節=8月22日、1-0で勝利

*バス移動ながらも、比較的近場のアウェーのうち、
対ホンダ、前期3節=3月28日、2-1で勝利
対町田ゼルビア、前期13節=5月30日、3-2で勝利
対ジェフ・リザーブズ、後期8節=9月19日、3-1で勝利

ちなみに、V・ファーレン長崎とのアウェー(後期12節=10月13日、佐世保)は高崎からバスで移動し、0-1で敗北。「(片道)20時間以上かかりました」(増田)ということを考慮すれば、大健闘と言えるでしょう。

今季の2勝は、横河武蔵野(前期10節)とブラウブリッツ秋田(前期14節)とのアウェー。そして、『約1年ぶりのホーム勝利』が期待された山雅戦は……。

●6月12日 JFL前期15節
アルテ高崎 1-5 松本山雅

[得点経過]
29分 0-1 (山雅:飯田真輝)
49分 1-1 (アルテ:MF松尾昇吾、23歳=加入2年目、前・国士館大学)
62分 1-2 (山雅:飯田真輝)
76分 1-3 (山雅:木島徹也)
83分 1-4 (山雅:木島徹也)
89分 1-5 (山雅:弦巻健人)

[試合総括]
山雅は加藤善之GMの監督就任後、初試合。前監督の吉澤英生氏が指導していた時と比べて、「特に指導などで変わったことは、ありません」(複数の選手)ということですが、“幸先の良い”大勝を飾りました。アルテは同点に追いついた後、自分達のリズムで試合を進めた時間帯もあったものの、「個の能力で負けてしまった」(アルテの後藤義一監督)。

[真っ向勝負がアルテの敗因]
アルテのスタメン平均年齢は23.7歳。チーム全体として、サッカー教育に力を入れている大学を卒業した選手が多数派です。そして、就任3年目の後藤義一監督は丁寧にパスを“つなぐ”ポゼッション・サッカーを志向しています。チームの中心はCBとしては小柄な173㎝の増田。クレバーなプレーが身上で、「できるだけDFラインを高くしていこうと意識しました」(増田)という山雅戦も、随所で“さすが”と感じさせるプレーを披露しました。最終的に大差になったのは、チーム全体的なメンタル面、スタミナ面の問題。もし、守備を重視した“引き気味の”サッカーを選択していれば、結果は違っていたかもしれないとは思いましたが……。

[亡き祖父に捧げるゴール]
この試合、アルテ選手は「松尾選手の御祖父が試合の2日前に亡くなられたので、喪章を付けて試合に臨みました」(アルテ高崎関係者)。そして、松尾がゴールを決めた後は、チームメイトたちと喪章を天に突きあげて歓喜。CKからの“こぼれ球”をMF山藤健太(24歳、前・平成国際大学)がクロス→松尾が右足ボレー。山雅守備陣の隙を狙った、素晴らしいシュートでした。

[山雅効果]
観客数、1727人(公式発表)。うち、一見して山雅ファンは1400~1500人程度。昨季の同カードは、1021人(前期10節、2-2で引き分け)でしたから、山雅サポーター(ファン)の危機感が観客増に影響したということでしょう。アルテの昨季ホーム平均観客数は430人(ジェフ・リザーブズ、佐川印刷に次ぐワースト3)ですから、山雅効果は絶大です。

今後も、各地でアウぇー・ジャックをしてほしいものです。アルテ戦は、リズム班の主力2人(大太鼓と小太鼓)が(仕事の事情でしょうか?)参戦していない状況下、若手の頑張りで勝ちました。山雅にとって、リズムに合わせて“飛び跳ねる”応援は、最大の武器。バックアッパーの台頭は幸いだと思います。

[写真]山雅の先制点を決めた飯田真輝が松田直樹(3番)らと歓喜
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