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Jを目指せ! by 木次成夫

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265回 JFL後期3節 『町田の16時、長野の13時』
by 木次成夫

 前回に続き、『猛暑のサッカー』を体感しました。16日は町田市、17日は長野市。そして、17日の夜中はTVで“なでしこ”観戦――。そして、感じたのは、競技場などの『Jリーグ基準』をクリアすることもよりも、大事なことがあるのではないかということ。例えば、

(1)5000人収容程度の小規模でも、猛暑対策を含めて、心地よく観戦できる競技場の整備。
(2)Jリーグ・クラブにも義務付けられていない女子チームの整備。

 もし、トップチームの所属がJFL以下でも、男女の下部組織が全て充実しているクラブが身近にあったら? それもまた、楽しい状況ではないでしょうか?

●7月16日 JFL後期3節
町田ゼルビア 2-0 ツエーゲン金沢

[得点経過]
24分 1-0(MF大前博行=30歳=加入3年目、前・佐川急便中国)
*右サイドからスローイン→FWユン・ソンチョル→ダイレクトでミドル・シュート

31分 2-0(MF鈴木崇文=23歳=加入2年目、前・東京学芸大学)
*直接FK

[試合総括]
 後期2節終了時点でゼルビアは10位(勝ち点20)で、ツエーゲンは4位(同22)。過去6試合、ゼルビアは2勝3分1敗で、ツエーゲンは5勝1分。今季、ツエーゲンを見るのは初めてゆえ、期待していたのですが、試合は意外なほどゼルビアの完勝でした。

「ゼルビアが良いサッカーをしました。勝利おめでとうと言いたいです。(ツエーゲンは)運動量でも、パスワークでも勝てませんでした」(ツエーゲンの上野展裕監督)。

 ゼルビアが左右バランス良くボールを動かしていたのに対して、ツエーゲンは全体的に単調。シンプルかつスピーディなサイドアタックを仕掛けようという意図は感じられたものの、『3人目の動き』や、サイドを変えるプレーが少ないため、『一方通行』気味でした。

 典型的だったのは、ツエーゲン左MF古部健太(25歳、前・横浜Fマリノス)と右SB津田和樹(28歳、前・甲府)の攻防です。スピードが武器の古部を、津田が的確なポジション取りで、ほぼ完封。津田の本職は左SB。昨季からはCBでプレーすることが多かったのですが、右SBでも『ベテランの味』を発揮しました。ちなみに、本来は右SBの藤田泰成(28歳、前・徳島)は左SB。さらには、CBの1人はボランチが本職の太田康介(28歳、前・横河武蔵野)――。「面白いでしょ?」(ゼルビア選手の1人)。

[町田の16時]
 16時キックオフ、気温31.2度、観客数=2576人(公式発表)。町田市立陸上競技場が改修されて、初めての夏。自然の地形を活かした競技場の素晴らしさを、改めて実感しました。猛暑のピークを過ぎた後に試合開始。夜間照明設備を使用する必要が無い時間帯に試合終了。周辺に樹木が多いことも影響しているのは明らかですが、相対的に快適な観戦ができました。試合後、19時前後には最寄りの鶴川駅や町田駅(小田急)などに着くことが可能ですから、打ち上げ(飲み会)をするにも適した時間設定と言えます。

 自然と調和した競技場、節電(運営経費削減)、地域活性化への“きっかけ”など、ゼルビア関係者は、もっと自画自賛すれば良いのに――。今後は是非、定評のある「スタジアム・グルメ」を、さらに進化させ、『アウェー名産品』の直売などもしてほしいものです。例えば、松本山雅戦(7月30日)で、スイカや高原野菜とか。

●7月17 日 JFL後期3節
長野パルセイロ 0-0 佐川印刷

[試合総括]
 13時キックオフ、気温37.9度、観客数1570人(公式記録)。佐川印刷は13日(水)に前期5節のMIOびわこ草津戦を開催したため、『中3日のアウェー』。優勝を目指している国体(国民体育大会)や国体予選(ミニ国体)などの日程も考慮すると、「試合を組める日が他に無かった」(佐川印刷関係者)のだとか。しかし、パルセイロは有利な状況を活かすことが、できませんでした。試合後、薩川了洋監督は、「質、質、質……」と連呼するなど、「サッカーの質が低い」ことを嘆きまくり。前節、2-0で勝利した栃木ウーヴァに比べると、佐川印刷の選手層が厚いことも、パルセイロが崩しきれなかった要因だと思います。

[Jリーグ基準よりも大事なこと]
 パルセイロのホーム、南長野運動公園総合球技場は、陸上競技用トラックがないため、サッカー観戦には適しています。その一方で、屋根が全くない上に、付近に日陰になる場所も皆無。つまり、真夏の観戦には適していません。雨をしのぐ場所もないため、雨天の観戦も不向き。競技場の形状は、観客数にも影響しているでしょう。『町田の16時』と比較するために行った面もあるとはいえ、想像以上。観ているだけで、キツかったです。

 現在、パルセイロ支援団体は「Jリーグ基準の競技場建設」に向けた署名運動を行っていますが、まずは『南長野』を上手く改修した方が有意義だと思います。幸いにも、パルセイロには女子チーム(チャレンジリーグ所属パルセイロ・レディース)もあるため、“なでしこブーム”に乗ることは容易。この際、教員免許を持っているSB高野耕平(26歳、前・東京学芸大学)らをコーチに起用して、女子のユース以下も一気に整備する策もアリでは? 

[後3節終了時点の順位(上位10チーム)]
1位:SAGAWA SHIGA(28)
2位:ホンダロック(24)
3位:Honda(24)
4位:町田ゼルビア(23)=Jリーグ準加盟
5位:松本山雅(23)=Jリーグ準加盟
6位:カマタマーレ讃岐(23)=Jリーグ準加盟
7位:長野パルセイロ(22)
8位:V・ファーレン長崎(22)=Jリーグ準加盟
9位:ツエーゲン金沢(22)
10位:琉球(22)

 混戦模様は相変わらず。リーグ戦としては面白いですが……。昼間の試合は全て、キックオフを15時以降に変更した方が、観客増につながるのでは? 

[写真]ゼルビアMF柳崎祥兵とツエーゲンMF本田真吾の攻防

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