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ブラジルサッカー通信 by 藤原清美

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ブラジルW杯準備の裏側で
by 藤原清美

 先日、2014年のブラジルW杯決勝会場となる、マラカナンスタジアムの改修工事を撮影に行った。1950年のW杯でも決勝が行われたブラジルサッカーの聖地。今回は、2013年コンフェデレーションズカップ決勝でも使用される。

 ニュースになるのは、例えばFIFAが準備の遅れに対して懸念を示したときや、建設作業員たちが待遇改善を要求して、ストや抗議デモなどを行ったとき。実際、来年2月完成予定なのに、まだまだこういう状態なのだと、目で見て心配にもなる。

 それでも、あの慣れ親しんだマラカナンが、こうして全面改修され、再び決勝の地となるんだと思うと、今しかない、その工事現場に立って、涙が出るような感動を覚えた。

 ブラジルでは、W杯の準備に関しても、さすがサッカーの国と思うような対策が取られている。日々、黙々と作業を続ける建設現場の労働者たちへの配慮が、その一つだ。

 マラカナンでは、定期的にサッカーの英雄たちが招待され、建設労働者たちとの親睦会が開かれている。ジーコ、ザガロ、ホベルト・ジナミッチ…。みんな、労働者たちとテーブルを囲んで、コーヒーを飲みながら、W杯の思い出などを語り合った。

 日々、仕事に明け暮れる労働者たちにとって、「W杯の舞台をつくる、その一端を担っているんだ」と実感できるこうした機会は、必ずや、誇りと明日へのエネルギーにつながるに違いない。

 開催都市の一つであるブラジルの首都ブラジリアでは、スタジアムの建設労働者によるサッカー大会が、3月に開幕した。会場は、まさにW杯のために新築中の国立スタジアム。グラウンドの部分に、公式よりかなり小さなピッチを敷いて、試合が行われている。出場するのは、スタジアム建設に従事している労働者だけ。1チーム12人から15人で構成される男子64チームと女子4チームで、毎週土曜日にリーグ戦を行ない、16チームが決勝トーナメントに進出するという、本格的なものだ。各チームには、世界中の国の名前が付けられている。

 開幕戦に立ち会ったアギネロ・ケイロス州知事は「労働者たちは一人ひとりがスタジアム建設の責任者。最初の試合が彼らによって行われることほど、正当なことはない。この大会は、W杯のための多くの工事によって、ブラジリアの人々の生活の質が上がっていくことを象徴するものだ」と語った。

 この大会ではまた、参加する労働者たちが大会登録料の代わりに食料を提供し、合計1トンに及ぶ食料を、恵まれない子供たちのための施設に寄付したという、慈善活動の役割も果たしている。

 スタジアム、宿泊施設、交通網、W杯関連法案…。まだまだ問題は山積みだが、その大会準備を支える、多くの情熱もあるのだ。

[写真]マラカナン改修工事

※本コラムは不定期更新です。このコラムの感想をこちらまでお寄せください。

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