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ブラジルサッカー通信 by 藤原清美

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ブラジル人的チャンピオンズリーグの楽しみ方
by 藤原清美

 欧州チャンピオンズリーグは、チェルシーの優勝で幕を閉じた。両チームのサポーターでなくても、生中継で見たくなるこの大会。しかし、ブラジルで一番盛り上がったのは、決勝ではなく、準決勝だったように思う。

 特にバルセロナ対チェルシーは、私の周囲でも多くのマスコミ仲間がテレビの前で手に汗を握っていたと言う。もちろん、チェルシーがバルセロナを倒すことを心から応援していたのだ。

 バルセロナがサントスを木っ端微塵にしたのは、昨年12月のクラブW杯のこと。しばらくは、その悔しさや、バルセロナの長所を分析・評価する声でブラジルのサッカーメディアは上を下への大騒ぎだった。

 その後、多少冷静になったことと、リーガ・エスパニョーラでのバルセロナの苦戦もあいまって「もう一度対戦したら、サントスだってもっとやれる」とか「頂点に上ることより、維持することの方がどれだけ大変かは、ブラジル人が一番良く分かっている」という類の意見も出てきた。

 しかし、セレソンへの不安から、サポーターがソーシャルネットワークを使って「バルサを去るグアルディオラがブラジル代表を指揮したらいい」という、ブラジル人としてはかなり自虐的なムーブメントまで起こした。マスコミが後追いでサッカー関係者に、それについての意見を聞き回るなど“スペイン憎し”の空気は続いていたのだ。

 だからこそ、チェルシーがバルサを破ったときは、まさに溜飲を下げるといった感じだった。「セレソンでも、フラメンゴでもない試合に、これだけ神経質になったのは初めてだ」と笑ったフラメンギスタのカメラマンがいた。結構ネガティブな情熱だが、それほどクラブW杯は悔しかったのだ。

 さらに、もう一つの準決勝レアル・マドリー対バイエルンは、たまたまスーパーマーケットのフードコートに設置されたテレビで見ていた。居合わせた買い物客のおじいさんたちが「カカが活躍して、レアル・マドリーが勝つならいいけど、そうでなきゃ、バイエルンが勝ってくれたらいい。スペイン万歳というムードは、もう終わりにしてくれ」などと語り合っているのが、面白かった。

 さて、スペインへの怨念のない決勝はどうだったか。これはみんな余裕しゃくしゃくだったようだ。試合そのものを楽しんだり、人によってはバイエルンよりチェルシーの方が国内で有名なブラジル人選手(CBダビド・ルイス、MFラミレス)がいることから、なんとなくチェルシーを応援した。ブラジルにはドイツ系移民も多いので、その子孫たちはバイエルンを応援していた。

 お国が変われば、サッカーの楽しみ方も変わる。ブラジルに住む外国人である私は、そのブラジル人たちの様子も合わせて楽しんだチャンピオンリーグ終盤だった。

[写真]情報サイトGLOBO.com。CLでのダビド・ルイスとラミレスの活躍を称える記事

※本コラムは不定期更新です。このコラムの感想をこちらまでお寄せください。

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