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ブラジルサッカー通信 by 藤原清美

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マルセロ、ベテランの自覚
by 藤原清美

 5月下旬から6月上旬にかけての国際Aマッチデーを使って、五輪代表のチームづくりを行っているセレソン。5月24日にドイツに集合し、26日にデンマーク戦(ハンブルグ)、30日にアメリカ戦(アメリカ・ワシントン)、6月3日にメキシコ戦(同・ダラス)、9日にアルゼンチン戦(同・ニュージャージー)と、親善試合4連戦を行う今回の遠征は、期間の長さにしても、試合数の多さにしても、一つの大会中のようだ。

 ましてや、フル代表と五輪代表を兼任するマノ・メネゼス監督が「ロンドン五輪の結果によっては監督交代もありえる」と噂されている中では、準備のための遠征とはいえ、早くも結果が要求されている。また、選手個々にとっては、五輪への生き残りをかけた戦いでもある。まさに“親善”ムードなどまったくない、真剣勝負が続いている。

 そういう環境だからこそ、選手達の新たな面が見えるのが面白い。中でも、最も興味深いのが、左SBマルセロだ。現在24歳ながら、2006年にフル代表に初招集された彼は、若手の多い現在のセレソンでは、すでにベテラン。しかし、以前の彼は、セレソンに運がなかった。というのも、ドゥンガ監督時代も、マノが就任して以降も、招集されるたびに、何らかの負傷や胃腸炎などで、辞退することが多かったのだ。

 ブラジルメディアは「セレソンより、所属するレアル・マドリーの方が大事だから、クラブと組んで、ケガをでっち上げているのでは?」などと報道した。クラブとセレソンのチームドクターの間で正式にケガが確認されていることだし、もちろんでっち上げではないのだが、辞退が続けば、自ずと招集も遠のくことになる。

 それが、昨年後半あたりからだ。マルセロの負傷辞退がなくなった。スタメンとしてプレーし、「ロベルト・カルロス後のセレソンの左SBは、やっぱりマルセロだ」と、みんなが認める存在になった。

 そして今回、実質五輪代表でフル代表の相手と連戦している遠征で、マルセロのリーダーシップには目を見張るものがある。ピッチの外では、常に陽気に後輩たちと接し、先頭を切ってふざけあっている。試合になると、クオリティの高いプレーを見せるだけでなく、だれよりも汗をかいて、攻守をサポートしている。チームメイトたちのマルセロを慕う様子を見れば、ピッチの内外での彼の重要性が分かる。

 試合の結果はここまで、デンマーク戦で3-1と快勝、続くアメリカ戦では4-1と大勝。しかし、メキシコ戦は0-2で敗れた。マルセロは「若い選手たちは、良いときは勢いに乗るけど、負けると一気にネガティブになりやすい。僕やチアゴ・シウバといったベテランが、次のアルゼンチン戦までに盛り上げてやらなければ」と語り、有言実行している。立場が変われば、自覚も変わる。セレソンになくてはならない、本当に頼れる存在になった。

[写真]アメリカ遠征の練習中、じゃれ合うマルセロとダビド・ルイス

※本コラムは不定期更新です。このコラムの感想をこちらまでお寄せください。

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