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ブラジルサッカー通信 by 藤原清美

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2002年W杯優勝、10年目の夢
by 藤原清美

 6月30日は、2002年W杯でブラジル代表が優勝してから、10周年の記念日だった。メディアがさまざまな特集を組む中、当時の選手や関係者だけでなく、ブラジル国民みんなが、歓喜の思い出をそれぞれの形で振り返ったことだろう。

 10年はあっという間のようで、やはり、それなりの時間だ。2002年メンバー23人のうち、13人がすでに引退し、第2の人生を歩んでいる。

 怪物ロナウドがスポーツビジネスの世界で腕をふるいつつ、2014年W杯組織委員会理事として活躍しているのは、有名だ。ジュニーニョ・パウリスタやバンペッタは、サッカークラブのディレクターとして、後進をサポートしている。明るいデニウソンは、サッカー解説者だ。

 そうやって、サッカーに関わる仕事をしているメンバーが多い中、柏レイソルでもプレーしたエジウソンが、音楽プロデューサーをしているのは、変わり種。また、左SBジュニオールは、フランス料理のレストランを開いた。からかわれ役だった彼のキャラクターは今も健在で、2002年の仲間達の間では「なぜフランス料理? 全然似合わない!」と、盛り上がっている。

 カフーは現在、2014年に向けたイベントへの出演などで大忙しだが、ライフワークとして、「選手のセカンドキャリア」についての講演会を行っている。

「練習、食事、就寝、遠征、試合と、決められた時間に従って生きてきた人間が、朝起きても、何もすることがない。監督や代理人など、だれも指示する人がいない分、自分で決めて、自分で責任を持たなきゃいけない」

 知名度や財産を狙った、さまざまな人が近寄って来ることもある。「レストランで、メニューの値段を確認する」など、金銭感覚を変える必要もある。そんなシビアな現実を、ユーモアたっぷりに、自らのエピソードを交えて語る。

「だけど、自分がやろうと決めたことに対して、サッカーのプレーと同じように、愛情を持って、真剣に取り組めば、何だってやれる可能性が、目の前に広がる。それがセカンドキャリアだ」

 その熱い言葉は、キャプテン時代を思い出させ、聞いていて感動する。

 カフーが言う通り、可能性に夢を持って取り組んでいる一人が、ホッキ・ジュニオールだ。ミラン、リーズ、レバークーゼンと、欧州各国でプレーした彼は、その経験を活かして、自分の信念と理想に基づいたクラブ「FCプリメイラ・カミーザ」を創設し、運営している。陽気でいて、結構ぶっきらぼうなタイプだったのに、スーツを着てのスポンサー対応も、慣れたもの。

「重要なのは、真剣さ、誠実さがなければ、何も達成できなかっただろうということだ。多くの企業がサポートしてくれて、クラブがこれだけ成長したのも、真剣さの賜物だ」

 現役組の中には、2014年大会を目指すカカやロナウジーニョもいる。10年目のチャンピオンたちは、それぞれに力一杯、生きている。

[写真]カフー、トロフィーや記念の写真を飾った自宅の書斎で

※本コラムは不定期更新です。このコラムの感想をこちらまでお寄せください。

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