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ブラジルサッカー通信 by 藤原清美

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情熱と愛情と…セレソンとクラブの両立
by 藤原清美

 ロンドン五輪を終えた選手たちが、それぞれのクラブに合流した。11日の決勝を終えたあと、その五輪代表のうち17人は、15日にストックホルムで行われた親善試合のスウェーデン戦にフル代表として参加した。圧巻はネイマールだ。五輪での全試合に続き、スウェーデン戦にも出場した彼は試合後、所属するサントスがチャーターした小型ジェット機に飛び乗った。そして、試合開催地であるブラジル・フロリアノーポリスに直行すると、16日にはサントスのスタメンとして、ブラジル全国選手権フィゲイレンセ戦に出場。1ゴールまで決めた。2日連続の試合にも関わらずだ。19日のコリンチャンス戦にも出場し、効果的なパスを次々と配球。「ガルソン(ウェイターの意味)」と称えられた。

 ネイマールをはじめ、選手たちはセレソンのユニフォームを着ることに誇りを持っている。その一方で、この週末の全国選手権では、それぞれのクラブで「このシャツを着てピッチに立つことが恋しかった」と、口々に語っている。そして、クラブで頑張ってまたセレソンに戻るんだと、誓っている。

 五輪前や大会中に移籍が決まった選手たちもいる。PSGのチアゴ・シウバ、チェルシーのオスカルは、初めてチームの練習に合流した。スパルタク・モスクワに行ったロムロは、ボランチでありながら、すでにデビュー戦を自らのゴールで祝った。彼らが新クラブのために、五輪中、力を温存しただろうか。それは違う。移籍先のことを考えていたとしたら、「五輪で金メダルを獲って、勝者として合流したい」という思いだ。まずは目の前の勝利、セレソンでのタイトル、そのために戦っていたはずだ。

 それでも、家族と離れての長い合宿生活、移動に次ぐ移動の遠征など、消耗することもあるだろう。ピッチの内外で不満を感じることもあるかもしれない。以前、ドゥンガがよく言っていたのは、「何度もセレソンに招集されていると、その状態が永遠に続くかのように勘違いしてしまうことがある。でも、それは違う。セレソンでいられるのは、現役生活においても、人生においても、本当に短い期間に過ぎないんだ。だから、その幸せを噛みしめ、100%、その機会を活かさなければならない」

 だからこそ、選手たちはセレソン経験が長くなればなるほど、ハードな大会を乗り切るため、または共同生活の雰囲気づくりのために、率先して明るく振る舞い、互いを盛り上げ合うようになる。そういう面で、セレソンに来る選手たちの精神面での成長の速さには驚かされることが多い。

 ドゥンガと言えば、先日会ったときに、ガンソのことを心配していた。「ちょっと前まで“セレソンは、ガンソと残り10人”と言われるほどの評判だったのに、今は五輪代表でベンチだ。彼の頭の中を想像してみなよ。どんな精神状態でいるか」。取材ではなく、雑談の中で出た話題だったにも関わらず、セレソンOBであり、元セレソン監督であるドゥンガは、周囲のケアの必要性を真剣に語っていた。

 そのガンソも、昨日のサントス対コリンチャンスで、イキイキとプレーしていた。セレソンでも再び、オスカーと背番号10争いを繰り広げるはずだ。8日前、銀メダルに泣いた選手たちは、セレソンとクラブ、両方に情熱と愛情を持って、再び輝きを放とうとしている。

[写真]ネイマール、セレソン練習中の真剣な表情

※本コラムは不定期更新です。このコラムの感想をこちらまでお寄せください。

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