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ブラジルサッカー通信 by 藤原清美

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ネイマールの天国と地獄とともにブラジル代表史1000試合目は引き分け
by 藤原清美

 ブラジル代表が14日、アメリカ・ニュージャージー州イースト・ラザフォードでコロンビアとの親善試合を行い、1-1で引き分けた。

 この後、国内組の選手だけで構成された代表チーム同士のアルゼンチン戦が残っているものの、通常の代表としては今年最後の試合。しかも、ブラジル代表史通算1000戦目の記念試合でもある。そして、2014年W杯開催国として、南米予選に参加していないブラジルにとって、親善試合も一戦一戦が重要。選手たちのモチベーションは高かった。

 この試合の前日、FWネイマールに今年の自分のベストゴールを聞いてみた。フル代表、五輪代表でのゴールに加え、リベルタドーレス杯とサンパウロ州選手権では得点王を獲得、ブラジル全国選手権でも、現時点で得点ランキング6位。「たくさんあるからなぁ…ベストゴールは…そうだなぁ…」と時間を稼ぎながら、30秒ぐらい考えたあとで、ハタと思い出したように「リベルタドーレス杯のインテルナシオナウ戦で決めたゴールかな。あれが一番好きなゴール」と答えた。

 彼がハットトリックを決めた試合の2点目で、自陣で受けたボールを、長距離ドリブルで一気に相手ゴール前に持ち込み、最後に2人のDFをかわしてシュートしたものだ。その翌日、FIFAプスカシュ賞の候補に選ばれたほどのビューティフルゴールだが、それを思い出すのに30秒かかるネイマール。

 昨年も11月に同じ質問をしたとき、やっぱり散々考えたあげく、ごく最近のゴールを挙げたのを思い出した。きっと彼のような選手は、どんどん得点をあげていく中で、過去のゴールを懐かしむ暇もないのだろう。

 コロンビア戦の前には、ハリケーン・サンディの被害にあったニュージャージーでの試合だけに「災害で苦しんでいる人たちが、楽しくなるような試合をしたい」と、胸がつまるような温かい言葉も語っていた。

 試合は両チーム、互いに攻め合うオープンな展開。ネイマールやカカの惜しいシュートが繰り返される中、コロンビアに先制点を決められた。ブラジルは単純なパスミスにより、チャンスはつくるものの、自らボールを失う回数が増え、カカーとネイマールが、互いに注意を促し合う場面も見られた。

 そして、後半18分、ネイマールがゴール前で相手DFをかわしてのビューティフルゴール。これで同点に追いつくと、1000試合記念を勝利で終えるために勢いづいた。

 しかし、後半33分、ダニエウ・アウベスがペナルティーエリアで倒されて得たPKのチャンス。これを、この日のヒーローとなるはずだったネイマールが、大きく吹かし、ボールはバーのはるか上へと舞い上がった。

 試合後、選手へのインタビューもネイマールのPK失敗に集中。ネイマールは「ピッチがどんな状態だったか、見たよね。だから、ゆっくりボールに近づいたんだけど、ああなってしまった。ひどい失敗だ。でも、これで人生が終わるわけじゃない」と、辛抱強く答えていた。

 カカは、会場がアメフトのスタジアムだったことに引っかけて「審判がフィールドゴールと見なしてくれたら良かったのにね」と、冗談で後輩をかばった。アメフトのルールの一つ、ピッチに置いたボールを蹴って、相手ゴールのポストの間、かつバーの上方に通して3得点を得る「フィールドゴール」のことだ。

 カカやマノ・メネゼス監督が言っていたとおり、この試合でもネイマールの決定的な活躍と貢献はいつもと同じだった。ただ、そのPKの吹かしっぷりが派手だっただけに「ブラジル代表史1000試合目は『ネイマールがPKを吹かした試合』として記憶されてしまうんだろうね」と、報道陣はあとで少し気の毒そうに語り合ったのだった。

[写真]試合後、苦笑いでPKについて語るネイマール

※本コラムは不定期更新です。このコラムの感想をこちらまでお寄せください。

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