beacon

ブラジルサッカー通信 by 藤原清美

このエントリーをはてなブックマークに追加

新米議員ワシントン「W杯で日本との架け橋に」
by 藤原清美

 日本でもそうだが、ブラジルでも元スポーツ選手が政治家になる例は少なくない。今年も、新米政治家がその活動をスタートさせた。Jリーグでも東京Vと浦和でプレーしたストライカー、ワシントンだ。

 ワシントンはご存じの通り、生死に関わる心臓病を乗り越えて、選手として第一線に復活した、不屈の人。ブラジルでも「コラソン・ヴァレンチ(勇者の心)」という愛称を持つほど、選手としてはもちろん、人としてのお手本とみなされ、人々に愛され、尊敬されている。

 そんな彼が、政治家として期待されるのは、自然な流れだったのだろう。引退後、母の出身地であり、彼自身プロ人生をスタートさせた街である、ブラジル南部ヒオ・グランデ・ド・スウ州カシアス・ド・スウ市に引っ越したワシントンは、昨年、最高得票でカシアス・ド・スウ市の市議会議員に当選した。その任務が、この1月にいよいよスタートしたのだ。

 そんなワシントンに久しぶりに会ったのが、昨年末の「サッカレックス」会場。サッカレックスとは、世界最大のサッカーコンベンション。サッカー界をピッチの内外、例えば、現代サッカーのプレースタイルから、マーケティング、権利ビジネス、クラブ運営、メディアのあり方、そして、W杯準備に必要なことまで、あらゆる角度から協議する講演やパネルディスカッションが行われる。同時に、クラブや関連企業、自治体などがブースを出す見本市も盛大。そのため、世界最大のサッカービジネスの場とも言われ、会場は熱気で溢れかえる。

 その会場に、ワシントンも来ていたのだ。久しぶりに会うと、1月からの目標を、熱く語り始めたワシントン。というわけで、「それをインタビューで話してもらおう」と、あらためてカメラを回した。

―あなたの今後のプロジェクトとは?
「僕はカシアス・ド・スウ市の市議会議員になるんだ。それと、ヒオ・グランデ・ド・スウ州のW杯組織委員会で親善大使を務めている。そして、来年はカシアス・ド・スウ市スポーツ局の局長を引き受ける。これからは、プレーじゃなくて、政治家としてスポーツに関わっていく。スポーツを通した社会プロジェクトにも取り組むつもりだよ」

 では、事前に話していた、アピールもしてもらおう。

―カシアス・ド・スウ市には、W杯事前合宿地としての基盤もありますね。
「そう、すでにFIFAにも承認されている。僕の使命は、一つの代表チームを、カシアスに連れていくことなんだ。市にはチームが必要とするすべての施設・設備が整っている。チームが気に入り、気持ち良く、意欲的に過ごせるように、あらゆる環境を提供するつもりだよ。というわけで、僕の仕事は、カシアス・ド・スウを代表チームに紹介し、W杯準備をあの街でやれるように招待することなんだ」

 もうひと押し。事前に一番熱かった、あの言葉も言ってもらいたい。

―日本代表合宿だって、あり得ますよね?
「日本代表を招待することは、僕の最大の夢だよ。僕の愛する日本がカシアスで事前合宿をしてくれたら、本当に素晴らしいことだ。それに、市が成長し、強くなれるし、経済効果もある。本当にそうなればいいと願っているよ!」

 まるで日本人のような奥ゆかしさで、「日本に来てもらいたい!」という最大のアピールまで段階を踏んだインタビュー。しかしその分、誠実な思いが伝わった。夢を語る満面の笑みとエネルギーは、選手時代と同じ。37歳の新たな挑戦を見守りたい。

[写真]11月下旬のサッカレックスで政治家としての抱負を語るワシントン

※本コラムは不定期更新です。このコラムの感想をこちらまでお寄せください。

▼関連リンク
ブラジル・リーグスター名鑑
ブラジル人スター名鑑

TOP