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ドイツの風~欧州のSAMURAIたち~

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 欧州組が増加の一途をたどっている。この夏は、伊野波雅彦がクロアチアのハイデュク・スプリトへ、大津祐樹がドイツのボルシアMGへ、乾貴士はドイツ2部ボーフムへと新天地を求めた。

 だが、肝心の活躍ぶりはどうかといえば、なかなか厳しいものがある。もちろん全員が均等に結果を出すことの方が難しいが、それにしても意外な苦戦ぶりがうかがえる。例えば岡崎慎司、安田理大だけでなく、内田篤人までもが、ベンチを温める日々に甘んじている。

 ヨーロッパリーグ(EL)のプレーオフでは、ようやく先発出場の機会がめぐって来たが、それも今季左サイドで先発を続けているフクスの出場停止によるもの。右SBは今季アーヘンから移籍して来たヘーガーに譲っている。しかもそのヘーガーがブンデスリーガ第2節・ケルン戦で2アシストの活躍を見せてしまったから、近いうちに奪い取ることはなかなか難しいと見る方が自然だ。

 内田は、昨季のシャルケ04加入当初も出場機会に恵まれない日々が続いた。だが、当時は「ゆっくり慣れていけばいいと思っていた」と、まだまだのんびり構えることができていた。第2節で先発。その後、一旦ベンチを外れるが、第6節では後半開始から出場し、第8節で先発に返り咲くと、そのまま定着する。派手な活躍は少なく、コンスタントに専門誌などの評価で高得点を挙げるわけでもないが、それでもシーズンが終わるまでレギュラーポジションを確保し続けた。

 昨シーズン終盤は、欧州CLで準決勝まで進出した。マンチェスター・ユナイテッドに敗れたときには「決してベンチで見ていたのではなく、ピッチに立っていたということが大きい」と、その経験を誇るかのように口にしていたのは印象的だった。鹿島時代から常に試合に出続けて来た彼が、ベンチ外まで経験した上で、オールドトラフォードまでたどり着いたことは新たな手応えとなっていたはずだ。それだけに今、内田の苦しみは小さくないことが想像できる。

 今季、シャルケは6月26日に始動したのに対し、内田は7月4日に渡独し、遅れて合流している。本人は拒否したというが、メディカルスタッフとドクターの判断で、完全なる疲労回復のための措置だったという。だが、それが裏目に出たのか、どうにも新しいチームに乗り切れないままシーズンが始まっている。

「まあのんびりやりますよ。慌てないで慌てないで」とメディアには言うが、周囲の選手には「やばい」と漏らすこともあるのだという。表情も浮かないし、練習でのプレーも傍目に見ても精彩を欠く。

 左SBとして先発したEL・ヘルシンキ戦では、前半から積極的にゴールに絡もうとした。3分、右クロスに合わせたダイレクトボレーはチームとしてのファーストシュートだった。10分にも走り込んでシュートを見せた。だが、16分には内田のサイドから失点。後半には逆サイドからやられており、内田を戦犯扱いするよりも、采配を疑いたいところではあるが、それにしても相手の先制点に絡んでしまったことは事実である。“本職ではないから”と我々日本人としては情状酌量の余地があるように思ってしまうが、試合に出てしまえば関係ない。結果がすべてだ。

 それでも長いシーズン、内田がずっとベンチウォーマーであるとは思えない。おそらくどこかで自身にギアを入れて巻き返してくるはずだ。だが、昨季のような、新加入であるがゆえのフレッシュさは見当たらない。W杯予選に伴い、日程も過密になる。それに、根本的には内田の能力を買っているラングニック体制もどこかで崩れる可能性もある。となると、内田は昨季序盤以上の苦戦を強いられることになりそうだ。

※本企画は隔週金曜更新予定です。ドイツでプレーする日本人選手を中心に取り上げていきます。

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