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素顔のなでしこたち

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 スマートフォン対応の電子サッカー雑誌「ゲキサカプラス」で好評連載中の『素顔のなでしこたち』。日本女子代表(なでしこジャパン)の主力選手のインタビュー記事と撮りおろし写真を掲載したスペシャルコンテンツの一部をゲキサカでも特別公開します。
 女子W杯制覇、ロンドン五輪アジア最終予選突破。国民栄誉賞も受賞し、「なでしこジャパン」が流行語大賞に選ばれるなど、2011年の“顔”となった彼女たちの素顔に迫るロングインタビュー。第5弾は、INAC神戸レオネッサのGK海堀あゆみ選手です。
 なお、電子サッカー雑誌「ゲキサカプラス」はiPad、iPhone、iPod touch、ソフトバンク3G携帯、ソフトバンクアンドロイド携帯に対応。アプリ「ビューン」にて閲覧可能です。ゲキサカプラスでしかご覧いただけない写真も多数掲載されていますので、是非そちらでもお楽しみください。


 京都府長岡京市出身の海堀は異色の経歴を持つ。中学時代はスペランツァ高槻の下部組織に所属。当時はDFとしてフィールドを駆け回っていた。乙訓高に進学すると、一時サッカーから離れた時期もあったが、高校3年時に高槻の下部組織に戻り、ここでGKへ転向する。2004年にトップチームに昇格した。

―中学時代はDFだったという海堀選手がGKに転向したきっかけは何だったんですか?
「(高校3年時に復帰する際)友達に誘ってもらったんですが、チームが大会に参加するのにGKがいないということで、そこからGKになりました」

―最初は大変だったのでは?
「中学時代に自分が所属していたチームもみんなが交代でGKをやる感じでしたし、当時はGKをずっとやるとも思っていませんでした。フィールド選手の一人じゃないですけど、スイーパーという感じで始めていたので、GKということに対してそこまで抵抗はありませんでした」

―本格的にGKとしてやっていこうと思ったのはいつごろなんですか?
「どのあたりですかね。代表に入ったというのは大きかったかなと思います」

 GK転向後、ユース代表にも選出されるようになった海堀は2008年、スペランツァ高槻からINAC神戸へ移籍。同年5月の女子アジア杯・台湾戦で、フル代表デビューを果たす。以来、なでしこジャパンの常連となったが、コンスタントに試合出場を重ねてきたわけではない。山郷のぞみ、福元美穂という先輩GKとの競争。2008年の北京五輪では福元の第2GKを務め、2010年秋のアジア競技大会は山郷が正GKだった。
 フィールド選手と違って、アクシデントがなければ途中交代もないポジション。たった一つの“枠”を争うライバルであり、ともに練習し、切磋琢磨する仲間。その3人が一つのチームになったとき、GKは“孤独”な存在ではなくなる。

―海堀選手にとって山郷選手、福元選手はどんな存在ですか?
「本当に大きな存在ですし、2人に出会っていなかったら今の自分はないと思っています。本当に尊敬しています」

―いろんなことを教わってきた?
「もともと自分はチームでも一人で練習していることが多かったので、そういう中で初めて一緒にやらせてもらったのが、山郷選手と福元選手でした。2人とも本当に偉大な存在ですし、学べるものは全部学びたいと思っています」

―女子W杯では試合前にGK3人でミーティングをやっていたそうですが?
「チームでも、代表でも、自分は一人じゃないので。INACにも自分を含めてGKは3人いますし、その中から自分が代表して試合に出ている以上、その人たちの分もじゃないですけど、2人の分まで戦っているつもりです。フィールド選手と違って、GKはポジションが一つしかありません。フィールド選手だったら、10個のうちの一つを争えばいいですけど、GKはどんなにがんばっても絶対に一人しか出られないので。試合に出ている人間が、2人の分まで戦わないといけないと思っています」

 縦2.44m、横7.32mの巨大なゴールを一人で守るGKは、だからこそチームメイトの存在にだれよりも感謝する。ともに練習で汗を流すGKだけではなく、守備の連係を構築するDFだけでもなく、前線から必死にチェイシングしてくれるFWまで含めたチームメイト全員に対し、その気持ちを忘れたことはない。
 サッカーの最大の見せ場である「ゴール」を決めることなく、ただひたすらに相手のシュートを浴び続けるGKの「魅力」とは? 女子W杯決勝の「プレイヤー・オブ・ザ・マッチ」(MVP)にも選ばれた“世界一”のGKに聞いた。

―GKとしてのやりがいはどこにあると思いますか?
「いろんなポジションをやりましたけど、GKというポジションは本当に一人では何もできないということを痛感しています。男子と違って女子は身長も低いので、あんなに大きいゴールを一人で守るなんて普通に考えたらできないですよね。そういう中で味方の守備に助けられたり、『チーム』でやるんだなということすごく感じています」

―DFとのコミュニケーションを大事にしているということですか?
「全体的に、ですね。前線から守備が始まって、最後に自分のところに来るので。そこで自分が止められればいいなと思いますし、サッカーにミスは付きものだと思うので、味方のミスを自分が止めたり、ミスを帳消しにできればと思っています。そういうのはGKにしかできないことだと思うので、そこが魅力ですかね。魅力とかはよく分からないですけど……。そういうものを今も探している途中だと思います」

―もっともっと成長していきたい?
「ここで止まりたくないので。いろんな発見をしながら、前に進んでいきたいと思っています」

―他のGKの映像を見て、参考にすることなどはありますか?
「真似をしても、その人は抜けないと思うので。いろんな人のいいところを取っていって、最後に自分が完成すればいいなと思っています。日々成長したいですし、立ち止まりたくないですね」

―ロンドン五輪に向けてはいかがですか?
「まだメンバーに入るかも分からないですし、目の前の試合、日々の練習をしっかりやっていきたいと思っています」

―2012年も、チームでも代表でも結果が求められる1年になります。
「日々の積み重ねが、そういう結果につながっていくと思うので。結果はあとから付いてくるものだと思っていますし、日々の練習、一戦一戦を積み上げて、その結果、タイトルを取れればいいなと思っています」

(取材・文 西山紘平)

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