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サッカー少女 楓

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「さあ、早くこの優勝旗を向井先生のところへ届けてこい」

 歓喜の輪のなかで、多村は目をうるませながら見城に指示した。

 湘南平男子サッカー部は決勝で光陽台を大接戦の末、2対1で下し、初の全国大会出場を決めた。

 後半30分、ゴール前で島村が倒されて得たペナルティキックを、島村本人が決めて決勝点を奪ったのだ。勝利を決めた瞬間、島村は観客席にいた善次郎と一平のもとへ駆け寄った。光陽台の応援席にいた教頭の姿は、島村がゴールを決めた直後に消えていた。

「多村先生も一緒に向井監督のところへ行きましょうよ。監督、喜びますよ」

 見城は多村にそう声を返したが、この日チームを率いた指揮官は「俺は、あいつらのところへ行かなくちゃな」と、選手たちより先に競技場を出た。

 そのころ、楓たちは湘南の海岸にいた。

「すみません。私のせいです。私のパスミスからカウンターを許してしまって……」

 サキの言葉を、楓が途中でさえぎる。

「雨宮、負けたのは、あなたのせいじゃないよ」

 ほんの1時間ほど前、楓たちは宿敵の鶴見女学館に2対3で惜敗していた。

 多村の不在は大きかった。

 楓はピッチの上でゲームの流れを把握しようとしたが、鶴見女学館の多彩な攻撃に対処するのが精一杯だった。選手交代のタイミングも難しい。

 サキのパスミスは確かに痛かったが、リードを奪われたあとにどうやってチームを立て直せばいいか、楓には策が見つからなかった。


※本連載は毎週月・水・金に配信予定です。
女子W杯でMVP&得点王に輝いたなでしこジャパンの澤穂希選手をモデルに、国民的サッカー漫画『キャプテン翼』の作者である高橋陽一氏が書き下ろした青春サッカー小説『サッカー少女 楓』。各メディアに引っ張りだこの話題作を全文まとめて読みたい方はコチラ(amazon.jp)からお買い求め下さい。
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