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サッカー少女 楓

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 5月になると、楓はあのころのことを思い出す。

 2年前の5月、男子と一緒にプレーしていた1年生の楓は、隣のクラスの綾乃や亜里沙らとふとしたきっかけで話すようになり、一緒に女子サッカー部を作ったのだ。

 あのころ、ボールをまっすぐ蹴ることさえできなかった彼女たちは、別人のように正確で強いキックを蹴れるようになった。ゴールキーパーの亜里沙はボールを止める技術だけでなく、ディフェンスラインに的確な指示を出せるようにもなった。

 遅れて入ってきたメンバーたちも、成長した。さゆきのヘディングは、高さでは鶴見女学館のディフェンダーより勝っていたし、虎南の破壊力のあるシュートはゴールの枠内に飛ぶ確率がぐんと増えてきた。智恵のドリブル突破は、楓でも止めるのが難しいほどキレが出てきた。

 自分の夢を早足で追っていた楓に、彼女たちはみんなで力をあわせてひとつずつ階段をのぼっていくことの大切さと、喜びを教えてくれたのだ。

 今、楓たちが3年生になった湘南平高女子サッカー部は明らかに全国レベルの力をつけていた。

 砂浜で湘南ブルドッグスとビーチサッカーをしても、屈強な男たちを素早いパス回しで圧倒した。

「嘘だろ。こいつらいつの間に、こんなにうまくなったんだ」

 ブルドッグスのメンバーが驚嘆の声をあげると、楓は胸を張った。

「なんたって、私たちは日本一を目指してますから。もう、おじさんたちとは、勝負にならないわよ」


※本連載は毎週月・水・金に配信予定です。
女子W杯でMVP&得点王に輝いたなでしこジャパンの澤穂希選手をモデルに、国民的サッカー漫画『キャプテン翼』の作者である高橋陽一氏が書き下ろした青春サッカー小説『サッカー少女 楓』。各メディアに引っ張りだこの話題作を全文まとめて読みたい方はコチラ(amazon.jp)からお買い求め下さい。
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