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「ただいまァ!!」
楓が玄関をあけると、大きな声で正伍が迎えてくれた。
「おかえり、姉ちゃん」
「お母さん、おなかすいたー」
「ちょっと待ってね、夕ご飯、もうじきできるから」
首にかけていたメダルを正伍に渡すと、玄関先にスーツケースを置いたまま、楓は居間へ走った。テーブルの上には、正伍が食べかけのシュークリームがあった。
「あれっ、正伍、いいもの食べてるじゃない。ちょうだい」
メダルを首にかけた正伍が、あわてて居間に飛び込んでくる。
「ちょっと姉ちゃん、僕のシュークリームとらないでよ」
「相変わらず、わきが甘いわね、正伍。そんなんだと、いいサッカー選手になれないわよ」
「もう、姉ちゃんはそんなんだから、彼氏できないんだよォ」
「うるさ~~い!!」
楓はシュークリームを口にほおばったまま自宅を飛び出した。自転車に乗って、坂道をおりていく。
女子サッカー部が練習を始めた公園の前で急ブレーキを踏んだ。もちろん、そこでボールを蹴っている仲間はいない。
楓は自分を取り巻く世界が猛スピードで変化していくことを実感しながら、再びペダルをこいだ。高校を卒業すれば、楓は日テレ・ベレーザに進むことが決まっている。
遠回りしたことを……楓はまったく後悔していなかった。
海岸線の道路に合流すると、ガードレールの脇に自転車を止めて大きく深呼吸をした。
目の前には、いつもと変わらない湘南の海が広がっている。(完)
※本連載は毎週月・水・金に配信予定です。
女子W杯でMVP&得点王に輝いたなでしこジャパンの澤穂希選手をモデルに、国民的サッカー漫画『キャプテン翼』の作者である高橋陽一氏が書き下ろした青春サッカー小説『サッカー少女 楓』。各メディアに引っ張りだこの話題作を全文まとめて読みたい方はコチラ(amazon.jp)からお買い求め下さい。
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