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ボランチ専門講座mobile版

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6月21日に刊行された『ボランチ専門講座』(著・福西崇史、構成・北健一郎)のモバイル版がゲキサカにてスタート。全8章の本書より、1章1本ずつを掲載。より詳しい内容はぜひ本書(amazon.co.jpにジャンプします)でご確認ください

 ジュビロ磐田に入団して半年後、ボランチにコンバートされたとき、ハンス・オフト監督に真っ先に言われたのは、「ペナルティーエリアの幅から出るな」ということだった。サッカーのピッチの横幅は約68メートルで、ペナルティーエリアの横幅は約40メートル。つまり、40メートルの幅の中でプレーしろと。

 最初は「どうしてなんだろう?」と思っていたが、この言葉には明確な狙いがあった。オフトは「バイタルエリア」に人を置きたかったのだ。バイタルエリアとは、一般的にペナルティエリアの幅の中の、DFラインとボランチの間にできるスペースのこと。ここはサッカーで最も得点につながりやすいエリアといわれる。

 バイタルエリアが得点につながりやすいのは、攻撃側にとっての選択肢がたくさんあるからだ。ボールを持った選手は、DFラインの背後へのスルーパスも狙えるし、自分でドリブルを仕掛けていくこともできる。

 もしくはクサビのパスからFWがターンしてシュートを打つ、ワンツーをしてペナルティエリアの中に入っていく選択肢もある。DFとの間に距離があれば、ミドルシュートだって狙える。守備側としては相手の選択肢が多いぶん、何を仕掛けてくるか絞りづらい。

 バイタルエリアでやられないために最も手っ取り早いのは、バイタルエリアを「なくしてしまう」ことだ。ヨーロッパでは「バスを置く」とも表現されるが、守備重視のチームは4、5人のDF+ボランチの選手をゴール前、しかもペナルティーエリアの幅の中に密集させてブロックを作ってしまう。

 言うまでもないが、サッカーのゴールがあるのは真ん中だ。どんなにボールを回されても、サイドを崩されても、ゴールが真ん中にある以上、最終的にボールは真ん中に向かってくる。

 だからこそ、真ん中を固めることは有効なのだ。世界最高のバルセロナであっても、中央のゾーンを固められると攻めあぐねるシーンを見たことがある人も多いだろう。

 もしもボランチが自分の持ち場を離れてサイドに釣り出されてしまうと、最も危ない場所にポッカリと穴が空くことになる。バイタルエリアを空けることは即失点につながる。

 ただし、相手がサイドでフリーになっていたり、飛び出した選手が抜かれたりしたときは、カバーのためにサイドに出ていくケースもある。ボランチが出ていった場合は、ほかのポジションの選手にカバーしてもらうといった約束事を決めておかなければならない。
※本企画は毎週月曜更新予定。感想はこちらまでお寄せください。
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