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ボランチ専門講座mobile版

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6月21日に刊行された『ボランチ専門講座』(著・福西崇史、構成・北健一郎)のモバイル版がゲキサカにてスタート。全8章の本書より、1章1本ずつを掲載。より詳しい内容はぜひ本書(amazon.co.jpにジャンプします)でご確認ください

 現代サッカーでは、ゾーンディフェンスが主流となっている。ゾーンディフェンスとは、自分の守備の担当エリアを決めておき、そこに入ってきた相手に対してアプローチするという守り方だ。自分のエリアが決まっているぶん、必要以上に動き回らなくていいので効率的なディフェンスができる。

 一方、かつて主流だったマンツーマンディフェンスは文字通り人が人につく守り方だ。特定の相手選手1人にぴったりとマークするので、1対1の強さが求められる。相手の動きに合わせるため、マークはずれにくいが、相手に合わせて動かなければならないのでポジションのバランスが崩れやすい。

 この本では基本的にゾーンディフェンスを想定していきたい。

 ゾーンの場合、チームで連動して守ることが大事になるので、ボランチの選手が必ずしも自分でボールを奪いにいかなくてもいい。ボランチに守備能力が必要なのは間違いないが、スピードに自信がない選手や当たりがそれほど強くない選手でも、頭を使うことでカバーできるというのが私の考え方である。

 マンツーマンとゾーンでは、ボールを持った選手に対するアプローチの仕方が変わってくる。

 具体例を挙げよう。中央からボールを持った相手が攻め込んでくる。自陣側には相手FWが1人、こちらはボランチ+センターバック2人の合わせて3人。守り方はゾーンディフェンス。この状況で、どんな選択肢が考えられるだろうか。

①ボールを持った選手に対し、ボランチが1人でボールを奪いにいく
②ボランチがコースを限定して、センターバックと連動しながら守る

 ①のようにボールを持った選手に1対1を挑むのはマンツーマン的な考え方だ。ボランチのところでボールを奪えればベストだが、かわされたときはゴール前で2対2の数的同数になってしまう。
 ゾーン的な考え方では、②のほうがベターといえる。ボランチは自分でとるのではなく、後ろの選手にとらせるためにコースを限定しながらアプローチする。ドリブルのコースを誘導してセンターバックがカバーすることもできるし、パスコースを空けておきFWにわざとパスを出させてコントロールしたところを狙ってもいい。ボランチの選手がディフェンスが苦手な場合でも、しっかりと寄せていくことでボール奪取につなげることができる。自分のところでボールを奪えなくても、最終的にボールを奪うことができれば問題はない。

 こちらが守りやすいやり方に相手を引き込み、ボールを奪う――。こうしたディフェンスはボランチ1人でできるものではなく、チームで連動することが条件になる。もしもボランチが後ろの状況を考えずにボールに寄せていくと、DFの押し上げが間に合わず、バイタルエリアにスペースを空けてしまうことにつながる。

 具体的には、2012シーズンにJ2に降格してしまったガンバ大阪がそうだった。ボランチの選手が前からボールを奪おうとして寄せていくが、DFラインの位置が低いので、バイタルエリアのスペースが空いてしまいボールを通されてしまうのだ。前からボールを奪いにいきたいという選手と、しっかり引いて守りたいという選手という、2つの考え方が混在してしまったのが、ガンバの失点数の多さにつながっていたのではないか。このような状況ではボランチがいくのを我慢するか、もしくはDFラインを高くするのか、どちらかに統一して守る必要がある。

 失点の多いチームの試合を見るとき、1対1だけでなく、ボールが出てくる前のシーンに注目すると、うまくいっていない理由が見えてくるかもしれない。
※本企画は毎週月曜更新予定。感想はこちらまでお寄せください。
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