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ボランチ専門講座mobile版

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6月21日に刊行された『ボランチ専門講座』(著・福西崇史、構成・北健一郎)のモバイル版がゲキサカにてスタート。全8章の本書より、1章1本ずつを掲載。より詳しい内容はぜひ本書(amazon.co.jpにジャンプします)でご確認ください

 ディフェンスでは「どこからボールに寄せるか」というスタートラインを決めておくことが必要不可欠だ。この約束事があいまいだと個々の判断でボールに寄せるため、チーム全体が連動した効率的なディフェンスは難しい。

 チームの約束事が決まっているかどうかは、FWからDFまでの距離感を見ればすぐにわかる。理想的なのは30~40メートルの距離感を常に保っていることだ。

 具体的に高い位置からのプレスのときは、ハーフウェーラインより敵陣寄りの20メートルぐらいから寄せ始めるのが目安になる。一方、低い位置でブロックを構えるときは、ハーフウェーラインがスタートラインとなることが多い。

 スタートラインは相手のプレースタイルや実力によっても変わるので、同じチームの試合を見ていても「今日は前からいっているな」「ちょっとラインを下げたかな」といったことがわかってくるだろう。

 2006年ドイツワールドカップの日本代表監督ジーコは、選手の自主性を重んじて、ディフェンスのスタートラインに関しても「自分たちで話し合って決めろ」というスタンスだった。そのため、試合によってはチーム内に「高い位置からプレスにいったほうがいい」「しっかりと引いて守ったほうがいい」という2つの考え方がチーム内に混在する形になった。

 日本代表の練習中に私とヒデ(中田英寿氏)が口論になったことがメディアで大々的に報じられたことがあったが、そのときに論争のテーマになっていたのも、まさにこのことだ。ヒデは積極的にプレッシングにいくことを求めたが、私を含めたDFラインの選手たちは引いて守るやり方のほうがチームに合っているという考えで、平行線をたどってしまったのである。

 ディフェンスのスタートラインと併せて大事になるのが「ボールの奪いどころをどこにするか」だ。プレッシングは1人で奪いにいくのではなく、チームとして連動しながら、自分たちが設定した「奪いどころ」に誘導していくことがポイントになる。

 基本的にはサイドに追い込んだほうがボールを奪える可能性は高まる。相手がDFラインからパスをつないできたら、外に「追い出す」ようにプレッシングをかけて、サイドでボールを持ったところに寄せていく。サイドは中央と違ってパスのコースが限定されるので、孤立させやすいのだ。

 チーム戦術によってはサイドではなく中央に誘導する場合もある。サイドの選手が縦方向のコースを消しながらプレスをかけておき、中央の選手にパスを出したくなるように仕向けて、ボールが出た瞬間にボランチが一気に寄せていく。

 ボールの奪いどころを明確にする作業は、いつまでに仕事を仕上げるかという納期を決めるようなもの。ダラダラとやるのではなく、ゴールまでの道筋を描きながら目的を持って全員が動く。プレスライン同様、チーム全体で共通意識を持つことが良いディフェンスにつながる。
※本企画は毎週月曜更新予定。感想はこちらまでお寄せください。
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