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POINT OF SOCCER by 長谷川望

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川崎Fが育成からこだわる「止めてパス」
by 長谷川望

 今月7日、第八回関東ユース(U-15)サッカーリーグの川崎フロンターレU-15対横浜F・マリノスJYの試合はキックオフと同時に強くなった雨の中開始されました。降ったり止んだりするこの日の天気のように勝敗が分からない試合は0-0で前半を終了します。

 後半立ち上がりは両チーム粘り強さ見せますが、26分と37分にゴールを許したのは川崎F U-15。0-2で敗れ、勝ち点1点差だった横浜FM JYから勝ち点3を取る事は出来ませんでした。しかし関東ユース(U-15)サッカーリーグは来月まで続きます。現在5位の川崎F Uー15は持ち前の足元の技術を活かして、冬に行われる高円宮杯全日本ユース(U-15)サッカー選手権大会への出場を目指します。

 今回お話を伺ったのは川崎F U-15の寺田周平監督です。一昨年までトップチームのアシスタントコーチを務め、今年1月から川崎F U-15の監督に就任しました。トップチームから成長著しいジュニアユースという年代の指導に変わって数か月、育成の難しさを実感していると言います。「トップは身体が出来上がった選手たちだが、ジュニアユースは成長過程の段階。体格の差、成長の差がすごく難しいところ。結果だけを考えたら体格(フィジカル)に優れた選手を起用すれば、勝てるかもしれないが、育成という事を考えたらそれはどうなのかなと思う。結果と育成のバランスが重要になってくる」。

 取材日の試合でも相手選手に身体負けしてボールを奪われる場面がありました。それでは身体が小さい人は駄目なのか。そんな疑問を持つかもしれませんが、そうではないのです。相手選手に接触しないトラップ、ボールカットが見られた川崎F U-15。体格を補うためのトレーニングに力を入れていたのです。

「体格に頼らないでサッカーが出来るように、相手よりも小さい選手は接触しないためにどうすればいいのか、ボールを受ける前の位置取りやボールを受けた時のコントロールにこだわる事で、体格のハンディキャップを補える。足元の技術、それに伴う判断をこの時期に修得させたい」。特に「止めてパス」という技術にこだわり、夏休みもその精度上げる事に力を入れてきたそうです。差がある時期ですが、成長速度は人それぞれ。今このような技術を武器にしておく事は、今後のサッカー人生の大きな自信となります。

 現在、パスでつなぐサッカーを展開する川崎FのトップチームはJ1で4位に位置しており初優勝を狙っています。アカデミー出身の選手は少ないですが、風間八宏監督のもとアシスタントコーチを務めていた寺田監督は答えます「トップのサッカーは意識している」と。その言葉からは風間監督の意思を育成年代へ伝えていくという気持ちを感じる事が出来ました。


◆著者プロフィール◆長谷川望(はせがわ・のぞみ)
1987年生まれ。福島県出身。ロンドン五輪で女子レスリング金メダリスト伊調馨を取材。2020年東京五輪を見据え、サッカーを中心にスポーツの育成年代を精力的に取材している。フジテレビ『とくダネ!』、TBS元旦スポーツ祭り『2013年にかけるアスリートたち』、WOWOW『金曜カーソル』などテレビ番組でも活躍中。
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