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「ユース教授」安藤隆人の「高校サッカー新名将列伝」 by 安藤隆人

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“ユース教授”安藤隆人の「高校サッカー新名将列伝」第1回:河崎護監督(星稜高)
by 安藤隆人

「全国各地にそれぞれ強烈な個性を持った監督がいる。昨今の高校サッカーの隆盛は、彼らの存在が大きい。この連載では、今も尚、高校サッカーに注力し、素晴らしいチーム、選手を育て上げている全国各地の名将たちの言葉にスポットライトを当て、彼らの信念、信条を聞き出していきたいと思う。
 記念すべき第1回は、昨年度の高校選手権で悲願の全国制覇を達成し、本田圭佑、豊田陽平、鈴木大輔ら日本代表を育て上げた、星稜高校サッカー部・河崎護監督。彼の指導哲学に迫ってみた」(サッカージャーナリスト 安藤隆人)


―監督に就任されて30年。この30年間で自身の指導者としての哲学で変化があったところ、確信があったところはありますでしょうか?
「指導というのは、『子供達を教える』というよりは、僕が30年間一緒に成長させてもらってきたと、今つくづく感じている。30年前にどうしていたかは良く覚えているし、20年前、10年前もそう。やっぱり、50歳を過ぎて思うのは、人が成長するためには人間性や人格が必要。ましてや15歳から18歳という、人生に於いての貴重な3年間。周りに気遣いが出来るような日本人としての素晴らしい部分なども含めて、それらが出来てプレーもしっかりしてくるのかなと思う」

―1年1年の繰り返しの中、当然指導には忍耐が必要になると思います。
「指導者の忍耐というのは、耐えるとか我慢するとかではなく、選手たちが成長する為に時間は与えないといけない。今すぐ結果を求めてはいけなくて、1か月、3か月、半年、1年というスパンで、しっかりと子供達を見てあげないといけない。その中で急成長する子はいるし、1年間以上掛かる子もいる。3年になってやっと自分の武器を見つける子もいる。それが指導者の忍耐というかもしれないけど、僕はそれが成長する為の大事な時間であり、要素だと思う」

―その中で特に今年は選手権で優勝して、また一からのスタートになると思います。これまでとはまた違った1年の始まりになると思いますが、実際に公式戦が始まってみて感じる部分はありますか?
「毎年ある一定のレベルを維持するのは大変なのかなと。その中で、もっと力があった年は過去にはあった。こうして優勝してみて、優勝するチームにとって何が必要かというのが一つ勉強になった。指導者がしつこいように唱えているいろんなことを、子供達が当たり前のように言えるようになるのがいいチームなのかなと思う。昨年のチームは本当にそうだった」

――毎年繰り返される日常。その中で指導者としてモチベーションを維持していられる秘訣は何でしょうか?
「3年間しっかりと成長してくれて、大きくなった子供達を送り出すけれど、4月になれば新しい子達が入ってくる。このサイクルは僕にとって楽しみの方が多い。人が代われば、チームの雰囲気も変わる。日常であるように見えて、毎年変化があるんだよ」

―あと、今年は昨年末の事故の影響で、まだ本格復帰をされていません。一歩引いて見られていることで、感じられている部分はありますか。
「選手は同じように見えるんだけど、やっぱり、環境だとか同じチーム内のスタッフのことで感じることがあります。うちは若い指導者が多い。若い指導者は情熱を持って、子供達にぶつかっていって、しっかり子供達と一緒に戦っているのは見える。自分の若い頃と一緒だなと感じている」

―“若い頃の自分”を見ている心境はいかがでしょうか?
「自分が年を取って、身体が動かなくなって口が動くようになったなと思う(笑)。身体を動かして教えている若い指導者を見ると、これが改めて大事だなと思う。ただ、やっぱり経験は大事なので、若い指導者は結果が出ないと焦ってしまうので、それは教えていかないといけない。責任を持ってやってくれているとはいいと思うけど、プレッシャーになっているところもある。でも、そうじゃなくて、毎年新しいチームになるから、そこは気持ちを変えていかないといけないから」

―河崎先生はこの1年をどのようにしていきたいですか。
「自分のことであれだけど、まずはしっかり体調を戻して、肉体的にも精神的にも元に戻したい。今年も沢山の部員がいるので、1人1人目を掛けないといけないなと思う。どんな成長をしてくれるか楽しみだね。この楽しみがあるからこそ、まだまだ辞められないんだよ(笑)」

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