beacon

東京五輪への推薦状 by 川端暁彦

このエントリーをはてなブックマークに追加

「東京五輪への推薦状」第6回:絶対的な実績「ゴール」積み上げてきた“関東らしくない”野性的ストライカー郡大夢
by 川端暁彦

「関東にはあんなのがいるんですか! むき出しの素材みたいな選手ですね」

 御殿場での集中開催となったJユースカップ3回戦。Jユースの16強が一堂に会する機会だけに、関東のチームであれば関西を、関西のチームは関東をという具合に、普段は観られないチームの試合へ足を運ぶ指導者が多かった。そして関西勢の視線を集めたのは東京ヴェルディユースの大型FW郡大夢(ひろむ)である。

 184cm・77kgという恵まれた体躯に加えて、ワイドに動ける走力もある。プレースタイルは「自分が点を入れて勝ちたい」と自ら語るとおり、まずゴールを意識した動きと姿勢が自然と目立つ。冒頭のコメントは関西のJクラブコーチのコメントだが、同時に「関東のイメージと違う選手」という言葉も出てきた。確かに組織的、理知的な動きを究めるような選手が多い関東にあって、野性味あふれる郡のスタイルは珍しいと言えば、珍しい。

 視察に訪れていた東京Vの竹本一彦テクニカルダイレクターは郡について「デカいし動けるし、でも何より、まず点が取れるんだよ」と評価する。東京Vと言えば、U-22日本代表MF中島翔哉(現・FC東京)に代表されるような小柄でテクニカルなアタッカーを数多く輩出してきたことで知られるクラブだが、竹本TDは「点を取る方法なんて何でもいいし、それぞれの良さがあればいい」と断言する。今年の東京Vユースには郡の良さを生かして攻めるという共通理解が自然と生まれているが、それも郡が実際に点を取って信頼を勝ち取ったからこそ、である。

「今季が始まる前に一人ひとりが個人としての目標を立てたんですけれど、僕は『試合数とゴール数を同じにする』と決めました。いまのところそれくらいのペースで点を取れているし、点を取れていなかった去年までとは違う感覚があります」

 本人の言葉どおり、今季の郡は各大会で「ゴール」という絶対的な実績を積み上げてきた。プリンスリーグ関東1部ではU-18日本代表のエースFW小川航基(桐光学園高)の10得点を上回る12得点を記録してランキングのトップを走る。2年生まではそこまで評価の高くなかった郡がトップチーム昇格を勝ち取れたのも、「点を取る」という稀少な才能の持ち主であることをシーズンの中で証明したからだ。

 年代別代表や東京五輪に興味はないのか。こちらのそんな問いに対して「考えていないですよ」と笑いつつ、「でもコーチからはトップチームで結果を出せば、自然とそういう話が来るぞとは言われています」とコメント。必然、「だからまずトップチームで試合に出て、そして点を取る」ことがまず目標だ。それ以外のことは、後から付いてくる。

TOP