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スポーツライター平野貴也の『千字一景』 by 平野貴也

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「スポーツライター平野貴也の『千字一景』」第21回:兄弟ストッパー(鹿児島城西:生駒兄弟)
by 平野貴也

 兄が、弟が、ゴール前で立ちはだかった。守備のリーダーである背番号5の兄は、相手のエースと対峙しながら、周囲にも指示を出してチームを統率。180cm超の素材感あふれる24番の弟も、最終ラインでともに存在感を放った。第94回全国高校サッカー選手権大会の鹿児島県予選、準決勝で鹿児島実高に逆転勝利を収めた鹿児島城西高は、生駒兄弟がゴール前の双璧として存在感を示した。兄の生駒稀生(けい)は、相手の大型FW大下翔とのエアバトルを互角に戦い、弟の生駒仁(じん)は、兄が大下をマークするために引っ張り出される度、そのカバーに努めた。互いのプレーの特徴も性格も知り尽くしたセンターバックコンビだ。

 年の離れた兄弟が、全国クラスの強豪チームで同時に出場すること自体が珍しいが、生駒兄弟は同じポジションに並ぶ、さらに稀有なケースだ。中学時代には、2人でダブルボランチを組んだこともあるという。しかし、特徴はそれぞれに違う。最終学年を迎えた兄の稀生は、予測や判断に優れ、経験値も高いため、より多くのパターンに対応できる強みがある。弟の仁は、幼い頃から体格に恵まれ、何よりも空中戦に自信を見せる。初戦ではガチガチに緊張したというように1年生らしく経験の浅さを見せる部分はあるが、それを補ってあまりあるスケール感がある。鹿児島実戦では兄がエースを抑えに行くシーンが多かったが、弟が相手と競り合い、兄がカバーや指示を行う場面もある。仁は兄が出場しなかった2回戦を終えた際に「試合中、特に兄弟ということは意識しないけど、兄は頼もしい存在」と話していた。一方、兄の稀生は同じポジションでコンビを組む弟について「あいつは『緊張しい』だから、メンタルが心配ですよ」と笑う余裕を見せた。

 兄弟には、共通の思いがある。弟の仁にとっては、自分が3年生となる2年後が勝負の年となるが「兄と一緒にプレーできる姿を親に見せられるのは、今年が最後。だから、このチームで頑張ろうと思う」と親への感謝を込めて、3年生同様に今年にかける意気込みは強い。兄の稀生も「全国大会に出て、兄弟で一緒にピッチに立つことが一番の親孝行だと思っている。高校サッカーの集大成として、目標に掲げている」と親孝行のために兄弟で全国大会の舞台に並び立つことを願っている。たくましく戦う生駒ブラザーズは、全国大会へと進むことができるのか。翌14日、兄弟の夢をかけて、神村学園高との決勝戦に挑む。

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