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東京五輪への推薦状 by 川端暁彦

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「東京五輪への推薦状」第8回:爆発キックに伸びた声。日進月歩の守護神、京都橘GK矢田貝壮貴は「全部止めて、勝つ」
by 川端暁彦

「ごんぶと」のふてぶてしさすら感じさせる試合中の雰囲気とは異なり、内実はGKに多い細かいことを気に掛ける繊細なタイプなのだという。確かにオフ・ザ・ピッチで話していても尊大な感は皆無。立派な体格と礼儀正しさを備えた好青年、京都橘高の2年生GK矢田貝壮貴のことである。

 初めて矢田貝を観たのは高校入学直前、春休みの親善大会で、ピッチ上で放つギラギラしたオーラがすぐに目を惹いた。「GK永井建成(→熊本)の陰でこんなGKが育っていたのか!」と思っていたら、入学前の中学生だと知って大いに驚いた覚えがある。「なかなか面白い選手でしょう?」と、いたずらっぽく笑った米澤一成監督の下で、コーチや先輩たちの薫陶も受けながら2年弱。今や関西を代表するGKに成長しつつある。

 自身の感じている成長ポイントは「声」。もともと周りを鼓舞する声を出せる選手ではあったが、周囲からの「もっと具体的に指示を出せ」という声を受けながら少しずつ改善。「いまは細かいことを意識できるようになったし、ディフェンスラインの一個前(ボランチ)の動きも見て、そこまで指示を出せるようになってきた」と本人も手ごたえを感じつつ、「クロスのときのDFのマーキングとか、もっと徹底したい」とさらなる進化も誓っている。

 元々得意だった爆発的なロングキックも凄味が増してきた。「収めてくれるし、裏にも抜けてくれる。アイツがいるから一発でアシストになることもある」と言うように、京都橘の最前線には「蹴りがい」のある選手であるU-18日本代表FW岩崎悠人がいる。二人の息が噛み合ったときに生まれるロングカウンターは、もはや橘が誇る最強武器の一つだ。

 もちろん本業であるセービングのほうでも魅せる自信もある。高校選手権京都府予選ではPK戦を制して、「PKになれば絶対に負けない」という自負に新たな裏付けを得た。来たる選手権本大会に向けては「岩崎を観に来る人が多いのは分かっているけれど、そういう人にも『あれ、こんなGKもおるんか!』と思われるようなプレーを見せたい」と闘志を燃やす。目指す境地は、「DFを動かして、自分でも全部止めて、そして優勝する」という一点だ。

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