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ヤング魂 by 長谷川望

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[第81回]FW鈴木陽(長野パルセイロ)「勇気ある決断からトップチームまでの道」
by 長谷川望

 日本の女子サッカーは、世界でもトップレベルの実力を持っている。2011年ドイツW杯優勝をはじめ、澤穂希のFIFA最優秀選手賞受賞は、日本サッカーが誇る歴史的な記録となった。先日、パプアニューギニアで開催されたU-20女子W杯でも3位に輝くなど、下の世代の活躍もめざましく今後にも期待が持てる。

 今年10月23日に最終節を終えたなでしこリーグ1部2016では、日テレ・ベレーザが優勝を飾り、次にINAC神戸レオネッサ、AC長野パルセイロ・レディースという順で幕を閉じている。

  そして先月30日、AC長野パルセイロの2017年新加入内定選手が発表され、そのなかの一人に17歳になったばかりの選手がいた。この若さでトップチームに所属することになった人物とは!?

 今回は高校を辞めてまでブラジル留学を決断し、その後AC長野パルセイロに所属するまでに至った17歳の女子選手に注目したい!

PICK UP選手
 鈴木陽(17)。ポジションはフォワード。168㎝と長身で、リフティングを2000回はこなせるというテクニックの持ち主だ。
 
 幼稚園生のときに2人の兄の影響でサッカーを始めた鈴木選手は、小学生のときにジョガーレFC、その後は浦和レッズレディースJrユース、開志学園ジャパンサッカーカレッジへと進んだ。リフティング、基礎技術に関しては、中学時代に通っていた明光サッカースクールの檜垣裕志コーチと毛塚武文コーチ指導のもと徹底的に練習したという。そのなかで「ブラジルでサッカーを学びたい」という想いを実現するために、開志学園JSCを退学し、その後、ブラジルのFOZ CATARATAS FC(カタラータスFC)に留学。そして来年からは仕事をしながらAC長野パルセイロの一員となることが決定した。

「仕事とサッカーの両立など、1年目なので分からないことも多いですが、試合に出て結果を残していきたいです。レベルが高いところで挑戦していきたいです」と意気込みを話す。2017年、新たな地で彼女の挑戦がはじまる。

どんな選手!?
 ブラジル留学のコーディネーターを務めた林英雄氏は「男子のチームと対戦したときも、男子に引けを取らないプレーをすることができます。基本的なことはマスターできている選手。ブラジルの監督も『年齢が上がったら欲しい選手』と評価も高かったです」と、サッカー王国の指揮官お墨付きのポテンシャルの高さだ。

 スラッと背が高く、端整な顔立ちで、笑顔にはまだあどけなさが残る。しかしそのあどけなさとは裏腹に、サッカーに対する思いには真剣さが伝わってくる。「さすが、単身ブラジルに渡った女の子」だと感じた。「ブラジルは技術力が高いので、『自分もそこでチャレンジしたい』、『学びたい』という気持ちがあり、1ヶ月間行くことに決めました。向こうでは、遊びでリフティングをしても女の子がオーバーヘッドとかをするので、すごいですよ!」と熱込めて話す。

 若干17歳にして、不安と期待を胸に大きな決断を下してきた鈴木選手が見るのは、どんな思いにも勝る「サッカー一筋」。この選択は彼女の前に広がる希望あふれる未来をつくっていくだろう。

気になる質問‼
――好きな選手を教えてください。
「ロナウジーニョ選手(フルミネンセ)です。楽しそうにサッカーをするとこるが好きです。あとは技術力の高さがすごいと思います」

――将来の夢を教えてください!
「日本代表になって、世界一のプレーヤーになりたいです! 中3のときは国籍を変えて『ブラジル代表になる』って言っていたんですけど、日本で出来ないと海外でも出来ないと気付きました(笑)」

――ブラジルで印象的だった文化の違いはありますか?
「すごい騒ぎます(笑)日本だと近所迷惑とか考えますが、太鼓とか叩いて騒いでたのに驚きました。みんな話しかけてくれて、言葉は通じないけど、なんとなくジェスチャーで『たぶんこういうこと言っているんだろうな』というのが分かりました。食事は、日本とは違うけどお米があって、それに豆がかかったりしていました。お肉が多くて、シュラスコがおいしかったです♪」

 次回は、気になるブラジルサッカー留学ついて更に掘り下げたい! チャレンジし続ける彼女のもう一つの目標とは…?

◆著者プロフィール◆長谷川望(はせがわ・のぞみ)
1987年生まれ。福島県出身。ロンドン五輪で女子レスリング金メダリスト伊調馨を取材。2020年東京五輪を見据え、サッカーを中心にスポーツの育成年代を精力的に取材している。フジテレビ『とくダネ!』、TBS元旦スポーツ祭り『2013年にかけるアスリートたち』、WOWOW『金曜カーソル』などテレビ番組でも活躍中。
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