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東京五輪への推薦状 by 川端暁彦

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「東京五輪への推薦状」第43回:苫小牧から世界へ。札幌U-18の“ズラタン”ストライカー中村桐耶
by 川端暁彦


 むき出しの素材感。北海道苫小牧市から育ってきた大型FW中村桐耶(北海道コンサドーレ札幌U-18)が、全国舞台でその力を見せつつある。トップチームのタイ遠征帰りで日本クラブユース選手権(U-18)大会の第2戦から合流すると、柏U-18との第3戦ではダイナミックなゴールを突き刺しただけでなく、184cmの長身を活かしたターゲット役としても非凡な存在感を見せ付けた。

 また「見えるようになってきた」と語るように、触るだけでなく味方の場所を意識したヘディングや、決定機を演出するスルーパスでも見せ場を作った。さらに試合終盤には「自分でもビックリした」というDFへのコンバートも経験。川口卓哉監督がトーナメントの終盤戦向けに用意していたリトリート戦術の“跳ね返し要員”として奮戦を見せる器用な一面をのぞかせた。指揮官も「非常に大きな可能性を秘めた選手だし、こういう全国大会のような場で嗅覚を見せられる」と、その資質を高く評価している。

 そんな中村は元々札幌U-12の出身。だが、U-15に昇格することはなかった過去を持つ。苫小牧から遠く札幌へ通うことが負担になっていたこともあったが、「実は昇格できたという話もあるにはあるんですけれど、(U-15への)練習参加にも呼ばれていなかったし、そもそも自分の実力的に足りていなかったのが現実です」(中村)。地元・苫小牧のASC北海道U-15へと籍を移し、悔しさをバネにしながら技を磨いてきた。

 だが、現在U-18チームを率い、当時はU-12チームのコーチだった川口卓哉監督は中村のポテンシャルを買っていたそうで、その後のプレーぶりも観た上で「呼び戻すことにした」。結果として、「札幌のアカデミーとして史上初めて」(同監督)というU-12から外に出た選手がU-18で戻って来るという流れが生まれることとなった。

 苫小牧から通っていたU-12時代と違って札幌で寮生活を送るようになった中村だが、特に今年に入ってからはチーム内での存在感も増してきた。帯同したトップチームのタイ遠征でも「意外とリラックスした雰囲気でチームの輪の中に入っていけたし、自分の裏へのアクションの部分とか良さも出せた」と手ごたえを得た。もっとも、プロのハードルも感じたそうで、「試合のスピード感がまるで違うし、(親善試合では)20分くらいしか出ていないですけれど、いつも以上に疲れていた」と自身の課題も痛感することとなった。

 これまで各年代の日本代表へ呼ばれた経験はないが、「サッカー選手であるからには当然の目標だし、常に上を狙っていきたいと思っている」と、代表入りを狙う気持ちは持っている。ずっとあこがれてきたFWズラタン・イブラヒモビッチのように、「高さがあって体も強くて足元もある」選手を一つの理想として、いまは「強さ」の部分を特に意識して磨いている。

 目指すは苫小牧から世界の檜舞台。まだまだ「可能性」の段階にある選手だが、中村桐耶の秘めている資質を思えば、それは決して小さな可能性ではない。


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