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[クラブユース選手権(U-18)]足りなかったあと1点・・・鳥栖U-18は3点差追いつくも3連続ドローで敗退に

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[7.28 日本クラブユース選手権(U-18)GS第3節 清水ユース 5-5 鳥栖U-18 敷島]

 7月28日、第40回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会のグループステージ第3戦が群馬県内の各地で行われた。敷島運動公園サッカー・ラグビー場では、2試合を終えて2位の清水エスパルスユース(東海1)と同3位のサガン鳥栖U-18(九州1)が対戦し、壮絶な打ち合いの末に5-5の引き分けとなった。

 鳥栖はあと1点が足りなかった。第3戦を勝ち点3で迎えていた清水と、勝ち点2に留まっていた鳥栖――。ベスト16入りの条件はグループ2位以内で、鳥栖は引き分け以下なら敗退が決まる状況だった。ただ清水との直接対決を制すれば、自力で勝ち上がることができる。鳥栖にとってはリスクを冒しても、勝ちに行くべき試合だった。

「何点取られても、みんなで勝ちに行こうと――。勝ちを目指しているので、前に行きました」。キャプテンのMF石川啓人はそう試合前の意思統一を明かす。ただ立ち上がりにそんな思いが空回りをしてしまった。

 1失点目は開始5分。金明輝監督が「(相手のボールを)取れたと思って見合ったところで、くくっと入れ替わってしまった」と悔いる形から、清水のFW中野優太とFW平墳迅にパス交換で崩され、中野に先制点を決められてしまう。

 金監督が「奪いには行っていた」と振り返るように、ボールへのアプローチを怠っていたわけではない。しかし鳥栖は相手のアタッカーが持つ瞬間的な速さに対応できず、そこから混乱に陥ってしまった。「1点取られて建て直せなかったのが、3失点につながった」(石川)という流れだった。
 
 清水は9分、11分と滝裕太が立て続けにゴールを決めて、試合は一気に3点差。鳥栖も23分にDF阿部海斗が素晴らしいミドルを決めたものの、直後にカウンターから4失点目を喫する。

「3-1にしてからの4点目が痛かった。ビルドアップを奪われて、切り替えが遅くてスルーパスを通されて……。あんなプレーをしたら勝てるわけがない」と金監督も顔をしかめる、もったいない失点だった。

 普段は佐賀の県リーグを戦っている彼らにとって、日本の最高峰である高円宮杯プレミアリーグEASTを戦う清水は初めて経験するレベルの相手。不慣れが故の戸惑いもあっただろう。

 前半30分にして、スコアは1-4。しかし試合はまだ決まらなかった。鳥栖は40+3分にFW田川亨介が強烈な左足ミドルを決め、2点差で前半を折り返す。後半開始直後の3分に再び失点を喫するも、12分に石川が目の覚めるようなロングシュートを決めて2-4と再び差を縮めた。

 その2点差がなかなか縮まらなかったが、選手たちの心は折れなかった。今日の試合について総じて辛口なコメントが多かった金監督も「諦めない。走り切る強さ。そこは僕らの良さだと思う」と選手たちのリバウンドメンタリティを認める。

 鳥栖は38分に田川が決めて4-5と追い上げる。後半ロスタイムの80+3分には石川のFKから、最後はMF井上元が押し込んで試合はついに同点。ただ勝ち切るためには第1戦、第2戦に続いてもう1点が足りなかった。

 鳥栖は一昨年の王者・三菱養和SCユース、清水と強敵のいたCグループを無敗で終えつつ、3引き分けで大会を去ることになった。

「カテゴリーを上げないと、こういう大会で上に行くのは難しい。それをひしひしと感じている。(第1戦で対戦した)養和さんは全員が守備意識を持っていた。ウチはそういうところがおろそかで、何とか大丈夫だよというところでカバーが遅れてやられることが多かった」(金監督)

 大会を通してみればそこが勝ち切る、勝ち切らないという差だったのだろう。

 ただし鳥栖は今季の県リーグでここまで全勝。加えてチームにとって今後につながる嬉しい変化もある。現高校3年生の代までは高校サッカーに有望なタレントが流出していた彼らだが、その後の世代は「(残したかった人材が)丸々残っている」(金監督)のだという。この試合の先発のうち7名は2年生以下。トップチームの躍進にやや遅れてではあるが、鳥栖の育成組織にも胎動が起こりつつある。

 このクラブユース選手権は鳥栖が今秋のJユースカップと、来季以降の飛躍に向けて、大切な経験を得た大会だったに違いない。

(取材・文 大島和人)
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