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「一生に一度」の大逆転劇…GK同点弾、カムバックV弾の大宮ユースが2年ぶり決勝へ

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決勝弾の直接FKを沈めた大宮アルディージャユースMF五百蔵悠(3年)

[7.28 日本クラブユース選手権U-18大会準決勝 大宮ユース3-2広島ユース 味フィ西]

 第42回日本クラブユース選手権(U-18)大会は30日、東京都の味の素フィールド西が丘で準決勝を行い、第2試合では大宮アルディージャユースがサンフレッチェ広島ユースと対戦した。後半ラストプレーに決まったGK村田耀(3年)のゴールで追い付き、延長後半終了間際に直接FKで勝ち越すという劇的な形で勝利。3年ぶりの決勝進出を決めた。

 勝ち抜けが決まった大宮の丹野友輔監督は取材エリアに現れるやいなや「疲れました」と苦笑い。それほど濃密な110分間だった。「ゲームの入りは悪くなかった」と振り返ったように、開始5分で先制点を奪うという理想的な展開で始まり、徐々に盛り返されて逆転を喫するも、想定を上回る再逆転劇。そんな「一生に一度あるかないか」(丹野監督)の試合を見事に制した。

 大熱戦の序章を記したのは11番を背負うスピードスターだった。前半5分、自陣での組み立てからMF高田颯也(2年)にボールが渡り、迷わず縦へと突破を開始。やや対応が遅れた相手の守備陣を一気に切り裂き、ゴール前へのカットインを見せると、力強い右足シュートでゴール左隅に叩き込んだ。50m独走での先制弾はまさに「インパクトが大きかった」(丹野監督)というほかない一撃だった。

 その後は拮抗した展開が続いた。4-4-2の大宮に対して3-4-2-1の広島という噛み合わせにはギャップもあったが、互いに大きなリスクを負わず、崩し切るには至らない。だが前半23分、セットプレーから試合が動く。広島は左CKをFW大堀亮之介(3年)が蹴り込むと、大宮守備陣のクリアが小さくなり、ファーのDF山崎大地(3年)が落ち着いてゴールに蹴り込んだ。

 後半はさらに勢いを強めた広島が主導権を握った。9分、大堀の左CKに反応した山崎のヘッドは枠外。だが11分、最終ラインに下りて組み立てに参加するMF土肥航大(2年)を起点に左にパスを回すと、MF東俊希(3年)が縦に送り、猛スピードで走り込んだのはFW桂陸人(3年)。カットインから低く巻いたシュートをファーポスト脇に流し込み、広島が逆転に成功した。

 1点ビハインドを負った大宮は大会通算6得点でトップに立つFW吉永昇偉(3年)にボールを集めようと試みるが、なかなか良い形をつくれない。しかし、中盤中央のMF高柳郁弥(3年)やトップ下気味にポジションを取るMF瀬良俊太(2年)がせっせと動き回り、相手守備ブロックの集中力を次第に削いでいった。

 疲れが見えて来た後半アディショナルタイム、大宮の猛攻が始まった。高柳の左CKに途中出場MF林勇太朗(2年)の左足ボレーが枠内を襲うも、カバーに入ったMF中谷超太(3年)がゴールライン付近でブロック。直後にも高柳の右CKにDF森侑里(3年)がヘディングシュートを狙ったが、今度はうまくミートせずに大きく外れた。

 これがラストプレーと思われた後半アディショナルタイム4分、ついに試合が振り出しに戻る。高柳がATに入って3度目のCKを蹴り込むと、ゴール前の混戦でボールが落下。リスクを承知で攻め上がっていたGK村田が左足で狙うと、一度は相手守備陣にブロックされたが、跳ね返りを再びGK村田が拾う。今度は強烈な左足キックでゴール左隅に突き刺し、起死回生の同点ゴールとなった。

「セットプレーで分があるとは感じていました」とリスタートからの形は想定していたという丹野監督だったが、守護神による同点劇にはさすがに驚きを隠せず。奇跡的な展開に「アカデミーの選手たちがスタンドで応援してくれていましたが、おそらくそういった選手の声援がゴールにつながったんだと思う」と口にした。

 90分間で決着がつかなかったため、勝負の行方は10分ハーフの延長戦に。劇的な同点劇で勢いに乗る大宮が完全に主導権を握った。前半7分、まずは高柳のCKからMF安島樹(3年)が狙うと、同8分には延長から投入されたMF西谷学(2年)がGK佐藤海斗(3年)との1対1からシュート。だが、股下のコースを読んでいた佐藤がしっかりブロックした。

 一方の広島は延長後半8分、東のクロスに反応したFW棚田颯(2年)のヘッドは村田がキャッチ。大宮は直後の9分、左からのボールに競ったMF五百蔵悠(3年)が敵陣ゴール正面でファウルを獲得する。「ずっとケガで苦しんでいた選手」(丹野監督)。そんな五百蔵が左足で力強く蹴り出すと、ボールは綺麗に壁を越えてゴール左へ。これがネットを揺らし、大きな決勝点となった。

 8月1日に行われる決勝戦の相手はグループリーグでも対戦した清水エスパルスユースに決まり、「グラウンドがあまり良くなかったので、次はお互いの良さを出して決勝戦をやりたい」と決意を述べた指揮官。「僕らは延長戦まで来てしまったので、コンディション、メンタルを整えて臨みたい」とまずは回復に力を注ぎ、悲願の初優勝を懸けた西が丘決戦に挑んでいく構えだ。

(取材・文 竹内達也)
●第42回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会特集ページ

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