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[MOM3527]川崎F U-18DF高畠捷(3年)_尊敬する父の背中を追って。攻守に躍動した右SBはアシストも記録!

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攻守にアグレッシブに戦ったDF高畠捷

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[7.28 日本クラブユース選手権U-18大会グループステージ 鳥栖U-18 0-2 川崎F U-18 アースケア敷島サッカー・ラグビー場]

 前回王者を2―0で下し、逆転首位で決勝トーナメント進出を決めた川崎フロンターレU-18。大きな勝ち点3の立役者は、背番号2の右サイドバック・DF高畠捷(3年=川崎フロンターレU-15出身)だった。

 この試合、彼の前にいたのはMF福井太智(2年)とDF中野伸哉(3年)という、すでにトップチームで躍動をしているこの世代屈指のタレントだったが、逆にそれが彼の闘争心に火をつけていた。

「プロで出ているという2人だからこそ、絶対に抑え込んでやると思っていました」。立ち上がりから常に左MFの福井と左SBの中野の位置関係を注視しながら、どちらにも対応できる中間ポジションを保ちつつ、常にインターセプトとどちらかにボールが入った瞬間に球際を激しく行く狙いを持って、立ち位置を工夫し続けた。

 さらに前にいる右サイドハーフのMF秋葉拡人(3年)を声で上手くコントロール。中野が高い位置に張り出したら、中に絞ってくる福井のケアを任せたり、逆に福井がサイドで構えたら、内に入ってくる中野のケアを秋葉にさせたりと、「彼らに裏のスペースを取られないことを意識した」と、『ピッチ上の頭脳』としても存在感を放ち続けた。

 試合中、中野が福井に声をかけて連携の確認をしていたのを見逃さず、「こっちの守備を嫌がっているように見えたので、より彼らの連携を注視して秋葉と連携を取った」と語ったように、直後に福井から中野へのパスを見事な出足でインターセプトして、カウンターを仕掛けた。

 この高畠の冷静なポジショニングとコーチングによって、鳥栖の左サイドは上手く機能しなかった。それが鳥栖に攻撃のリズムを思うように作らせない要因の1つとなり、後半は中野が右サイドバックに移るなど、策の変更を余儀なくされた。

 相手の左サイドが福井とDF安藤寿岐(3年)のコンビになっても、今度は福井のマークを意識して対応すると、後半3分には鮮やかなアシストを見せた。右サイドでボールを受けると、ファーストタッチで前を向いた。

「相手が斜めから飛び込んでくるのが見えたので、縦に仕掛ければ自分のスピードで行けると思った」と、中に行くと見せかけて縦に加速をしてドリブルを仕掛け、パッと中を見ると味方がゴール前に飛び込んでくる姿と、寄せて来たDFがスライディングをしてくる姿が同時に飛び込んできた。

「このまま上げたらDFに当たると思ったので、キックフェイントをかけて相手を剥がしてから、もう一度中を見たら、ニアに(秋葉)拡人が飛び込んでいるのがはっきりと見えた」と、ふわりと浮かせるようなキックで秋葉に正確なクロスを送り込んだ。

 緊迫した場面で2度判断を変えて、アシストという結果に結びつけた高畠は、そこからさらに冴えたプレーを見せた。7分には鳥栖が左サイドハーフにスピードが武器のMF鬼木健太(2年)を投入してくると、「福井選手がFWに回って、さらに18番(鬼木)が縦に来るので、サイドでは2人に自由を与えないことを考えた」とポジショニングを修正。最後まで隙を見せず、完璧な完封勝利に攻守において貢献をしてみせた。

「前半の最後の方に上手く連携を許して、やっぱりレベルは高いなと思いましたが、逆に後半に集中力を維持してプレーすることができました」。

 試合後、こう笑顔を見せた高畠はトップチームの山根視来と登里享平の両サイドバックを参考にしながら、その頭脳的なプレーを養っていた。中でも同じ背番号2の登里には大きなヒントをもらったという。

「サイドは違いますが、ノボリさんは中でも外でも攻守において質の高いプレーができるサイドバックだと試合を見る度に思いますし、見習うべき存在。インナーラップするタイミング、組み立てに顔を出すタイミング、どれも一級品ですが、前の選手を声で動かすことは凄く参考にしていて、ノボリさんは相手の特徴、同サイドにいる選手の特徴を把握した上で、味方を的確なコーチングでコントロールしているからこそ、連動した守備ができているし、サイドでいい形で奪ってからすぐに的確な攻撃につなげられている。僕もそこは意識するようになりました」。

 まさに今日のプレーは登里のプレーのようだった。彼の学ぶ姿勢がこの重要な一戦で結果となって現れたと言えよう。

 さらに彼には参考と言うべきか、人生の師とも言える存在がいる。かつて川崎で監督を務め、現在は中国の広州恒大のU-17チーム監督を務めている高畠勉。彼の父親でもある。

「父はテクニック系で僕はゴリゴリ系なのでタイプは違いますが、僕の中では現役を引退してからも、『生涯サッカー』という人生を送っていることが本当に凄くて、サッカー界に貢献している父を尊敬しています。親の七光りなど言われないように頑張らないといけないし、僕もこれからどの道に進んでも、サッカーに関われる存在になっていきたいと思います」。

 多くの学びと刺激を受けて、着実に成長を遂げる高畠捷。これから先、どんな学びと刺激を自らの力に変えて成長していくのだろうか。将来が非常に楽しみなタレントに今後も注目していきたい。

(取材・文 安藤隆人)
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