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[MOM3529]京都U-18MF遠山悠希(3年)_古都の舵取り役は、もはや周囲の高い期待に応え続けるフェーズへ突入

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期待に応え続ける男。京都サンガF.C.U-18のキャプテン、MF遠山悠希

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[7.28 日本クラブユース選手権U-18大会グループステージ 大宮U18 1-1 京都U-18 前橋工業高校G]

 周囲の期待通りに高いパフォーマンスを維持し続けることが、簡単ではないことは言うまでもない。だが、それを義務付けられている選手というのも、また間違いなく存在する。「後半は蹴る所と、繋ぐ所と、崩していく所と、その局面局面でしっかり自分が判断して、チームの舵を取っていたという感覚は、自分でもありました」。京都サンガF.C.U-18のボランチ、すなわち“舵取り役”。MF遠山悠希(3年=京都サンガF.C.U-15出身)は、もうそういうフェーズに入っている。

 大宮アルディージャU18と対峙したこの日のゲーム。前半は相手のペースにやや飲まれてしまう。「立ち上がりは結構チーム全体の流れが悪い中で、ロングボールを使って相手を押し込むという話をしていたので、それをまずチームの考えとして自分も徹底してやっていました」。チームの狙いを遂行しつつ、遠山は“あること”に気付く。

「守る時間が増えたんですけど、相手のサイドハーフがカットインする所で、10番もドリブルが鋭かったので、そういう時に守備ではサイドバックとセンターバックと自分がそこに付くことで、カットインのカバーリングを意識していました」。状況を見極め、その時々に必要なことを過不足なく遂行する。

 1点ビハインドの後半31分。MF黒澤蒼太(2年)が同点ゴールを挙げると、殊勲の後輩へ向かって遠山は全力で走り出していた。

「ジュビロとの試合も勝ちたいというみんなの気持ちが結集して、ゴールに結びついたと思いますし、そういうみんなの気持ちがないとゴールって生まれないですよね。1人でドリブルして獲るゴールもあると思うんですけど、自分たちはチーム全員が繋がって、チーム全員の力でゴールという形が多いと思うので、自分たちもそういうところは意識していますし。そういうゴールが決まることで、チームとしての団結力や絆、『負けないぞ』という気持ちがさらに強まって試合に出ていくと思うので、それが形になって良かったなと思います」。

 付け加えた一言に、本心が滲む。「ホンマに最高でしたね。ああいう瞬間がサッカーをやっていて一番嬉しいです」。

 これで公式戦は5戦負けなし。なかなか勝利の遠かったチームにとって、高円宮杯プレミアリーグ第5節のサガン鳥栖U-18戦で、リーグ戦7試合目にしてようやく手にした初白星は、いろいろなことを好転させるきっかけになった。

「あの試合はクラブユースの直前で、勝って大会に入りたいという気持ちもありましたし、プレミアも勝てていなくてと、色々な想いがあった中で、勝利という形が本当に自分たちには必要だったので、あの時に良い形で勝利できたことが、今のクラブユースに繋がっているなというのは、僕もみんなも実感しています」。

「プレミアが始まった頃を考えると、成長している実感はみんなあると思いますし、成長があるから、勝ちたいという気持ちにもなるのかなと。負けている時でもみんなポジティブな声を出していますし、もう自分1人でサッカーをやっていないというか、チームとしてやるべきことをしっかりみんながやって、雰囲気をもっと良いものにできていますよね。変わってきていることは間違いないです」。抱え続けてきた『あと少し』の意味もようやく、だが確実に見え始めている。

 次からは決勝トーナメント。負ければ終わりの試合が続くからこそ、その舞台はより刺激に満ちている。「こういう全国大会の面白味は、普段やれないチームとやることで、自分たちが新しい刺激を受けて、サッカーの面で成長できるというところだと監督も話されていて、自分たちもそう思っているので、自分たちの“可能性”をなくさないために、残り4試合の中でどれだけ試合ができるかにトライして、自分たちが成長できる場の幅を広げていきたいと思います」。

 いつでもチームに1本の筋を通すキャプテン。遠山が求められ続けるものと、それに応え続けるものの“いたちごっこ”は、彼をさらなる高みに連れていってくれるはずだ。

(取材・文 土屋雅史)
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