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ライバルに突き付けられた基準が日常を変える。“次の試合”を引き寄せ続ける千葉U-18が熊本ユースに競り勝って堂々のGL突破!

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ジェフユナイテッド千葉U-18は堂々とグループリーグを突破!

[7.26 クラブユース選手権(U-18)GL第3節 熊本ユース 0-1 千葉U-18 コーエィ前橋フットボールセンターA]

 ずっと決勝戦を戦っているようなものだ。相手はほとんどがカテゴリーで見ても“格上”ばかり。常にギリギリの勝負を繰り広げてきたのだから、それは力が付かないはずがない。目の前のチームと、目の前の相手と、目の前のボールと、全力で向き合ってきた結果として、“次の試合”を引き寄せ続けている。

「ここからどうというよりも、それは関東の1回戦からずっと一緒で、良い相手とせっかくやれるわけだから、経験するだけじゃなくて、やるからには勝ちに行くと。じゃあどうやったら相手に勝れるかということを考え続けてきているので、次からはトーナメントだからということはあまり考えていないんですね。いつも一戦一戦同じように大事にやっていこうと」(ジェフユナイテッド千葉U-18・須永純監督)。

 重ねた真剣勝負の分だけ、上がり続けた基準を証明するグループステージ突破。第47回 日本クラブユース選手権(U-18)大会は26日、群馬県のコーエィ前橋フットボールセンター(下増田運動場)でグループステージ3日目が開催され、ロアッソ熊本ユース(九州3)とジェフユナイテッド千葉U-18(関東10)が対峙。粘り強く戦った千葉U-18が後半13分に綺麗なショートカウンターから、FW榁木絆生(1年)が挙げた1点を守り切って、ウノゼロ勝利。2年ぶりとなるラウンド16進出を決めている。

 勝点3で並ぶ両チームではあるものの、得失点差の関係で引き分けではグループステージ敗退となる熊本ユースが、先にペースを握る。「前半はトップ下やサイドで基点まではできていたので、そこからどうやって点を獲りに行こうかという話をしていました」と岡本賢明監督が話したように、DF東哲平(2年)、キャプテンのDF深江大志郎(3年)、DF奥村海斗(2年)の3枚でボールを左右に動かしつつ、機を見てインサイドハーフのMF河口京志(3年)とMF古閑聖(3年)が縦パスを引き出し、サイドへ展開。右のMF白濱光人(2年)、左のMF澤本和冴(2年)の両ウイングが仕掛ける流れから、ゴールを窺う。

「常に間を覗いてくる持ち方をしていたので、凄く嫌な回し方でしたし、後ろの選手のパススピードが凄く速かったですね」と振り返ったのは、千葉U-18の中盤アンカーを託されているMF湯田大賀(3年)。それでも、サイドアタックには右にDF尾崎芯太朗(2年)、左にDF眞鍋波留也(1年)を配した両サイドバックが懸命に対応。最後の局面ではDF谷田壮志朗(3年)とDF菱田大基(3年)のセンターバックコンビが身体を張り、相手のアタックをフィニッシュまで持ち込ませない。前半のシュート数は、両チーム合わせて熊本ユースが記録した1本だけ。ジリジリするような35分間は、スコアレスで後半へと折り返す。

「関東大会の初戦で対戦したヴェルディはもっと回してくるので、そういう意味では予選から格上とやる試合は慣れていますし、ビルドアップから相手が逆に入ってこれないということは、僕らの形としては悪くないと考えていました。プラン通りでした」(須永監督)「自分たちは中盤に枚数を掛けていて、いつでも縦に入れてきたら取れるという態勢を常に整えていたので、後ろで持たれている分にはそんなに嫌な感じはしなかったですね」(谷田)。千葉U-18は冷静に戦況を見極めていた。

 後半13分。「自分たちの得意な形」と谷田が胸を張るアタックが炸裂する。左サイドでいったんは失ったボールを「ロアッソが何としてもビルドアップしてくるチームだということはわかっていたので、そこでうまくカットできました」と口にした眞鍋が奪い返すと、MF原希優羽(2年)はダイレクトで左へ。開いたFW浅川秀斗(3年)がグラウンダーで送ったクロスを、榁木が丁寧に蹴り込んだボールはゴールネットを鮮やかに揺らす。

「昨日の夜に僕が『浅川くんからのアシストで決めます』と言っていて、浅川くんがボールを持った瞬間に『来るな!』と思いましたし、ゴール前に走り込んだらちょうど良いボールが来たので、流し込むだけでした」と笑った1年生アタッカーが、チームの狙いを完結させる貴重な先制弾。千葉U-18が1点のリードを奪ってみせる。



 追い込まれた熊本ユースは、変わらずボールを動かし続けるものの、シビアなゾーンには侵入できず。「スペースを埋められた時に、そこからの攻撃のアイデアが足りなかったですし、ちょっとファイナルサードでボールと人が動かなかったですね」とは岡本監督。10番を背負うFW神代慶人(1年)や途中出場のMF元松蒼太(1年)も懸命にボールを引き出しにかかるも、なかなかシュートを打ち切れない。

「最後はチームで1つになって、守備で粘り強くというのはずっとみんなで求めていることで、それはもう初戦からできていることですし、チームとしてやらなくてはいけないことなので、そこはいつも通り安定してできたかなと思います」(湯田)。

 4分間のアディショナルタイムが経過すると、試合終了を告げるホイッスルが鳴り響く。「僕らは引き分けでも上に行けるということで、その背景はしっかり伝えた中で、選手たちが効果的なプレーを選んでくれたと思います。すべてにおいて選手が良くやってくれました」と須永監督も選手たちを称賛した千葉U-18が、力強く1-0で勝ち切って、プレミア勢とプリンス勢が居並ぶグループを、堂々と2位で潜り抜ける結果となった。



 千葉U-18は今大会の関東予選で、昨シーズンのプレミアリーグEAST王者であり、今季も首位争いを演じている川崎フロンターレU-18と対戦。持ち味は十分に発揮しながらも、結果的には0-2で敗れたが、その90分間の経験が今のチームに大きな影響を与えているという。

「フロンターレからは1つの“基準”を戴きました。プレーのスピードはもちろんですけど、彼らは実は攻撃だけではなくて、守備がメチャメチャ強いんですよ。それを体験したことで、『あそこの域に行かないとダメなんだよ』とわかったんです」(須永監督)「奪われた後の切り替えや縦への推進力、フォワードの動き出しの質や連続性には、凄く自分たちにないものを感じたので、それからフロンターレが“基準”になったんです。アレを基準にすれば、全国でも戦えるということを意識して練習できたので、あの一戦は大きかったと思います」(谷田)「フロンターレの“基準”はメチャメチャ高かったですね。その後の試合も『フロンターレを思い出せ』みたいにみんな言っていたので、フロンターレとやって基準が上がったことで、他のチームとの試合がやりやすくなりました」(眞鍋)。フロンターレから得た絶対的な“基準”は、彼らの目線を一段階も、二段階も、引き上げてしまったようだ。

 普段は千葉県1部リーグで戦っているチームには、“格上”ばかりとの試合を楽しんでいる雰囲気が充満している。「自分たちは常にチャレンジャーという立場ですし、失うものは何もないので、今日も楽しい試合でした。やっぱりこういうチームとの対戦は燃えますし、それを楽しいと捉えられるチームだなって思います」と湯田が話せば、1年生の榁木は「プレッシャーは間違いなく1年生が一番ないと思うので、もう生き生きと、ひたすら頑張るだけです(笑)」と笑顔を見せ、やはり1年生の眞鍋は「『とにかく3年生を勝たせたいな』という気持ちが大きかったので、今日の勝利はだいぶ嬉しかったです。自分は1年生なので、すべてがこれからの経験にもなりますし、今の3年生は例年以上にだいぶ強い代だと思っているので、絶対に最近の成績を超えられると思っています」と言い切った。

 須永監督の言葉が印象深い。「僕らももう多くを言う必要はなくて、『それでいいの?』で終わりなんですよね。勝つのも負けるのも理由があると。『じゃあオレらはどの面で負けたのか』というところで、彼らはそれを経験して、身体で覚えているわけですから。この子たちは基本的にサッカーが凄く好きですし、勤勉なんです。ただ、その基準がないとぼやけてくるんですけど、そこさえあればもうずっと練習し続けられるような子たちなので、もっと良くなると思います」。

 “基準”は、すなわち“日常”とも言い換えられる。ライバルから突き付けられた“基準”は、彼らの“日常”を変えつつある。それを教えてくれたフロンターレと再び対峙するには、この大会で決勝まで勝ち上がるほかに方法はない。

「ジェフは今までの歴史があるクラブだと思っていますし、その歴史あるクラブだということを自分たちの代でまた復活させたいんです。自分たちの活躍を見た後輩たちの戦うカテゴリーがどんどん上に上がっていってほしいので、自分たちも今まで受け継いできたものを、またさらに大きなものにして、チームに残していきたいと思います」(湯田)。

 引き寄せるべき“次の試合”はあと3つ。真夏の群馬で巻き起こしつつある千葉U-18の躍進は、果たしてどこまで。



(取材・文 土屋雅史)
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