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FC東京 FW渡邉千真選手インタビュー「チャンスを活かしたい」

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 Jリーグ第24節を終えて、FC東京のFW渡邉千真は17ゴールを挙げて、得点ランクの2位につけている。開幕前は「2ケタゴール」を目標にシーズンに臨んだが、その目標を早い段階でクリアーし、自身のキャリア最高記録を更新し続けている。横浜FMから加入した昨シーズンと異なり、今季はより多くの出場機会をつかみとった。FC東京の得点源は、「チャンスを活かしたい」と、さらなるゴールラッシュ、そして日本代表入りへの意気込みを語った。

―今シーズン、ここまで17ゴールと素晴らしい活躍を見せていますね。
「まぁ、欲を言えばもっと取れました。個人的にはこのまま継続していければいいのですが、チームが今の順位にいることには、みんなも満足していません。むしろ、チームの力からすればもっと上に行けると思うので、自分の得点がチームの勝利につながっていないことは悔しいです」

―個人的な満足はあまりないのですか?
「やっぱり、点は取れているのですが、チームが勝てていないのでね。勝ちにつながっていないことが一番、悔しいです」

―それでも、これだけ多くのゴールが挙げていることは特筆に値します。なぜ、これほど点が取れているのでしょうか?
「いや、特に変わってやっていることはないんですけれど、昨年に比べて監督に信頼してもらえて、出させてもらっているので、その期待には応えたいと思っています。やっぱりチームの力になりたいっていう気持ちでやっているので。それがうまく結果につながっていると思いますし、試合で決定的なところを外しているシーンも多いですが、しっかりゴールに結びつけられていることは大きいなと思います」

―昨年はなかなか出場機会がありませんでしたが、出場時間では確実に点を取っていました。昨年の経験はどういうふうに生きていますか?
「そうですね。東京に移籍して最初のシーズンでしたし、昨年の時間は無駄ではなかった。今の自分にすごく活きていると思います」

―今シーズンの渡邉選手を見ていると、非常にゴールのバリエーションが増えたように感じます。
「確かに、1タッチでのゴールは増えたかもしれません。クロスに合わせたり、PA内でしっかり合わせられているところは、成長した部分だと思います。よりゴール前でシュートを打つ場面を増やせているところは、大きいと思います」

―それは何か取り組んだことがあったのでしょうか?
「いや、特にはありません。ただ、意識的にサイドからクロスが上がって来るし、サイドバックとかがうまく上がってきて、クロスを上げてくれるので、そこにFWは入っていかないといけません。チームとして、そういう攻撃の形があるので、そこを意識して中に入り込むようにしています」

―サイドから良いボールが入ってくるということですが、昨年は中央でプレーしていた長谷川アーリアジャスール選手、ルーカス選手がサイドでプレーしています。その影響もあるのでしょうか?
「アーリアとか、ルーカスがサイドになって、そこが起点になったときに、サイドバックも上がってきて、サイドで2対1とかの数的優位をつくったりしてくれるので、そういうこともあって、サイドの攻撃は有効に使えているのかなと思います」

―なるほど。では、渡邉選手が、もともと得意としていたゴールパターンというのは?
「PAの外からでも、斜めから巻いてシュートを打つっていうのが、一つの形でしたね。それが一番、得意な形ではあるんですけれど、一つの形だけでなく、いろいろな形から点を取りたいですね。今シーズン、両足、頭と、いろいろな形で取れているのは、自信になりますし、そこで取れるのは持ち味ですから、もっともっと点を取っていきたいです」

―日本代表の選手は『個の力』の重要性を口にします。渡邉選手は、『個の力』の重要性をどう感じていますか?
「日本代表でも、やっぱりボールを回しているけれど、最後の点を取るところは、個人の力になってくると思うので。そこで、どうやって点を取るかというと、個人の力になってくるので、そこを上げないと世界では点を取っていけないと思うので、個の力は非常に大事だと思います」

―そこを高めるために、取り組んでいることはありますか?
「練習から、やっぱり貪欲にゴールを狙い続けることですよね。練習で打っているシュートから意識していかないと試合では結果が出せないと思うので、日頃から意識を高く持ってやりたいと思っています」

―ストライカーは、チームメイトがつくったチャンスを決めるという責任の大きいポジションです。シュートを打つ、という決断をするために、渡邉選手はどのようなことを意識していますか?
「決断というよりは、ボールが来る前からのイメージが大事かなと思います。たしかに、みんなのアシストがあってからこそゴールは生まれますし、最後はFWがシュートを打つ場面が多くなります。そこは事前にイメージをしていくことと、あとは自信を持って打つしかありませんよね。前を向いたら、最初はゴールを意識しないといけないと思いますし、悩んでいても相手がいるものですし、そこは良い判断をしないといけません。これまでも、あまりゴール前で悩むということはありませんでしたけれど、今は良いポジションが取れているからこそ、シュートが打てていると思います」

―『良いポジションが取れる』。これが今シーズンのキーワードでしょうか?
「そうですね。良いポジションが取れていますし、シュートの意識が高まっていることが結果につながっていると思いますね。点が取れているのは、やっぱり単純に出場時間が長いこと。あとはチームとしてやっぱり昨年に比べて、パスだけではなく、カウンターや前に行く意識が強くなっているので。自分のところにもボールが入って来るし、シュートを打つ機会が多いのもありますね」

―ボールのないときの動きでも、非常にチームに貢献しています。
「東京に来て、チームの戦術や監督に求められていることをしっかりプレーでできているのかなというのは、自分の中にあります。FWなのでゴールを取ることも大事ですが、守備もやらないといけない。そこは意識して取り組んでいます。最初は移籍してきて、やり方に苦労しましたが、今は自分でも成長しているなと感じられますし、今は慣れているなと感じています。プレーの幅も広がったと思います」

―ゴールという結果を出し、ボールのないところでも貢献していますが、チームはシーズン途中にFW李忠成選手が加入していた時期もあり、ポジション争いも激しかったですね。
「FWだけじゃなく、他のポジションにも良い選手がたくさんいるので、東京はいろんなポジションでポジション争いがあります。それが自分にはいい刺激になりましたし、切磋琢磨して今も毎日できているので、良い方向に向かっていると思います。もちろん、選手としては長い時間試合に出たいですが、それは監督が決めることなので。良いプレーをしていたら90分プレーできることもあるので、続けていければいいかなと思います」

―ナイキの『ハイパーヴェノム』を履いている渡邉選手ですが、同じスパイクを履いている川崎Fの大久保嘉人選手とともに、得点を量産していますね。
「自分の足にしっかり馴染んで、要求に応えてくれています。足にしっかり合っていると思うので、問題なくプレーに専念できていますし、すごく良い影響を与えてくれていると思います」

―スパイクに求めるものは?
「履きやすさですね。あとは、違和感なく履ければ問題ないですね。しっかり合っていることが大事です。このシューズはすごく軽いですし、動きやすいです」

―渡邉選手のストライカー像を聞きたいのですが、子供の頃に憧れていた選手は?
「元オランダ代表のベルカンプが昔から好きでしたね。昔から、いろんな映像を見ていました。やっぱりトラップがうまくて、いろんな形でシュートに持ち込んでいたので、プレーの参考にもしていました」

―9番の選手かと思ったら、10番のイメージのある選手ですね。背番号は今年、9番になりましたが、そこに対するこだわりは?
「9番は昔から好きでずっと付けていたので。それで今年は9番をもらいました。自分にとってなじみのある番号です」

―小学校2年のときにサッカーを始めたということですが、当時からストライカーだったのでしょうか?
「いや、ストライカーではないですね。トップ下でプレーしていました。前目なポジションをやっていましたが、ストライカーではなかったです。FWでプレーするようになったのは、高3からですね」

―国見高時代、どんなことを教わっていたのでしょうか?
「技術的なことよりも、人間的なことを言われることが多かったですね。印象的なのは『勝っても、そこで浮かれるな』と言われることですね。また次も試合があるので、勝っても浮かれちゃいけないっていうのは、今も思っています。勝利のメンタリティは当時、すごく植え付けられたと思います」

―あとは国見高といえば、走力が頭に浮かびます。
「まぁ(苦笑)。練習で培ってきたものは、身に付いていると思います」

―今シーズンは2ケタゴールを目標に臨みましたが、大きく上回っています。現在はどのような目標を掲げていますか?
「チームは優勝を目指しているので。まだあきらめていませんし、その目標に向けて、ブレずにしっかりやっていきたいですね。」

―前半戦では「得点王はまだ見えない」と話していましたが、今は?
「まだまだですね(笑)。そこは意識せずに、1点1点積み重ねていくだけです。意識せずにやりたいですね」

―得点を量産しており、日本代表入りを期待する声も増えてきています。
「そこは忘れずに意識していますし、クラブで良いプレーをしないと呼ばれないので。意識するだけでなく、しっかりと活躍できるようにやっていきたいです。代表でもクラブと同じ1トップでやっているので、イメージもすごくしやすいですし、個人的には代表も目指してやっていきたいと思います」

―来年のW杯への想いは?
「もちろんありますし、年齢的にもいい年齢なんで。時間は少ししかありませんが、チャンスはまだあると思うので。そのチャンスを活かしたいと思います。そのためにもやっぱりゴールを挙げていきたいですね」

(取材・文 河合拓)

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