beacon

[選手権]数的不利を乗り越え富山一が長崎総科大附から逃げ切る

このエントリーをはてなブックマークに追加

[12.31 全国高校選手権1回戦 長崎総合科学大附2-3富山一 駒場]

「神様は試練を与えてくれる」。大塚一朗監督が振り返ったように、富山一(富山)は1-0の前半26分に退場者を出し、残り時間を10人で戦わなければならなくなった。しかし、効率良く得点を重ねて一時は3-0とリードを広げると、長崎総合科学大附(長崎)の反撃に2点を失いながらも体を張ってしのぎ切る。結局、3-2で逃げ切りを見せ、2回戦に駒を進めることになった。

 試合はいきなり動いた。前半4分に富山一が迎えたFKのチャンス。トリックプレーからDF竹澤昂樹(3年)が左足で正確なボールをゴール前に送ると、ニアに走り込んだMF西村拓真(2年)がヘッドで合わせて先制点を奪った。

 試合開始早々にリードを奪ったが、その後は長崎総合科学大附の堅い守備を崩せず、敵陣深くまでボールを運べない。前線のFW渡辺仁史朗(3年)はMF小橋川政一郎(3年)、MF大塚翔(3年)はMF藤井人夢(3年)の厳しいマンマークに遭い、なかなか攻撃の起点をつくれなかった。フィニッシュへ持ち込む前にボールを奪われ、逆にカウンターからピンチも招いた。

 長崎総合科学大附はボールを奪取すれば、シンプルに前線にボールを蹴り出し、富山一ゴールに迫った。3トップのFW境泰樹(3年)、FW中島成斗(1年)、MF安藤翼(2年)はスピードだけでなく、個人で状況を打開する力があり、幾度となくサイドを攻略。前半12分には境のパスから抜け出した中島がGK高橋昂佑(2年)と1対1を迎えるが、シュートは高橋に防がれ、同点には追い付けなかった。

 たびたびサイドを突破され、ピンチを招いた富山一だが、ゴール中央できっちりと相手攻撃を跳ね返し、得点を許さない。しかし、前半25分、DFラインの裏に抜け出した中島をファウルで食い止めたDF村上寛和(2年)が一発退場となり、数的不利に陥ってしまった。

 ここでCBの選手を投入して守備の人数をそろえるのではなく、右SBのDF城山典(3年)が村上の抜けたCBに入り、ボランチのMF川縁大雅(3年)が右SBにシフトすることで体勢を整える。この配置変換はベンチから指示が出る前にピッチ上の選手たちが判断したもの。「竹澤が言ってきたんです。ただ、ボランチを3枚にすることでセカンドボールを拾えるようになりました」と大塚監督も選手の対応力を称えた。

 数的不利となりながらも、慌てず騒がず。長崎総合科学大附に押し込まれる時間帯をしのぎ切ると、1点リードで迎えた後半3分に再びスコアを動かす。CKのこぼれ球に反応した西村が再びネットを揺らし、リードを広げた。さらに後半9分にはMF細木勇人(3年)のCKを渡辺がボレーで合わせ、3-0。一人少ないながらもセットプレーで得点を重ね、3点のリードに成功した。

 しかし、ここから長崎総合科学大附が反撃に出る。ピッチの幅を大きく使い、左右に揺さ振りをかけると、それまで堅牢な守備を築いていた富山一に綻びが出始める。後半26分に相手GKとDFの連係ミスをついた安藤が1点を返し、さらに後半37分には右サイドを突破した途中出場のMF知念北斗(3年)のグラウンダーのクロスに境が合わせ、2-3と1点差に詰め寄った。残り時間は3分。数的優位な状況を考えると、同点に追い付くことは十分に可能かと思われた。

 だが、ここで富山一が粘りを見せた。ゴール前への侵入を許そうとも、最後は体を張ってシュートを枠内に飛ばさせない。試合終了直前のCKの場面ではあわやという場面をつくられたが、ボールはゴールの枠外へと転がり、得点を許さなかった。「神様、助けてくれという祈りが通じました」と大塚監督は苦笑したが、数的不利に陥りながらも最後まで集中力を切らさずにゴールを守ったからこそ、富山一に勝利の女神は微笑んだ。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)


▼関連リンク
【特設】高校選手権2013

TOP