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厳罰処分の浦和社長が謝罪会見…損失は1億円以上に

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 今月8日に埼玉スタジアムで行われた浦和レッズ対鳥栖の試合で差別的な内容の横断幕が掲出された問題で、Jリーグからけん責処分及び、23日のホーム清水戦(埼玉)を無観客試合とする制裁を受けた浦和の淵田敬三社長が13日、都内のJFAハウスで記者会見を行った。

「ファン・サポーターの皆さまをはじめ、関係方面の多くの方々にご心配とご迷惑をおかけしたことを深くお詫びします」。会見の冒頭で深々と頭を下げた淵田社長は、Jリーグ史上初となる無観客試合の厳罰に「社会的な影響に加え、2010年の仙台戦、昨年の清水戦での事件など、これまでに我々浦和レッズのサポーターが起こしてきたトラブルを鑑みれば、制裁金を超える重い処分が妥当であり、当然のものと受け止めております」と語った。

 問題となった「JAPANESE ONLY」の横断幕を掲げたサポーターグループの男性3名はクラブの事情聴取に対し、「差別や政治問題化させる意図はなかった」と主張したという。会見では「それでは、どんな意図で掲げたと話しているのか?」という問いに「ゴール裏は彼らにとって聖地みたいなところで、自分たちでやっていきたい、他の人は入って来てほしくないという意図があったようだ。最近、浦和の試合には海外の観光客の方もいらっしゃる。そういう方が来て、統制が取れなくなるのは嫌だという言い方はしていた」と説明。それがまさに差別であるのだが、不明瞭な答弁は続いた。

 対応の甘さは、他にもあった。G大阪との開幕戦で一部選手に対する指笛が聞かれたことから、鳥栖戦ではゴール裏付近にクラブスタッフ3人を配置。試合後の調査では、サポーターから鳥栖戦でも差別的発言などがあったとの情報が入ったが、肝心のクラブスタッフは「座席のところには行かず、ゲートの横にいた。中には入れないので」と、だれ一人、現場で確認できなかった。こうした稚拙な対応には、クラブとサポーターの関係という根深い問題があることを認める。

 今回の横断幕も、問題を認識しながら即座に撤去することができず、試合終了まで掲出され続けたが、横断幕の撤去について「クラブとサポーターの間にルールができている。本人の了解を得ずに取ったときの混乱を考えると、ルールとしては本人の了解を取ったうえでやろうというのが慣習の積み上げとしてある。それが変な形で制約になっている」と弁明。「クラブとしてスタジアムを一定のコントロールにおけるか、おけないか。そこのルール作りをしっかりやらないといけない」として、当面、浦和のサポーター全員に対し、すべての横断幕、ゲートフラッグ、旗類、装飾幕等の掲出を禁止とすることを決めた。

 この施策をめぐっても報道陣からは「すべての横断幕を禁止する理由は何なのか? だれも自信を持って『これは差別だ』『人を傷つける可能性がある』という判断ができないということか?」と追及され、「判断できないことはないと思っているが、意識のレベルがまだ十分に上がってきていないと思っている。まずは新しいルールを作るまでは横断幕等の掲出をやめようと。後ろ向きな方法かもしれないが、そういう事情です」と小さく答えた。

 無観客試合となる対戦相手の清水エスパルスに対しても「お詫びに行かないといけないと思っている。試合が計画されている中で無観客という形になってしまい、大変申し訳ない」と謝罪。チケットの払い戻しを含め、クラブへの経済的な損失も大きく、「細かい計算はできていないが、かなりの金額になる」としたうえで「チケットは1試合当たり平均が2500円ぐらい。それに人数をかけたものが、まずベースになるのではないか」と述べた。浦和の昨季の入場者数平均は3万7100人。単純計算で9275万円となり、1億円以上の損失は避けられない。

 試合を観戦予定だった清水サポーターがすでに予約していたホテルのキャンセル料など、チケット以外の個別の補償についても「個々の事象に応じて、相談しながら進めていきたい」と言及。一方、問題行動を起こしたサポーターに対する賠償請求に関しては「当事者への賠償請求は現時点では考えていない」と答えた。

(取材・文 西山紘平)

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