beacon

練習中止で取材対応、ザッケローニ監督コメント要旨

このエントリーをはてなブックマークに追加

 ベースキャンプ地のイトゥで21日午後(日本時間22日未明)に予定されていた日本代表の練習が急きょ中止となり、選手にはオフが与えられた。練習後に予定されていた選手の取材対応もキャンセル。代わってアルベルト・ザッケローニ監督が報道陣の取材に応じた。

以下、ザッケローニ監督のコメント要旨

アルベルト・ザッケローニ監督
「まずはみなさんにお詫びを申し上げないといけない。午前中の遅い時間に、トレーニングを休みにすることを決めて、その流れで選手のメディア対応もなしにしようということになった。今日は監督が出席するということで、私ですが、我慢してください」

―オフにした理由はコンディション面か、メンタル面か?
「フィジカルのところはまったく問題ないと思っている。メンタルのところで、選手たちを次の試合にいい状態で向かわせるためにということを考えたのが理由で、この2試合できなかったことを考えながら、バランスよく考慮した結果、今日は休みしたほうがいいのかなという決断に至った。チーム全体がこの2試合、満足のいく戦いができなかったことはよく分かっているし、言い訳もあえてするつもりはない。この2試合に関して、自分たちの戦いではなかったことはよく分かっている。これまでの4年間のこのチームの戦い方から見ても、こんなもんじゃないというのが全員の気持ちで、パフォーマンスも結果も、現時点では満足いっていない。その意味で次の試合にいい状態で臨むために、こういった決断をした。

 私が監督だから、ピッチに送り出す選手も決めるし、どういう戦いをするかも決める立場にある。今日の休みも自分の決断で、次の試合にいい状態で臨むためには今日休ませて、各々がプレッシャーを感じていると思うので、そのストレスをフリーにした状態で臨むのが一番だと考えて決断した。フィジカルの問題はまったくなくて、よく走っていると思っている。キレという部分では別の話だが、走量では相手チームを上回っている。走れない状態ではないし、フィジカルの問題ではないと思っている。自分たちのチームのバランスを取り戻すために、できることは何でもやろうという姿勢でいる」

―今朝の選手はどういうメンタル状態だったのか?
「次のコロンビア戦で決まるということは選手もよく分かっているので、そこに向けて集中しているメンタルの状態ではあるが、一監督として、フィジカルの部分、メンタルの部分、技術的な部分、戦術的な部分、そういった要素すべてを考慮したうえで、今朝の時点で決めた。フィジカルは問題ない。休みを与えても大丈夫だと考えて、今日は休みにしようと決めた。みんなが満足していない状況の中で、その理由を各々が考えているが、時に考え過ぎるのはよくない。あり得ないものをネガティブに捉える現象も起こる。自分たちのやるべきことは照準を絞って、修正するところは1つか2つに限られているので、そういう意味で、あまり考えすぎないように、メンタルのところでフリーになってほしいという意図がある。この3日間で、いくつかの重要な修正ポイントに集中して改善していきたいと思っている」

―監督自身のコロンビア戦に向けた心境は?
「こうなったら集中力と覚悟というところが最後の最後では大切になってくるのではないかと思っている」

―コロンビア戦では試合経過によって1点でも多く点を取ることが必要になる可能性があるが?
「3日前の現時点で、3日後の試合で何が起こるかは予想できない。3日後の試合の中でだれが調子いいか、だれが試合に入れているのか、そういう要素を見ながら動かしていきたい。チームとしてどういう姿勢で、どういう戦いをコロンビア戦にぶつけていくべきかは頭の中にある。日本代表がバランスを保ちながら、自分たちのサッカーをできる限り出せるように、そういったメンバーがどういうものかを考えるべきだと思う」

―フィジカルに問題ないというが、ただ走っているだけで、クオリティーのないフィジカルでは意味がないのではないか? また監督自身のメンタルは大丈夫か?
「おっしゃるとおり、ただ走れていればいいということではない。そこにクオリティーが伴って、いい走りができなければいけないということはよく分かっている。そういった種類の言い訳をするつもりはない。キレがない理由はフィジカルの問題だけでなく、他の要素も入ってくる。総合して、チームとしてこれまでの戦いができていない。みなさんもこの4年間を見てきて、こんなもんじゃない、こんな戦い方じゃないというのは分かってくれていると思う。チーム全員が現状に満足していないし、いつもの自分たちと違ったというのを感じている。3試合目に向けて、そのズレを修正して、いい状態、最高の状態で臨む。そういう心構えでいる。

 心境的には、みなさんも私のことをよく分かっていると思うが、当然、満足していない。このチームはこれまでの戦いの中で、たくさんの喜びや満足感、充実感を与えてきてくれたと考えているので、コロンビア戦で再度、これまでやってきた、いい日本を出したいと思っているし、そういった戦いを見ていきたいと個人的には思っている。ここにいる選手とは全員と対話をしたうえで、その気持ちを確認した。全員が同じ方向を向いていると感じ取れたし、だれ一人としてその方向からズレている人間はいない」

―コロンビア戦での香川の起用法はどう考えているか?
「現段階で個人の話に言及するつもりはない。個人ではなく、チームとして思うような戦いができていないところが問題なので、個人の話はしない。今、何が機能していないのか。チームとしての戦いがうまくできていない。チームとして回らないと、個のクオリティーも出しづらい。チームが平均以下のパフォーマンスを出してしまうと、個のところも平均以上のパフォーマンスを出すのは難しい。今、考えるべきはチーム全体で、これまでやってきた、いい戦いができていたころのバランスを取り戻すことが大切だと思っている。これまでの戦いの中でクオリティーはたくさん出ていたし、見えていたが、それはチームとしてサポートできていたから、個々のクオリティーも出せた。次の試合で個のクオリティーを輝かすためにも、チームとしてしっかりバランスを取り戻す。まずはチームとして戦っていくことが大切だと思っている」

―これまでやってこなかったパワープレーを2試合続けて終盤にやっているのはW杯という舞台だからか?
「そのチョイスについては、試合全体ではなく、数分の話だと思う。自分たちのDNAにそういったプレーがないのはよく分かっている。当然、自分たちが主導権を握って戦っていくべきチームだと考えていて、そういうふうにチームをつくってきた。しかし、相手が最後の数分、ベタ引きしてきて、その状況を打開できないときには、最後の数分に限っては、そういうチョイスにもトライすべきだと思う。そういうプレーに適したプレイヤーがいたので、そういったチョイスをした。

 日本代表の監督に就任したとき、日本にあるサッカー文化を尊重しながらも、インテンシティーとアグレッシブさという国際レベルでは不可欠なものを付け足していこうということを身上としてやってきたが、その中でJリーグのゲームを200試合ぐらい見てきて、そのほとんどでパワープレーはなくて、ロングボールを蹴るような戦いはしていない。日本サッカーにそういったものがないことはよく分かったうえで、だから5分以上、そのプレーができないことはよく分かっている。これまでの代表の戦いでも、時にヘディングに強い選手を試合の終盤に入れるチョイスを試してきたが、そういった選手が入ってもグラウンダーでつなぐサッカーを試合の中で変えてこない戦い方をしてきた。それは子供のころからの慣れなのかなと。日本のサッカーは小さいころから足下でつないでボールを失わないようにするというサッカーをやってきているので、そこには合わせられないのかなというのは感じている。そういう意味でチームにはサイドで起点をつくったうえで、相手のDFラインを広げて、そこからミドルシュートだったり中のチョイスを使うようにという指示は出した」

―監督の采配にブレはないか?
「まったくブレはない。このチームはW杯直前までの戦いをするようにつくられたチームで、その思いは変わらない。そういう意味で自分たちのサッカーを出せなかったというところが問題だと思う」

―選手はオフということだが、外出も自由なのか? また残りの期間でパワープレーの練習はするのか?
「選手の午後はフリーだが、外出は禁止にしている。ランニングしたり、ボールに触ったりは自由にしていいと話している。落ち着くことで、ストレスやプレッシャーからできる限り解放されてほしい。

 2つ目の質問についてだが、3日あっても、2週間あっても、練習したところで試合では出せない。試合のテンションだったり、試合に入ったところで、自分たちの慣れているプレーというか、染みついているプレーを選手たちはやろうとする。その流れでロングボールを放り込んだり、パワープレーで勝負するというのは日本のサッカーにはない部分でもあるので、そこは出してもしょうがない。素早いコンビネーションではがしていくのが日本のサッカーだと思っているので、それを前面に出すサッカーをするのが大前提だが、とはいえ残り2分だったり、相手がベタ引きして、コンビネーションを出すスペースを与えてくれないという状況のときに、その2分間だけやるということはあり得る。

 その中でチームは自分たちの特長やストロングポイントを前面に出していくべきだと考えている。先ほど言ったが、過去には空中戦に強いメンバーをリストに入れて、実際に試合でもトライしたが、そこにボールが入ることはなかった。だから、ここでもこれまで自分たちがやってきたことを信じて、自分たちのサッカーを出していくことが大切なのかなと思う。自分が発信したいメッセージとしては、あと1試合あるということ。それに向けて自分たちの持っている特長、自然に持っているものを前面に出して、スピードに乗った技術力をより高い精度で出して戦っていくべきだと思う。スピードというのはただ単純に足が速いということではなく、パスのスピードやプレーのスピード、コンビネーションのスピードのことを言っている」

―選手23人とどういうシチュエーションで話をしたのか? 長谷部とはどんな話をしたのか?
「チーム内で話していることや、その状況はチーム内にとどまるべきで、外に出るべきではないと思っていて、それぐらいは自分たちで守りたいと思っている。でなければ、選手と話すときも、みなさんに同席してもらったほうが話は早いのではないかと思う(笑)」

―いつ、どのタイミングで選手と話をして、どんな反応だったのか?
「想像してもらいたいが、ここで24時間、全員で過ごしている。朝食のとき、朝食から昼食までの間、昼食のとき、昼食後、練習している最中、練習後、夕食、夕食後。チャンスはいくらでもある。そういったチャンスを見ながら選手たちと対話するようにしている。対話するタイミングと時間は十分にある」

―今日、オフにしたことで、コロンビア対策をする時間が少なくなったが?
「4年間、哲学として掲げてきたことはここで変えるつもりはまったくない。このチームは自分たちのやるべきことを一番に出していかないといけない。自分たちのつくってきたサッカーを出していこうと思っている。この2試合の戦いで、その哲学を変えたくもないし、変えるつもりもない。これまで代表で50数試合やってきたが、同じチームはなく、すべてタイプの違ったチームと対戦している。その意味で自分たちのことに目を向けたほうがいいと思っている。

 相手をまったく見ないと言っているわけではなく、当然、その試合で1つ2つの大きなポイントが必ずあるので、そこはしっかり落とし込んでいくやり方をしている。相手を知ることは大切で、相手のストロングポイントやウイークポイントの情報は出したうえで、試合に入っていくにあたっての大切なポイントを1つか2つに絞って、落とし込んでいきたい。相手の情報を多く出し過ぎて、詰め込め過ぎると、相手をリスペクト、警戒し過ぎてしまう。自分たちのことに目を向けてやっていこうというメッセージを常に出している。そのあたりのことも他のことと同じように、バランスが大事だと思っている」

―イトゥはリカバリーをするには涼しい環境だが、試合会場は蒸し暑い。なぜイトゥをベースキャンプ地にしたのか?
「チーム全体で考えたうえで、暑熱対策は指宿と(米フロリダ州の)クリアウォーターでやってきた。ここではきちんと練習に取り組める環境が必要だと考えた。ここで休んで、次に備えることが大事だと思って決断した。この決断を下すにあたって、(組み合わせ)抽選より前に決めないといけないというのはハンデでもあったが、そういう考えの下、ここをベースキャンプ地に選んだ。ただ、言い訳はしたくない。気候を言い訳にするつもりもまったくない。結果が付いてこないときには何がいけなかったのかということが山ほど出てくるが、自分の中でその理由を見極めて、絞って、対応していきたいと思っている」

―過去2試合、自分たちのサッカーができなかったのはメンタル面の問題ということか? 今日のオフは監督も考えをまとめる時間になるか?
「選手はフリーだが、私はフリーではなく、実際にここに立っている(笑)。これが終わったら、部屋に戻って、しっかり準備したい。勘違いしてほしくないのは、ここにいるのが嫌だとはまったく思っていない。これも一監督の仕事で、結果が付いてこないとき、うまくいっていないときは、監督が前に出てきて話すべきだと思っている。

 一つ目の質問についてだが、理由は一つだけではないと思っている。たくさんのことがあって、この2試合、うまくいってないと考えているが、大きな原因はプレーのスピードが伴わなかったことだと思っていて、なぜ伴わなかったのかというと、頭のところで何かブレーキがかかってしまっているのではないかと考えている。あとは初戦の結果が次の戦いに響いたのかなというところはある。

 ここからは監督の番で、選手にはこれまでいい戦い、素晴らしい戦いをしてきたということを、ここでまた話してあげないといけないと思っているし、監督からの信頼が十分にあるということを伝えていきたい。能力的に十分できるメンバーがここにいることを伝えたい。最後になるが、選手たちと対話していくうえで、次の試合は絶対にやってくれるだろうと思っている。なので自分の心境を問われたら、(現在の時刻の)午後4時20分の心境を言うとすれば、非常にポジティブな気持ちでいる」

(取材・文 西山紘平)

★大会日程やTV放送、最新情報をチェック!!
2014W杯ブラジル大会特設ページ
★全64試合の公式ダイジェスト動画を配信!!
2014W杯ブラジル大会動画ページ

TOP