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内田篤人インタビューVol.1「ノイアーは自慢の友達」

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 ブラジルW杯で1分2敗のグループリーグ敗退に終わった日本代表において、孤軍奮闘とも言えるパフォーマンスを見せたのがDF内田篤人だった。ピッチに立つことができなかった南アフリカW杯から4年。ブンデスリーガのシャルケで一回りも二回りも大きくなって挑んだブラジルW杯では全3試合にフル出場したが、チームとして結果を残すことはできなかった。シャルケでの5シーズン目を控え、日本が誇る右サイドバックは今、どんな思いを持っているのか。ゲキサカが直撃インタビュー――。
内田篤人インタビューVol.2「自分たちのサッカーという言葉が一人歩きした」

―W杯ではある程度、自分自身の現在地に見合ったプレーができたのではないでしょうか。
「負けましたから、もちろん悔しい気持ちはあります。でも、勝負の世界だから勝ち負けはある。結果がすべてということだと思います」

―力を出せたという思いはある。
「南アフリカで試合に出られず、その後の4年間を過ごしてきましたが、シャルケで良い練習や試合を経験できていたので、僕自身としてはある程度普通にやればやれると思っていました。ドイツで戦ってきた相手チームや、シャルケのチームメイトを思えば、W杯も普段どおりの相手。そんなにかけ離れた世界ではなかったです」

―個人としては新たな世界ではなかったのですね。
「そのためにみんな海外に行っていますし、今さら世界との差がどうという感じではないと思います。ある程度分かっていたことだと思います」

―W杯を経験して変わったこと、変わらなかったことを教えてください。
「基本はほとんど変わらずでした。(2月に)ケガをしたので、コンディションに関してはスタッフの人に持ち上げてもらったというのがありますが、メンタル面や試合への準備というのは普段どおりやれば問題ないと思っていました。違いがあると感じたのは、国歌を聴いたときですね。W杯という部分で緊張感も注目度も違いましたし、そういう中で力を出さないといけないと思いながらやっていました」

―確かにコートジボワール戦前は緊張していたように見えましたね。
「ある程度自分で緊張感を持っていないと良い準備ができないことは分かっていました。緊張感や、追い込まれた状況が自分の力を出してくれることは、今までの経験で分かっていたこと。チャンピオンズリーグでもあれくらいの緊張感がありますからね」

―W杯でチームとして感じた課題、これから取り組むべきだと思ったことは何でしょうか?
「世界の強いチームとの差はあると思いますが、例えばシャルケは1904年からチームができています。日本とは歴史が違うんです。向こうからしてみれば、日本には負けないという強い気持ちがありますよね。だから、それに追いついて、追い抜こうとするには時間がかかる。自分たちの世代でそれができなかったのは悔しいですが、しょうがないところはある。そういうところをどうにか縮めて、追い抜こうというのが今の目標です」

―ところでブラジルにはご両親は来ていらっしゃいましたか?
「来ていました。4年前は(南アフリカに)来てもらったけど、試合に出られずに日本に帰らせてしまって……。今回は一応3試合とも出させてもらったので、勝ちがなかったのは残念でしたけど、両親は僕がサッカーを始めたときから応援してくれていましたから、日の丸を背負ってW杯で戦うというのは、サッカーをやってきた中で一つの恩返しかなと思います」

―W杯はドイツが優勝しました。どこに強さがあると思いますか?
「ドイツではユースの世代からとんでもない選手が出てきたりします。ユリアン・ドラクスラー(シャルケ)のような20歳過ぎくらいから10番を背負って、各国リーグのトップチームから誘いが来るような選手がいます。シャルケだけじゃない。マリオ・ゲッツェ(バイエルン)もそう。ああいう選手がどんどん出てきて競争があるということが強い国の条件。ブンデスリーガはお金もあるし、運営もうまいし、お客さんも入る。全体がうまくいっていると思います」

―W杯では元シャルケのGKマヌエル・ノイアー(バイエルン)が大活躍しました。
「いやいや、あれは普通ですよ! (シャルケでチームメイト時代に)エリア外から相手にシュートを打たれて、入ると思ったことがないですからね。ノイアーは足元もうまいし、前に出るのもうまい。W杯でみんなが盛り上がっていますが、僕らはあれが世界基準であるということは分かっていました。ノイアーは自慢の友達ですよ」

―ドイツには良いGKが出てくるイメージがあります。
「良いキーパー、多いです。強いチームには良いキーパーがいます。上背もありますし、足元の技術もあると言われています。キーパーは、手を使ってはいけないサッカーのルールの中で、一人だけ手を使う特殊なポジション。それだけ大事なのではないかと思います。今回(のW杯)はキーパーに焦点が当てられた印象ですね」

―W杯を経験して、子供たちにどういうアドバイスを送りたいですか?
「やはり、ここというときに勝負できる、活躍できるヒーローが欲しいですね。メッシ、クリスティアーノ・ロナウド、スアレス級の選手が出てきてほしいとまでは言いませんが、ある程度試合を決められるヒーローが出てこないと厳しいと感じました。一つ、二つ、三つ先まで行くには、違いを出せる選手が必要です。技術がある選手というよりは、運でも何でもいいのですが、『あいつ、すごいときにゴールを決めるな』というスーパーな選手が必要。どうやって育てるとかいうレベルの話ではないのかもしれないですけどね」

―子供の頃はどんな練習が良いのでしょう。
「いろんな遊びをしたほうがいいと思います。サッカーだけじゃなくて、ソフトボール、ドッジボール、バスケットボール。僕もそうやってきました。できる選手はいろんなスポーツができますから、いろんなスポーツを楽しく。それと、勉強もしたほうがいいですね」

―子供のころ、ここは負けないぞと思っていた部分は何ですか?
「スピードは自分の中の売りでしたから、スピードでは負けたくなかったです。足が速いとか、体が強いとか、ヘディングが強いとか、一つ特長があるとプロにもなりやすい。全体的にレベルアップするよりは、一つ抜けていたほうがいい」

―調子が良いときのバロメーターはありますか?
「ボールが来たときに、トラップしようとしてボールに触れずにタッチラインを割ってしまうときがあるんですが、それは自分の中で調子がいいときだと思っています。ギリギリまでFWの動きを見ていますから、そういうときは周りが見えている証拠なんです。だから、ある程度プレッシャーが来ていても、直前まで周りを見ていられるときは調子がいい。今のサッカーは、サイドにボールを追い込んでそこで網を掛けるという守り方があります。サイドバックはサイドで一番きついプレッシャーに来られたときに取られたらダメ。そこが攻撃の起点になりますから。フィリップ・ラームやマルセロは、ボールを動かしながら自分も一緒に前へ出て運んでいく。そういう選手はすごいなと思います。ボールが来る前の準備で、ある程度決まっていますね」

(取材・文 矢内由美子)

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