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降格圏からの巻き返しを誓うG大阪FW宇佐美貴史「一人でサッカーを変える」

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 今シーズン、2年ぶりにJ1の舞台に戻って来たガンバ大阪。しかし、かつての攻撃王は、その舞台で苦しんでいる。14試合を終えて4勝3分7敗と負け越し、降格圏の16位にいる。14試合で19失点と失点の少なさは例年以上だが、その一方で14得点と持ち味の攻撃力が発揮できていない。ケガにより、リーグ戦の出場が6試合にとどまっていたFW宇佐美貴史は、自身がG大阪を復活させると、後半戦を前に吠える。

―チームはJ1の16位にいます。この成績はどう受け止めていますか?
「いるべき順位ではないと思うし、それを後半戦は自分たちで証明していかないといけないという立ち位置ですね。現実的に降格圏の16位にいるので、危機感とかは持ちながらやっていかないといけない。前半戦の攻撃面でうまくいかなかったところとか、守備もそうですが、自分が出ることでガラッと変えていける自信があります。(ケガもあり、ここまで)Jリーグは3試合しか先発出場していないのですが、攻撃的なところを復活させられる自信はあるので。一人でサッカーは変わらないと思われがちですけど、一人でサッカー変わりますからね。だから、一人でサッカーを変える。その自信はあるし、変えないと、僕の存在価値はないと思っています」

―いま、『いるべき順位じゃない』、その位置にいる最大の理由は?
「得点を失点が上回っている。そこですよね。失点を少なくしようという監督の意図とか、チームとしての意識の中で、失点は今までに比べると少ない。でも、今までに比べて決定的に点が少ないから勝てていないだけです。だから、課題は攻撃だと思います。逆に今、攻撃面で点が取れていないのに、失点はあれだけ抑えられている。ということは、攻撃面でもっと点が取れるようになってくると、相手の精神的なところに与えられるダメージも大きくなっていくし、点が取れるとなれば攻撃の時間が増えるということなので、さらに失点も減ると思うんです。だから、今、変えていかないといけないのは、攻撃に対してのチーム全員のこだわりとか、決定機を決める、ボールをしっかり動かす、ショートカウンターを狙うとか。監督が言っていることでもありますが、その辺の意識を全員が持って、攻撃に勢いが出てくれば、守備の負担がもっと減る。そうすれば失点数ももっと減るし、得点数も増える。そうすれば、勝てる試合も多くなる。それが理想ですね」

―練習試合では倉田秋選手と積極的にコミュニケーションを取っていました。後半戦に向けて意識していることは?
「より前のポジショニングにこだわってやろうかな、という意識です。もう一人の組むFWによって変わってきますが、(倉田)秋くんと組ませてもらったら、秋くんがボールを動かして、ハードワークしてやっている中で、自分は前にいないといけない。前で、決定的な仕事ができるポジションにこだわってやろうと思います。それが監督に言われていることでもあるので」

―昨年Jリーグに戻り、J1は3年ぶりです。久しぶりに戦って変化は感じますか?
「個々が、うまいなっていうのは感じます。ブンデスリーガと比べても、どのポジションの選手も、やっぱりうまさはありますね。ボールを扱う能力とか、そういううまさはJ1の方が、上かなと思いますけど、ゲームの動き方、スピード感は向こうの方が上だなって感じるところもあります。3年前と比べて、レベルが上がっているかは、まったく分からないですけど、うまいなって思います」

―宇佐美選手自身の調子は?
「ボチボチですね。この中断期間は、状態を維持することを意識していました。(コンディションを)後退させずに、あわよくば上昇させよう、と。練習試合をした感じでは上がっているし、ケガをする前の感じになってきているかなと思います。後半に入ってからも動けていましたし、良い感じでリーグ戦の再開を迎えられると思います」

―公式戦がない中断期間、コンディションを維持するのは難しかったのでは?
「もう練習から意識的にやるしかないしです、中断のときも3日間くらいしか休まなかったので、その辺が利いているかなと思います。コンディションを一度落として、またゼロから積み上げるサイクルは面倒臭かったので」

―試合で感じていた課題で、この中断期間で克服しようとしたことは?
「特にありませんが、周囲との連係とか、個人で言えば、ドリブルで入っていくときの体のフィット感ですかね。体が(イメージに)ついてきていなかったこともあったし、ボールと体が言うことを聞かなかったときも何回かあった。その辺の仕掛けるときの間合い、感覚っていうところを、普段の練習の合間にボール触って感覚を確かめました。それくらいですね」

―シュートのインパクトに関しては、取り戻せましたか?
「シュートは、練習で完璧じゃない方がいいんですよね。練習で飛ばなくても、試合で飛ぶから。練習で出たことのないようなシュートが、試合では出るので。シュートの機嫌は、全然分かりません。試合前のアップとかで『すごく良いな』と思ったときの方が、試合ではダフったりするから、その辺は全然わからないです。シュートは、すごく気まぐれです」

―宇佐美選手の調子のバロメーターは、何ですか?
「ボールタッチのフィーリングですね。ボールタッチの感覚で、言うことを聞いているかなとか、トラップしたときの感じとか。そういうので感覚を調整しています。シュートは、本当に訳が分からないんですよ。練習していないシュートが飛んで行ったりするので。たとえば、FC東京戦で決めたシュートも、あそこしか狙っていないというところに飛ぶじゃないですか? 本当にあそこしか狙っていなくて、打った瞬間に線で見える感じでした。でも、練習では、そんな線が出たことはありませんからね。試合でしか出ない。試合特有の集中力があるんでしょうね」

―そういうシュートが出る確率は、どれくらい?
「結構、出ますよ。徳島戦のときにクロスバーを叩いたシュートも、ゴールを一回も見てません。シュートは、『我ながら、良いモノを持っているな』と思いますよ(笑)。適当にゴールを見ずに打ったら、端に飛んでいくんですよ。もちろん間接視野とかで(ゴールを)捉えながら狙っているときはありますけどね。FC東京戦のときもそうですし、入るときっていうのは、イメージ通りにシュートが飛んでいきます。シュートだけは、自分の感覚とはまったく別もの。そんな気がしますね」

―その『シュートが別』という境地に辿り着いたのは、いつだったのでしょうか?
「そもそもシュートに対して、意識を持ったことがないんです。もともとドリブルが好きで、ドリブルで抜いて行った先に、シュートを打てば入るという感覚から始まっています。ユースのときも、サイドハーフをやらせてもらって、ドリブルを突きつめていきました。突きつめて、相手との間合いとか、ボールタッチとか、フェイントで、こういう動作を入れたらラクになるのかなと考えて行くうちに、シュートはそっちのけになったんです。ドリブルの延長でシュートを打つ練習をするようになって、それでもドリブルしか意識しない。シュートを、二の次にしていたのですが、知らない間に『アイツの魅力はシュートだよ』って周囲から言われるようになってきて、『オレの魅力はシュートなのか?』って。『オレは、ドリブルを意識してやってきたのに、シュートの人間なのか?』ってなってきて。で、さらに『シュートの際の振りが早いよね』とか言われ始めたんですよね。自分自身では、ドリブルしてからバーンって力いっぱい打っているイメージなのですが、映像を見たらパーンと打てている」

―実際に、ドイツから帰って来て振りは速くなっていると思いますが?
「うーん。『シュート、すごいよね』と言われたら、オレは『うん』というしかないんですよ。というか、言われても全然嬉しくないんですよ。自分が工夫して、考えてやっているドリブルを見てもらって『すごいね』と言われると嬉しいじゃないですか? でも、全然意識していないことについて、誉められても……ね? だから、FC東京戦の試合後も『どうしたんですか?』ってすごい聞かれたけど、『トラップして、かわして、打っただけですけど』って言うしかない。でも、それくらいの感覚の方が、シュートのフィーリングは合っているのかな、って思います」

―シュートへのこだわりは、それほどないようですが、ゴールへのこだわりは?
「ありますよ。もう、そこに尽きますよね、プロである以上。『結果を残していないけど良い選手だよね』とか、数字を残していない選手が『オレはできるんだ』と言っても、何の説得力もない。W杯とかでもそうですけど、逆に他のプレーが良くなくても、こぼれ球だけで6点取ってW杯で得点王になれば、それだけでスターです。得点の取り方や状況、もちろん、それらが華やかであればあるほど、人気が出たり、スター性が出たりするのはわかります。でも、5人抜きの6点と、こぼれ球の6点でも、価値は一緒なので、とにかく数字にこだわります。プラス、やっぱり点の取り方にも、僕はこだわりたいですね」

(取材・文 河合拓)
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