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[MOM308]流通経済大DF鈴木翔登(4年)_“上手くない男”がヒーローに

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[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[8.17 総理大臣杯全日本大学トーナメント決勝 法政大 1-2 流通経済大 キンチョウ]

「僕、マジでサッカー上手くないんですよ。なんでサッカーやってるの?って自分で思う位」。そう笑うのは流通経済大を主将として支え続けたDF鈴木翔登。決して謙遜な訳ではなく、中野雄二監督も「正直な事を言うと、鈴木のポジションは違う人間を起用しようと思っていた。コーチ陣も僕が鈴木を使う事を反対していた」と大会後の会見で打ち明ける。だが、「彼をピッチに出して、最後まで出し続けた事が決勝まで繋がった要因だと思う」と指揮官が続けたように連覇に彼の存在は欠かせなかった。

 上記のように決して、上手い選手ではない。だが、「気持ちのこもったプレーや声を切らさない事だったり、僕にしか出来ないプレーがあると思っている。精神的な思いでチームの役に立てればと思っている」との言葉通り、激しい守備と常に絶えない声は高校時代から評価され、流通経済大柏高に所属していた11年には選手権ベスト4を経験。大学入学後も2年時からAチーム入りした。だが、最終学年を迎えた今年 4月に足首を捻挫し、チームを離脱。6月に復帰したものの、今季の出場機会はわずかだった。

 だが、今大会前に再び浮上し、スタメン候補に名乗り上げると、チャンスを得た初戦の福岡大戦では気迫溢れる守備とチームを鼓舞する声で無失点勝利に貢献。彼の勇敢な姿を目にした中野監督は「フィールドの中にリーダーが必要だなと思った。彼のダメな部分に目を瞑って、使い続けよう」と起用に腹をくくった。今大会が初めてという4バックのメンバー構成ながらも、決勝までの3試合を1失点で切り抜ける事が出来たのも彼がいたからだ。「周りには上手い選手がいっぱいいるので、ボールを奪えばすぐに味方に預けて、僕は守備の整備を心掛けている」という言葉通り、奪ってからの素早い繋ぎもアクセントとなっていた。

 迎えた決勝戦でも序盤から熱い守りとコーチングでチームを支えただけでなく、後半34分には「相手が喰い付いてくれたので、背後に投げたら上手く転がってくれた」と左スローインで上手くFW渡辺直輝の飛び出しを引き出し、決勝ゴールを演出。終了真際の法政大のロングスローとCKによるパワープレーも「何か僕の強い思いかなと思った」と口にしたように、吸い込まれるかのように彼の元にボールが入り、全てをきっちりと跳ね返した。“上手くない男”がヒーローとなった試合だった。

 彼が怪我で苦しんだ時期は関東1部リーグで8位に低迷するなどチームが苦しい時期でもあった。怪我で離脱している間もチームの事を鼓舞し続けたが、出場を続ける選手の中には「怪我人が何言っているんだよ」という不穏な空気もあった。だが、「苦しい時期でも一人声を出し、チームの事を考えてくれていた。うざいなと思った人もいたけど、それでも翔登さんは声を出してくれていた」(DF湯澤聖人)とスタイルを変える事は無かった。彼とチームの苦しい時間は連覇の下地となっていた。

 加えて、「流経の一員として、今出来る事は応援しかないし、皆を勝たせたいと100%の力を出そうと思っていた」と振り返ったように怪我の間は応援に全力を尽くした。今大会も応援団の気持ちを背負ってプレーを続けた事が熱いプレーを更に熱くさせ、応援団の“俺たちの代表”という思いを強くさせた。指揮官が優勝の要因としてあげた応援団とピッチに立つ選手との架け橋となったのは彼だった。

 9月6日からリーグが再開する。ミッションは下位からの浮上。強者揃いのリーグを勝ち続けるのは決して容易ではない。だが、彼がいる流経ならば無理ではないはずだ。残りわずかとなった大学生活、彼の熱いプレーから目が離せない。

(取材・文 森田将義)
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