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元レアル・マドリーの特別コーチが「NIKE FC」を熱血指導

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 ナイキジャパンが育成年代に向けて行っている特別強化プログラム「NIKE FC」は17日、味の素スタジアム西競技場でトレーニングプログラムを行った。47人の中高生が参加したプログラムには、スペイン・マドリード出身で元レアル・マドリーのイグナシオ・ラモス・ヒメネス氏(愛称ナチョ)を特別コーチとして招聘。約2時間のトレーニングが行われた(参加選手一覧はこちら)。

 レアルのカンテラ(下部組織)出身でU-16スペイン代表歴もあるナチョ氏はトップチーム昇格後、ラウル・ゴンサレスグティロベルト・カルロス、フェルナンド・イエロらとプレー。08年に現役引退後はスペイン公認上級ライセンス(日本のS級ライセンスに該当)を取得し、スペインのユースカテゴリなどで指導者を務めている。

 4年前から毎年夏に来日し、日本の小中高生を対象にしたサッカークリニックを行っているというナチョ氏。「現役時代にはカンテラからトップチームまでレアル・マドリーでプレーしていた。今までの経験をみんなに伝えたい」。練習冒頭の挨拶では、日本人選手の課題に触れるとともに、プロ選手を目指すうえでの心構えを説いた。

「日本の子供たちを見てきて、ミスを怖がったり、恥ずかしがって声を出せなかったりする選手が多いと感じている。それではプロになれない。ピッチに入ったらミスを怖がる必要はない。ミスを何回繰り返しても続けること。メンタルの持ち方で変わる。それによってプロになれるかどうかも変わる」

「近くに味の素スタジアムがあるが、みんなはあそこでプレーしたいと思っているか? 私は子供のころからサンチャゴ・ベルナベル(レアルの本拠地)でプレーしたいと毎日毎日、思っていた。それが夢であり、目標だった。絶対にプロになるんだという強い気持ちを持って、24時間ずっとサッカーのことを考えてほしい」

 熱いメッセージで始まったトレーニングは、約2時間という限られた時間ながらも密度の濃い内容となった。4人1組でのパス回しでは「パスはしっかり強く蹴るんだ」と自ら実践し、「ボールを蹴ったときの音をしっかり聞け」と、パスの強さやスピードも求めた。「トラップを大事にしろ」「顔を上げて、味方がどこにいるかをしっかり見ろ」「常に止まらず、パスを受ける準備をしろ」。細かい指示が次々と飛んだ。

 その後は徐々にピッチを広げながら、3対2や、ハーフコートのコーナー4か所にフリーマンを置いた10対10など、練習の強度を高めていった。レアルのカンテラでも毎日行っているという練習メニューだと説明するナチョ氏。何度も練習を止め、常に動いて的確なポジショニングを取ること、ボールがないときにしっかり周りを見て状況を判断すること、大きな声で味方にコーチングすることなど、基本的なことを口酸っぱく繰り返した。

 ゲーム形式のトレーニングでは、選手のプレーに物足りなさを感じると、自らゲームに入って激しいスライディングタックルも見せた。実戦さながらの激しさを求めるナチョ氏の“熱さ”に感化されるように、選手たちからも徐々に声が出始め、練習にも熱が帯びていった。最後はフルコートでゲームも行い、GK広保友樹(海城高3年)がペナルティーエリア外まで飛び出してクリアした場面ではナチョ氏からも「ナイスキーパー!」という大声が飛んだ。

 今年2月に行われた「NIKE CHANCE」のジャパンセレクション関東ラウンドで最終選考まで残ったMF染谷由来(大森FC)は「当たり前のようなことだけど、基礎が大事なんだとあらためて感じた」と、2時間のトレーニングを終えて感想を語った。

 これまでも「NIKE FC」の活動に参加してきた染谷は「常に動き方を考えながらプレーするようになって、プレッシャーなくボールを受けることができたり、プレーに余裕が出てきた」と、自分自身の成長も感じている。この日もレアル出身のコーチの指導に触れ、「動き続けること。常に100%でやること。それを続けないと、上のレベルには行けない」と刺激を受けた様子だった。

 静岡から参加したFW鈴木暢(富士市立高3年)は「普通では受けられない体験をさせてもらえるのは大きい。自分はまだまだ下手くそだし、もっとうまくなるには所属チームの人よりもやらないといけない」と、高い意識を持って取り組んだ。

 練習の内容については「基本的なことが多くて、難しいことを要求された印象はない」と話しながらも、「練習中、常に言われ続けたけど、ディフェンスもオフェンスも100%でやること。高校のコーチにも言われていたことだし、そこはもっともっとやらないといけない」と、意気込みを新たにしていた。

 ナチョ氏はこの日のトレーニングの真意について「簡単なことのようで大事なこと。(レアルの)アンチェロッティ監督も練習では『出したら動け』『顔を上げろ』と繰り返し言っている。止めて蹴るテクニックの重要性はどのカテゴリでも変わらない」と説明した。

「簡単だけど、一番大事な部分の精度を上げること。日本の選手にそれが足りないということではなく、どこの世界でもその精度をいかに高めることができるかを考えている。そういう意味では、セルヒオ・ラモスやクリスティアーノ・ロナウドにも足りない部分であり、みんながその精度を高めようと毎日練習している」

 基礎の重要性を力説したナチョ氏は日本人選手の長所についても語った。「日本人の子供たちを教えていてすごいと思うのは、その吸収力。はじめはできなくても、1時間、2時間のクリニックの中で最後には良いトレーニングができるようになる。吸収は早いので、それを毎日続けることが大事」と、今後も継続していくことに期待していた。

 この日のトレーニングを総括し、「何人かポテンシャルの高い選手もいた。高い意識を持ち続ければ、可能性はある」と振り返ったナチョ氏。最後は選手を集め、「80%、90%ではなく、常に100%で、練習が終わったら歩けなくなるぐらいにやることが大事。1日24時間のうち、練習するのは1、2時間しかない。その時間は死ぬ気でやってほしい」とゲキを飛ばし、「みんないい目をしていた。何年後かにテレビを見たとき、みんながプロになっている姿を見ることを楽しみにしている」とメッセージを送った。

▼NIKE FC参加者一覧
MF高須凱也(小岩二中2年)
MF釜石怜(柏中央高3年)
MF賀田明斗(フロントマリティムハイスクール/高2)
MF栗原航(伊奈学園総合高3年)
MF染谷由来(大森FC/高3)
MF三輪こころ(FCトリプレッター/中1)
MF小沼真之(はたか商業サッカー部/高2)
GK広保友樹(海城高3年)
FW鈴木暢(富士市立高3年)
MF松本凌輔(広尾学園高2年)
MF藤川諒(広尾学園高2年)
MF木村洸介(広尾学園高2年)
DF中西健太郎(伊奈学園総合高3年)
FW沼田拓海(早稲田高2年)
DF井上雄太(早稲田高2年)
DF青木駿(早稲田高2年)
FW西翔太(早稲田高2年)
MF中村優佑(早稲田高2年)
FW山口賢人(早稲田高1年)
MF藤波徹柊(早稲田高1年)
MF荒井杜斗(早稲田高1年)
FW藤田靖悟(早稲田高1年)
DF土田周太郎(早稲田高2年)
DF小島千輝(早稲田高2年)
FW長崎志生(早稲田高2年)
FW鈴木凛平(早稲田高2年)
MF小林一樹(早稲田高2年)
MF保住拓斗(ヴィスタ/中3)
MF伊藤海里(ヴィスタ/中3)
FW松井渉(ヴィスタ/中3)
MF塚本晃季(ヴィスタ/中3)
MF福島宇宙(ヴィスタ/中3)
DF渡辺翔悟(ヴィスタ/中3)
DF小川慎太郎(ヴィスタ/中3)
DF梅沢和希(ヴィスタ/中3)
MF竹内由哉(浦和実業学園高3年)
GK片山淳介(神奈川大付属高2年)
MF高橋優斗(神奈川大付属高2年)
MF海道聖那(ヴィルドレーロ港北/高3)
MF南優斗(野津田高2年)
FW山口春来(野津田高2年)
DF富田斗倭(野津田高2年)
MF原拓海(野津田高1年)
DF安達大樹(野津田高1年)
MF工藤天聖(野津田高1年)
MF安保一希(野津田高2年)
DF安田敏哉(野津田高1年)

(取材・文 西山紘平)

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