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[プリンスリーグ東海]「やるべきことをやれば負けない」10人でも動じなかった清水桜が丘が逆転首位キープ!!

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[8.30 高円宮杯プリンスリーグ東海第10節 清水桜が丘高 2-1 中京大中京高 草薙球]

 高円宮杯U-18サッカーリーグ2014 プリンスリーグ東海は30日、第10節を行い、6勝2分1敗で首位の清水桜が丘高(静岡)と6位・中京大中京高(愛知)が激突。清水桜が丘が退場者を出した前半に先制されながらも、MF大石竜平主将(3年)とMF金山晃典(3年)のゴールによって2-1で逆転勝ちした。

「クリア一本に対しても動き出しているし、一人でも打開できる力がある。力というのは技術的な部分でなくて、精神的な部分で、相手が一人いようが、二人いようが、そういうところで『自分が何とかしてやろう』と思っているのが桜が丘の選手。メンタルの強さを非常に感じましたね。逆にウチは全体的に『誰かがやってくれる』と他人任せになっているから、後手後手になってしまう」。名古屋グランパスで活躍した“ミスターグランパス”、中京大中京の岡山哲也監督は試合後にそう語り、清水桜が丘の強さを認めた。清水桜が丘は前半36分にFW小原羽矢駄(3年)の突破をPAでファウルで止めたGK遠藤凱也(3年)が一発退場。約55分間を10人で戦いながらも、数的不利を感じさせないような攻守で首位を守った。

 試合は立ち上がりから中京がボールを握る展開。CB斉木海人(3年)やMF重松勇樹(2年)らが少ないタッチでボールを動かしてサイド攻撃を仕掛けていく。9分には敵陣中央でこぼれ球を拾ったMF大城佑斗(3年)からのパスでMF市川兼伍主将(3年)が前線へ飛び出し、9分にはカウンターから左サイドへ展開すると、小原のスルーパスで抜け出した大城がGKと1対1となった。さらに20分にはスルーパスからPAで粘った小原が決定的な右足シュートを放つ。

 だがこのシュートをGK遠藤に足で止められるなど決められなかった中京に対し、清水桜が丘は12分に右サイドを一人で切り裂いた大石が決定的なクロス。13分には中盤でインターセプトした大石が抜群のスピードでDF間を突破し、単騎でPAまで持ち込む。そして、22分、23分には不利な体勢から強引にDFの前へ身体をねじ込んで突破するなど、前線で躍動するFW信末悠汰(3年)が単独突破からシュート。ボールは相手に支配されていたものの、手数をかけずに右の大石と左の金山の両ワイドや信末の突破力を活用して攻め返した。

 スコアが動いたのは前半36分だった。中京は左サイドを抜け出した小原がPA中央まで持ち込むと、GK遠藤の伸ばした手が足にかかり、PK獲得。遠藤にレッドカードが提示されてGK池田海人(3年)を緊急投入した清水桜が丘に対し、中京大中京はPKをMF富田光(3年)が右足で右隅へ沈める。先制した中京はその後も、重松と市川を起点としたパスワークで攻めると、前半途中から投入された右SB西村拳心(3年)のオーバーラップや富田の個人技も交えてシュートシーンをつくり出す。

 ただ、10人での戦いにも清水桜が丘は全く動じなかった。信末は「自分たちのやることを徹底すれば、結果はついてくる。みんなで確認しながら、ひとりひとりが守備からカウンターをしていけば結果はついてくるかなと思っていた。逆転できるという自信を持っているので、1点取られても焦ることなく信じてやっていた。信じてやったので良かった」と振り返り、大石も「ボクらの考え方としては10人になった時に守備が1枚足りなくなったのではなくて、攻撃が1枚足りなくなっただけなので、守備はいつも通り変わらないですし、攻撃が1枚減ってパターンが少し減るかなくらいなので、特に数的不利に思うことはないですね。11人同士でやるとルーズな部分が多くなるんですけど、10人になると個々がファーストディフェンスの時とかにしっかり責任感もたないとやられるので責任感が増す。11人の時にこの責任感を持っていれば、こんな試合にはならないんですけど・・・」と微笑んでいたが、10人になって逆に個々の活動量と責任感が増した印象の清水桜が丘が走って、戦って中京に食い下がる。
 
 後半4分には右FKから金山が決定的なヘディングシュート。10分には信末が左サイドを破ってPAへ切れ込む。清水桜が丘は中盤の人数を一人削り、後半から空中戦で強さを見せるMF明石純治(3年)の1ボランチにシフトしていたが、その明石が奮闘し、相手よりも一歩速く動いてボールをはじくことに集中するDF陣、そして好反応光るGK池田がゴールを死守する。そして攻撃では不利な体勢からでも「何とかしよう」と必死にシュート、クロスにまで持ち込んだ。中京も10分に大城と加藤のコンビで右サイドを崩し、MF福山大貴(2年)が左ポスト直撃のシュート。19分には加藤のヒールパスで抜け出した小原がGKとの1対1から左足を振りぬいた。その後も何度もゴール前までボールを運んだが、いつでも、どの相手でもフィニッシュまで持ちこめてしまうがための課題「綺麗に崩そうする」あまり、ゴール前で手数をかけてしまって好機を逸してしまう。

 そして25分、スーパーゴールで試合が振り出しに戻る。相手のミスパスをインターセプトした清水桜が丘は、明石が右サイドの大石の前方へボールを落とす。これを頭でコントロールした大石がクロスを警戒した相手DFの意表を突く右足ミドル。本人も「(打った瞬間のことは)あまり覚えていない」という弾丸ショットがクロスバーを叩いてゴールラインを越えた。スタンドがどよめいたスーパーゴールの余韻がまだ冷めない28分に中京も西村の右クロスを市川が決定的な形で叩くが、枠を捉えず。逆に30分、清水桜が丘は自陣での球際の攻防でCB越水旋太(3年)が相手2人を立て続けに弾き飛ばすような執念のボール奪取。これを起点に右サイドを縦に突いた信末がラストパスを送ると、DFをかすめてファーサイドの金山の下へ届く。これを金山が右足で叩き込んで逆転した。

 この後DF同士が交錯して信末に抜け出されるなど、ややバタバタした中京は決定機を立て続けにつくりながらも決めることができない。市川が「相手が10人なんで何が何でも負けてはいけなかった。そこで勝つ桜が丘が強かったと思いますし、そこで負けるボクらはまだまだ。後半も足が止まっているのがいたり、逆に桜が丘は走り切っていた。球際も桜が丘の方が強かったですし、最後クロスを上げ切るだったり、走り切るところが相手の方が上回っていたと思います」と唇を噛んだ敗戦。一方、前身の清水商時代から受け継がれてきた伝統の勝利への姿勢、相手よりも走る力で首位を守った清水桜が丘は、大石が「(数的不利でも)しっかりやることをやれば負けないというのがこのチームの中でも根付いている。秘密ですけれど、約束事が(攻守に3つずつ)あって、それを徹底してできた試合はボクらは負けていない」と語り、「自分たちは選手権のためにプリンス(リーグ)を戦っている。清商で通ってきたのが桜が丘になった。サッカーのスタイルは変わらないんですけど、まだまだ桜が丘というのは全国で知られていない。まず全国出て名前を知ってもらわないと、みんなが知る機会がない。総体も(県予選)決勝まで行って出られなかったし、その分選手権に出たいです」と力を込めた。

 名将・大瀧雅良監督は「自分が上手いところを見せたいと思ってしまっている。自分よりもチームのためにというところが少ない」「自分らがやっていることを自分らがまだ信用できていない」と指摘する。総体予選決勝では絶対的に有利という前評判の中で東海大翔洋高にPK戦で屈するなど、まだ精神的な甘さが残り、本物の強さを身に着けている訳ではない。ただ大瀧監督も「面白いと思う」という期待の世代。プリンスリーグの好結果を選手権につなげて、目標を達成する。

[写真]後半30分、清水桜が丘は金山が決勝ゴール

(取材・文 吉田太郎)

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