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[AFC U-16選手権]左SBとして躍動する“浪速の点取り屋”

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[9.6 AFC U-16選手権GL第1戦 U-16日本代表 2-0 U-16香港代表 ラジャマンガラ・スタジアム]

 嫌なムードを払しょくしたのは、左SBの一撃だった。0-0で迎えた後半8分、左サイドでMF田中碧(川崎F U-18)がボールを持った瞬間、左SB堂安律(G大阪ユース)がPA内に出来たスペースにダイアゴナルラン。田中碧のスルーパスをゴールに背を向けて受けると、鋭く反転をして前を向き、得意の左足を一閃。ゴールニアサイドを射抜くシュートで、待望の先制弾を生み出した。

 前半から香港のべた引きの守備に苦しみ、ゴールがこじ開けられない中での先制ゴールは、チームに活気をもたらした。その後もポゼッションで圧倒し、追加点を奪って2-0の勝利。堂安の一撃は値千金のゴールとなった。

 彼はもともと点を取ることが大好きなアタッカーの選手だった。しかし、吉武博文監督は彼を左SBにコンバート。一見、消極的なコンバートのように見えるが、実はこれは彼の良さを最大限に評価した上でのコンバートであった。

 吉武監督のサッカーのコンセプトの一つに、『SBが得点王』というのがある。高い位置でポゼッションをして、相手が崩れた時に、一気にサイドや後方からゴールを『刺す』。SBがより攻撃的なポジションとして、バイタルエリアのパス回しに参加するだけでなく、フィニッシュまでやってしまう。その役割に左利きで、得点力がある堂安はまさに『適任』だった。

「SBは楽しいですよ。もちろん前のポジションもやりたいですけど、やることは少し違うけど、役割は同じだと思っているので、問題ないし、やりがいある。楽しんでやっています」。

 アプローチは違うが、攻撃に関わる、点を取るという役割は一緒。迷いなくプレーしているからこそ、あのゴールの瞬間に、あの場所にダイアゴナルランが出来た。そしてあの位置でボールを受けてしまえば、もう彼の独壇場だ。

「イメージとしては碧からもっと速いボールが来て、それを左足ダイレクトで決めたかった。思った以上に足元に来たのですが、身体が勝手に動いて…。無意識で打てました」。

 これまで研ぎ澄ましてきた“点取り屋の本能”のままに、鮮やかにターンし、GKのニアを打ち破った。吉武サッカーを理解し、自分の特徴も理解しているからこそ、彼は左SBを楽しみながら躍動できている。「もっと積極的に仕掛けていきたい」。昨年の1次予選インドネシア戦で2ゴールを挙げ、7月のタイ遠征では3ゴール。前でも、SBでもゴールを奪える堂安は、今後もゴールを重ねて『SBが得点王』というコンセプトを実現するか。勢いに乗った“浪速の点取り屋”が、タイの地で左SBとしての能力を開花させようとしている。

(取材・文 安藤隆人)
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