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[プレミアリーグEAST]白熱の連勝チーム対決!「後期全勝が目標」の青森山田が市立船橋撃破!

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[9.7 高円宮杯プレミアリーグEAST第12節 市立船橋高 1-2 青森山田高 船橋市法典公園(グラスポ)球技場]

 高校年代最高峰のリーグ戦、高円宮杯U-18サッカーリーグ2014 プレミアリーグEASTは7日に第12節を行い、ともに後期2連勝中の3位・市立船橋高(千葉)と7位の青森山田高が激突。青森山田が2-1で勝ち、3連勝とした。

 試合前から非常にピリピリした空気が会場を包み込んでいた。ともに連勝中の現在からさらに勢いを増すか、敗戦によってそれを失うのか。高体連の名門校同士によるプライドをかけた一戦は、時折激しい雨がたたきつける中、互いがその強さを見せあう好ゲームとなった。試合開始とともに相手陣内になだれ込んだのは主将の右SB小笠原学主将(3年)が「チームとしては後期全勝ということを目標にしていて、2勝できていい流れで来ていて、ここで市船戦勝てたら相当デカいということでみんな今までにないくらいモチベーション高くしていた。アウェーなんですけどホームゲームの勢いで立ち上がりに入って、立ち上がりから圧倒していこうという話をしていた」というアウェーチーム・青森山田。ファーストプレーで相手に圧力をかけて右CKを獲得する。

 市立船橋のCB藤井拓主将(3年)は「山田は勢いあるチーム。2連勝していて、勢いづいているという背景を考えたら、絶対に立ち上がりバンバンバンバン来ると思っていた。自分たちの話の中でもはっきりクリアとか、はっきり切るとか話が出ていたんですけど、それが立ち上がりの一本でできなかったのはデカいなと思います。最初のセットプレーの中の雰囲気なんか見ても、『これ、ヤバイかな』と思っていた」と振り返ったが、その不安が的中。青森山田はMF山下優人(3年)の右FKをファーサイドのCB菊池流帆(3年)が頭でゴールへ叩き込む。試合開始わずか50秒で会場に轟いた歓喜の咆哮。藤井が「アップの雰囲気も悪くなかったし、自分たちも締まっている感じはした」と振り返ったように、市立船橋に緩みがあったとは思わない。ただ青森山田の勝利への思いが上回ったゴールだった。

 この後、前から果敢にプレスをかける青森山田がペースを握る。最前線に位置するFW松木駿之介(3年)が身を削るように走り回り、チーム全体に前への勢いがあった。市立船橋はまずは相手の流れを切ることに集中。精度を欠いたこともあってボールを相手に渡してしまうシーンも多かったが、それでも相手の勢いを受け流しながらボールをつなぎ、スペースへのボールも交えて立て直しを図った。

 青森山田は市立船橋の長身FW磯野隆明(3年)に入ってくるボールに菊池が厳しくチャレンジ。CB平松遼太郎(3年)が上手くサポートしながら相手の攻撃の起点を封じていく。それでも市立船橋は中盤で献身的に動き回るMF矢村健とMF古屋誠志郎(ともに2年)がポイントとなり、反撃。17分にはこの2人のワンツーからシュートシーンをつくり出し、17分には高速アタッカー、MF永藤歩(2年)が右サイドをえぐってクロスへ持ち込んだ。そして28分には永藤の右クロスのこぼれ球をおさめた磯野が、一気にゴール方向へ突進。DFを振り切って決定的な一撃を見舞ったように映ったが、これを青森山田の小笠原が一瞬早くタックルしてCKへ逃げる。

 30分を過ぎると、青森山田が思い通りにボールを動かしてリズムのある攻撃で市立船橋を押し返した。余裕あるボールキープを見せる山下に加えてMF岸本悠生、MF霞恵介(ともに3年)という中盤の3人とサイドの選手たちがワンツーなどで上手く相手をいなしながら敵陣へとボールを運んでいく。35分に中央での崩しからMF野口雄輝(3年)が放った左足シュートは枠を外れたものの、40分にスコアを動かす。右サイドを駆け上がった小笠原のクロスからニアサイドにFW丹代藍人(3年)と松木のふたりが走り込み。松木が決定的なヘディングシュート。これは注目GK志村滉(3年)が驚異的な反応で止めたが、こぼれ球にいち早く反応した丹代が右足で豪快に打ち抜いて2-0とした。

 市立船橋にとっては決して満足のいく前半ではなかった。ただ、今季16得点中12得点を後半にたたき出しているチームが、後半表現したことは「焦れずに続けること」。最終ラインからボールを繋いで相手を動かし、藤井、CB白井達也(2年)の両CBが攻撃のスイッチを入れる。そして外から永藤と左MF鵜澤恵太(3年)のドリブルや連係による崩しで青森山田の守備網を攻略しようとした。対して、一瞬の隙を見逃さない青森山田は13分に相手ディフェンスラインの背後へのボールから、DFと巧みに入れ替わった丹代が決定的な右足シュート。だがファインゴールかと思われた一撃は右ポストを叩いて突き放すことはできなかった。青森山田は20分にも右ショートコーナーからのサインプレーで松木がゴールエリアに入り込む。ここはGK志村にコースを消されて決められなかったが、守勢の中でも一刺しする攻撃力を見せながら試合を進めていた。

 相手の一発の脅威を感じながらも地道にボールをつないで攻め続ける市立船橋は24分に1点を奪い返す。中盤で前を向いたMF椎橋慧也(2年)から磯野の足元にボールが入ると、後半力強さを取り戻していた背番号9が鋭いターンでDFを振り切り、そのまま右足で追撃ゴール。ここから試合終了にかけて、非常に熱い攻防戦となった。「焦れるな、やることをやれ!」と朝岡隆蔵監督から声が飛ぶ市立船橋は32分、右サイドからボールを動かして最後は左中間から鵜澤が左足シュート。40分には鵜澤の左クロスを磯野が頭で合わせた。そして43分には左クロスのこぼれ球を右SB打越大樹(3年)が右足で叩く。また永藤の圧倒的なスピードも併せて攻める市立船橋だが、青森山田は2-2で終わった前回の対戦でも永藤をマークした左SB北城俊幸(2年)が必死の守り。「あの14番(永藤)は相当速い。前回は最後の最後1本だけ上げられて、それで同点ゴール決められて。(北城は)その1本を相当悔やんでいたから縦を警戒しながら良くやっていた」と黒田監督は説明していたが、その北城や献身的な走りを見せ続けた山下ら青森山田は全員で1点を守り抜く。小笠原は「『オレらはやれる』とみんなに自信を持たせて、後半最後の終わり方とか、前半の終わり方とか、『市船はここ強いぞ』とか言って、終盤も『まだ市船は分からないぞ』と締めてやって、あとは自分たちが勝つんだという思いを持ってやりました」。その思いを最後まで途切れさせなかった青森山田が2-1で勝利した。

 敗れたものの、市立船橋は十分に追いつく展開に持ち込んでいた。0-2になっても慌てず、後半の45分間やり続けたことが最後青森山田を追い詰めることに繋がった。朝岡監督も「方向性は間違っていない」という。だが、市立船橋にとっては負けていい試合はない。それも気迫や際の部分で負けたことは反省点だった。立ち上がりに相手を勢いづかせて、相手を有利な状況にしてしまい、敗戦。試合後、朝岡監督は技術面よりも精神面を指摘し、「山田に引けを取った。勝負である以上負けてはいけない。最後の際のところの強さを感じなかった。それが敗因だろう? 勝負していることに対して緩い」と問いかけていた。

 一方、前期を1勝3分5敗の最下位で折り返していた青森山田にとっては大きな3連勝だ。小笠原は「前期負けていても内容的には全然できていて、最後のところでやられるというだけだった。自分たちのサッカーに自信をもっていた。最後のところで負けないでやることができれば、と。失点した後にチームで鼓舞し合うとかできれば負けないと思っていた。弱かったところを強くしてきた」と説明したが、全国高校総体での4強進出を挟んで確実にチームは逞しくなってきている。後半戦開幕前にチームが掲げた目標は全勝。簡単な目標を立てるのではなく、最も難しい目標を掲げ、それを実現するために一体となってチャンレンジしてきた。黒田監督も「この夏過ぎの合宿から1人1人がちょっとずつ強くなってきたし、1試合1試合最後のところで集中力が欠ける場面があったりだとか、ここで学習しなければと大分言い聞かせてやってきた。自分たちがダメのところを自分たちが知って改善してきている。(現在は)勝つための方程式を身体で覚えてきている」と語っていたが、上手くいかなくても心折れることなく、我慢し続けてきたことが結果に現れてきている。小笠原は「プレミアあっての選手権なので、そこは順番を間違えないで、プレミアでしっかり戦ってそれをやった分だけ選手権につながると思う。目の前のプレミアを戦ってそして、選手権日本一という目標に向かっていきたい」。次戦は首位・清水ユース戦。ホームで本物となった強さを見せつける。
 
[写真]試合開始50秒、青森山田はCB菊池が先制ヘッド

(取材・文 吉田太郎)

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