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[選手権予選]今年は「挑戦者」の前回王者・國學院久我山、7発発進:東京B

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[10.5 全国高校選手権東京都Bブロック予選2回戦 駒込高 0-7 國學院久我山高 駒沢補助]

 第93回全国高校サッカー選手権東京都Bブロック予選2回戦が5日に行われ、連覇を狙う國學院久我山高は駒込高に7-0で快勝した。國學院久我山は12日の準々決勝で駿台学園高と対戦する。

 都予選決勝で駒澤大高に4-0で快勝し、全国大会で優勝候補の一角に名を連ねるほど評価の高かった昨年。だが今年は全国高校総体予選で初戦敗退を喫し、プリンスリーグ関東でも李済華監督が「ひとつは攻撃力が足りないことと、もうひとつはどこかで緊張感が切れちゃうことがある。そこのところが上手くかみ合わない」と話すようになかなか結果が出せずに現在10チーム中9位と苦戦が続いている。ただ、主将のCB内藤健太(3年)が「自分たちはリーグ戦も、インハイも結果を残していない。自分たちはやるしかないという、挑戦者の気持ちで臨んでいる」と意気込み、また昨年、東京都選抜の一員として東京国体で優勝を経験している右MF鴻巣良真(3年)が「応援が凄く大きな力で、昨日の練習でも最後みんなで思い切り歌ったり、一体感が増してきている」という國學院久我山はこの日、持ち味のポゼッションを出しにくい雨中でも7ゴールをたたき出し、必死に声援を送る控え部員たちを80分間沸かせ続けた。

 未明からの強雨が夕方になっても降り続き、ピッチは水が浮いている状態。ただ、鴻巣が「気持ちが乗ったゲームができたと思います。みんなセカンドボールに対する出足が凄く良かった。あと競り合いとかもひとりも負けないで。やることが決まっていたので、この雨の中じゃボールをつなぐことってできないじゃないですか。いつもだったらボールつなぎたいんですけど、久我山でもきょうは無理だったので、きょうは裏に抜けて、クロス上げて、そこに走り込むというサッカーをしていきたいと思っていた」という國學院久我山は前半からゴールラッシュを魅せた。昨年もCBでコンビを組んでいた内藤とDF花房稔(3年)にDF野村京平(2年)を加えた3バック。中盤ダイヤモンドの3-4-3システムで戦う國學院久我山は前半6分、右サイドからDFのタックルをかわして切れ込んだFW飯原健斗(3年)が左足シュートをゴール左隅へ流し込んで先制点。2分後にも左CKから飯原が加点すると、15分にはトップ下の1年生MF名倉巧が右クロスのこぼれ球を左足で決めて3-0。さらに34分にもFW澁谷雅也(1年)とのコンビから名倉が右足ダイレクトでゴールを破って前半だけで4点リードを奪う。

 PK戦となった石神井との1回戦を制して勝ち上がってきた駒込もクロスにFW相澤雅弥(2年)が飛び込み、FW山田輝(3年)がミドルシュートを放つなど反撃。MF加藤雅也主将(3年)らがピッチ内で鼓舞するチームは点差が開いても球際の激しさが衰えることなく、泥臭く諦めない戦いを見せる。そしてカウンターからまず1点を狙った。ただ相手の反撃を封じた國學院久我山は31分、MF鈴木遥太郎(2年)の左クロスをファーサイドでコントロールしたFW小林和樹(2年)が右足でゴールへ流し込んで5-0。さらに36分には右サイドの小林からのパスを受けた鈴木が右足でゴール左隅へ流し込む。活動量多く、80分間走り続けていた鴻巣がカウンターからひとりで攻め切ろうとするなど、最後までゴールを狙い続けた國學院久我山は試合終了間際にも左クロスのこぼれ球をFW長瀬良太(3年)が押し込んでゴールラッシュを締めくくった。

 國學院久我山はU-18日本代表候補でもあったMF渡辺夏彦(現慶應義塾大)らが卒業し、昨年ほど飛び抜けたタレントはいない。アタッカー陣は1、2年生が多い陣容だ。それでも内藤、花房、鴻巣と高いビルドアップ能力を持つ昨年からのレギュラーが後方を支え、一人ひとりが役割を徹底するという点には自信を持っている。内藤は「去年、一昨年とか富樫(佑太)君とか渡辺夏彦くんとか凄い選手がいたんですけど、今年はいない。でも一人ひとりが自分の仕事をサボらない。去年よりも守備もできると思っていますし、一人ひとりサボらないでやっています」。

 「美しく勝て」のスローガンを掲げるチームは、攻撃力の向上の必要性を感じている。その中で李監督は「DFは去年から残っているんだけど、攻撃がね。もう少し力高めないと。後ろからのビルドアップが上手いので、それが攻撃の一歩の形になるかもしれない。(今年は)みんなでやろうよと。悪く言えば一人で点を取って来れない。良く言えばみんなが自分の役割をこなしながら、チームワークでやっていこうという形になっていくんでしょうね。(東京を突破して)全国でやりたいですね」。苦しい1年となったが、全員でチーム力を高め、最後の選手権で輝くための準備はしてきた。内藤は「みんな下級生も3年生と同じ気持ちで、絶対選手権獲ろうという気持ちでやってくれているので、3年生たちも最後なんで絶対に獲ろうと練習からやっています」。再び久我山の「美しい」サッカーを全国で披露するために、まずは必ず東京を獲る。

(取材・文 吉田太郎)

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