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[選手権予選]北海道大谷室蘭が4年ぶり30回目の全国へ、PK戦で劇的逆転勝利

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[10.26 全国高校選手権北海道予選決勝 北海道大谷室蘭高 0-0(PK4-3)旭川実高 札幌厚別公園競技場]

 粘り強い堅守で試合のペースを手繰り寄せ、あと一歩のところまで相手を追い詰めた。ところが、PK戦では1本目で主将が失敗。絶体絶命の危機となったが、4本目で相手が失敗、5本目でGKが見事なセーブと大逆転で勝利をつかみ取った。応援する者には心臓がいくつあっても足りない、期待と不安を行き来するジェットコースターのような展開だったが、北海道大谷室蘭高が北の王者に輝いた。第93回全国高校サッカー選手権大会の北海道予選は26日に札幌厚別公園競技場で決勝戦を行い、北海道大谷室蘭がPK戦の末に旭川実高を下して優勝。及川真行監督は、目に涙を浮かべながら「相手も本当に力があるチームだったが、選手が必死にやってくれて勝てて良かった。昨年の3年生は選手権の全国大会に一度も行かずに卒業していったから……」と4年ぶり30回目の全国切符を喜んだ。

 目まぐるしい試合展開の一戦だった。前半の立ち上がりは、風上に立った旭川実の勢いが上回っていた。開始2分で2年生FW樋口岳志がシュートを放つなど敵陣に押し込んだ。しかし、人数をかけて守りながらもボールを奪うと丁寧なパスをつないで押し返す北海道大谷室蘭が次第に試合のペースを奪って行った。前半17分には右MF平塚悠知がドリブルからスルーパスを通し、FW新田裕平が際どいシュートを放った。前半22分には旭川実がMF斎藤貴裕のスルーパスで好機を作ったが、北海道大谷室蘭のDF深井祐希が鋭いカバーでシュートを阻んだ。北海道大谷室蘭はその後も前半24分にFW松井勇弥のジャンピングボレー、前半40分に左MF高橋昌平のドリブルシュートと惜しい場面を作り出したが、決めきれなかった。

 後半も15分にMF中島洸のパスから新田がシュートを放つなど北海道大谷室蘭のペースだったが、今度は旭川実が鋭いカウンターを繰り出した。後半16分、旭川実は左MF野村拓哉のドリブルからラストパスを樋口が狙ったが、クロスバーの上。19分には右CKを途中出場のFW荒川勇気がヘディングで狙い、こぼれ球を押し込みにいったが、北海道大谷室蘭が持ち前の粘りで防ぎきった。しかし、試合は終盤に入ると、再び北海道大谷室蘭ペース。それでも36分に中島のミドルシュートがクロスバーをたたく場面があったものの、得点は生まれず、試合は延長戦にもつれ込んだ。中島が「しんどかった。終盤はもう気持ちだけだった」と話したように、両チームとも足をつらせる選手が出るなど総力戦となった。

 しかし、延長戦も互いに好機を迎えたが、決めることはできなかった。特に北海道大谷室蘭は、延長後半8分に途中出場の池高慧悟が上げた右からのクロスを佐々木北斗がダイビングヘッドで合わせた場面や、平塚のスルーパスから内山竣太がGKとの1対1を迎えた場面など決定機があったが、旭川実もよく粘った。結局、勝敗の行方はPK戦に委ねられた。先攻の北海道大谷室蘭は1本目で主将の深井が失敗。しかし、旭川実も守備の要として体を張っていた吉田翔がクロスバーに当ててしまい失敗。同点で迎えた5本目、北海道大谷室蘭はキッカーの中島が決めると、GK引間雄大が相手のキックを見事にセーブ。逆転で勝利をもぎ取った。

 主将の深井は、コンサドーレ札幌で活躍している深井一希の弟。「兄はクラブユースでやっていたし、選手権は高校の大会だから違う道だけど、僕自身は全国大会に出るために大谷室蘭に来た。3年目で優勝できて良かった。ここに来て良かった」と喜び、全国大会に向けては「僕たちは守備で粘り強くやって失点をしないことが持ち味。全国大会でも失点をせずに勝ち上がりたい」と4戦1失点で勝ち切った北海道予選と同様に堅守で挑むことを宣言した。北海道大谷室蘭は2年前に校名を室蘭大谷から改名。新しい名前では全国大会初挑戦となる。新たな名前で新たな歴史を刻めるか注目だ。

[写真]相手の攻撃を阻む北海道大谷室蘭DF深井祐希。北海道を代表する名門校が堅守を武器に全国へ挑戦する

(取材・文 平野貴也)
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