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[MOM1185]水橋GK村澤壮太(3年)_富山にまたもPK職人登場 !?

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.2 全国高校選手権富山県予選決勝 高岡一高 0-0(PK3-4)水橋高 高岡スポーツコア]

 富山県にまたもPK職人が登場だ。第93回全国高校サッカー選手権大会富山県予選の決勝戦で、水橋高が延長戦終了直前にGKを交代し、投入された村澤壮太が相手の2本目、5本目を止める大活躍を見せてチームを4年ぶり6回目の全国大会出場に導いた。

 村澤は夏までは正GKとして起用されており、高校総体の県予選では先発し、PK戦となった準決勝でも活躍を見せていた。しかし、パスサッカーへのモデルチェンジを図るチームは、フィールドプレーヤー出身で足下の技術がある古市健の先発起用に踏み切り、村澤は大一番の直前で先発ポジションを失う悔しい展開となった。ところが、セービングに長ける村澤には別の役割が待っていた。それが、トーナメント形式で争う選手権におけるPK職人だった。夏の高校総体は県予選の決勝で敗れて涙をのんだ。全国大会の出場は、あと一歩で届かなかったチームの悲願だ。その出場権をかけた選手権の県予選決勝で上田裕次監督は「先発した古市君は、フィールドプレーヤーの出身。シュートストップやPKに関しては、村澤君の方が得意なので、自信を持って送り出した。かなり前から考えていた形」と村澤にすべてを託す決断を下した。

 雨が降りしきる中、タッチラインで古市と入れ替わるようにピッチへ入った村澤は「自分がやらないとチームが負けてしまう。勝たせるために頑張ろう」という思いを胸にゴールマウスへ向かった。間違いなく、腕の見せ所だった。相手のキッカーがボールをセットしようとすると、水橋のベンチから「ヒーローになるチャンスが来たぞ!」と声が飛んだ。1本目は決められたが、2本目は村澤が左に跳んでセーブ。右拳を上げてガッツポーズを見せた。そして、双方ともに成功を続けた5本目に村澤は再びやってのけた。先攻の高岡一高のキッカーがシュートを放つと、ゴール右に跳んだ村澤は両手でしっかりとボールの行く手を遮り、セーブに成功。PK戦4-3での勝利が決まった瞬間だった。

 ハーフウェーラインにいたフィールドプレーヤーも、ベンチにいたスタッフや控え選手も一斉に村澤の元へ駆け寄った。あっという間に人の山に覆われたヒーローは、しばらくすると嬉し涙を見せながら姿を現した。表彰式を終えた後、仲間の冷やかしを受けながら取材に応じた村澤は「2本目は、しっかりと最後まで相手が蹴る動作を見てから跳んだ。(相手にプレッシャーがかかった)5本目は、先に左へ跳ぶ動きを入れて右に誘って跳んだ。チームの役に立てて嬉しかった。すごく苦しかったけど、みんなと喜びを分かち合えて、本当に嬉しかった」と笑顔を見せた。

 PK職人と言えば、前回大会で全国優勝を果たした富山一高が記憶に新しい。全国大会の準決勝でPK戦に備えてGKを交代し、見事なセーブで勝利した。富山県代表チームは2年連続でPK職人という武器を携えて全国大会に臨むことになるかもしれない。もちろん、村澤にとっては、これから全国大会の初戦までは先発奪還のアピールチャンス。正GKに返り咲く可能性も十分にある。村澤は「ポジションを取られたときは悔しかった。全国大会では、先発を取りたい。でも、このままPK職人という立場だったとしても、チームを勝利に導けるように頑張りたい」と今後の抱負を語った。富山県代表に再びPK職人は現れるのか。村澤と古市のレギュラー争いは、他の都道府県代表にとっても気がかりなものになるかもしれない。

(取材・文 平野貴也)
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