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[選手権]サッカーに懸けた時間の多さと思いで開いた扉、開志学園JSC高が全国初挑戦

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 第93回全国高校サッカー選手権が12月30日に開幕する。参加48校のうち、初出場校は8校。中でも注目なのが、開校10年目で初の全国選手権出場を果たした開志学園JSC高(JAPANサッカーカレッジ高等部)だ。

 アルビレックス新潟の練習場と同じ新潟県北蒲原郡聖籠町に位置する開志学園JSCは、新潟と連携した育成組織として、恵まれた環境の中で日々を送っている。サッカーのエリート教育を受けながら、高校卒業の単位を取得。平日の多くは校内の(寮の目の前でもある)人工芝グラウンドで午前・午後の2部練習を実施し、さらに選手たちは自主練習を行って自らを磨いている。

 サッカー漬けの毎日だが、サッカーに懸けてこの道を選んだ選手たちにとっては求めていた環境・練習時間がある。早朝、夜間、オフでも自らの意欲次第でいくらでもボールを蹴ることが可能。就任2年目の宮本文博監督が「自分の生活の中で一番がサッカーと言う子が多いので、練習量を多くしても集中力が落ちませんし、自分たちでもそれ以外に練習している子がほとんどですので、キックとかかなり蹴り込んでいると思います」と説明し、MF今井輝(3年)は「他の学校の人が勉強に打ち込んでいる間もボクらはサッカーに打ち込むことができて、環境も寮生活なので電車とかで通学する時間の分もボクらはサッカーに集中することができる。他の学校よりも練習量が多いので、そこは自信になっている」と胸を張った。

 どの名門校にも負けない練習量と施設。県予選で4試合連続完封を記録した守護神、GK子安崇弘(3年)は「県で無名な選手ばかりで集まってやってきたと思う。そこから全国に出れるようなチームに育っていく環境は凄いと思う」と語る。選手、スタッフも認める通り、決してタレントで他を圧倒している訳ではない。それでも開志学園JSCは今年、自分たちのチーム力に自信を持っていた。まとまりの良さ、相手によって戦い方を変えることのできるバランスの良さ、そしてどこにも負けない練習量と練習環境。MF伊藤大貴主将(3年)は「(スタッフが)『今年のチームは新潟県内でもずば抜けて強い』と言い続けてくれたので、とても自信を持って試合に臨むことができました。今年のチームワークの良さはずば抜けていると思うので、それを見て言ってくれたと思います。夏(県タイトルを)獲った時は嬉しいと思いましたけれど、冬は『今年は獲らなければいけない』という思いが強かった」。開志学園JSCは加茂暁星高との県決勝を「パス出してくれた仲間に感謝したい」というFW上口玲央(3年)の3得点によって3-0で快勝。「狙って」初の全国切符を掴み取った。

 開志学園JSCは開校から毎年県4強まで勝ち上がって来ていた。ただ、12年度全国8強の帝京長岡高や新潟明訓高、新潟西高、北越高など強豪ひしめく新潟県予選をあと一歩のところで勝ち抜くことができていなかった。もちろん、サッカーに懸ける気持ちはどこにも負けないほど強かったが、その一方で学校生活、寮生活での甘さがあったという。宮本監督は「高校生の本業が何かと言ったらサッカーよりも勉強。学校生活、寮生活、そしてサッカーのバランスを見直してきた結果が今回の結果だと思いますし、これまでは最後の最後でどこかが欠けていたと思うんですよね。サッカー以外の寮生活、学校生活。勉強で点取れという訳ではなくて、サッカー以外のところを一生懸命やることによってサッカーに活かすというやり方を取ってきた。積み重ねてきたことで今年、花開いたと思います。今年は選手としての能力とチームとしての力、そして個々の人としての力。本当にそのバランスがとれていたと思う」。満を持しての選手権タイトル奪取だった。

 夏の全国高校総体では滋賀の名門、野洲高と初戦で戦い、PK戦敗退。ただし、エースFW関瑞樹(3年)が「インターハイで手ごたえ掴めたので、選手権でもやれると思います」と言い切ったように、選手たちは全国の強豪相手でも戦えるという手ごたえを掴んでいる。選手権予選後のプリンスリーグ北信越参入戦ではチームの中で緩みが出て、そこから崩れて敗戦。気を引き締める材料になった。今は宇治山田商高(三重)と戦う全国初戦へ向けて集中力を高めている。左SB高橋颯人(3年)は「高校の名前にJSCとか入っているところはないので、初出場で結果を残せば、知名度も上がるし、自分たちのモチベーションも上がると思う。後輩や負けた先輩たちの分も戦いたい」。サッカー専門の学校の強みを活かして夏冬新潟制覇を果たした開志学園JSC。話題性に加えて、そのサッカー、結果にも注目したい。

(取材・文 吉田太郎)
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