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[選手権]受験控えるGK金岡が涙の檄…奮起した星稜の選手たち

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[1.10 全国高校選手権準決勝 日大藤沢高 0-3 星稜高 埼スタ]

 2年連続で決勝進出を果たした星稜高の選手たちの胸には、一人のGKが流した涙があった。1月5日に行われた準々決勝・履正社高戦(1-0)。その試合前夜に自発的に行った選手だけのミーティングで3年生たちは熱い思いを語り合った。そんなとき、今大会でベンチ入りしていない3年生GK金岡天夢(3年)が熱い思いを口にした。

「俺はサッカーをやめようと思ったときもあったけど、今本当に勝ちたいと思っている」。金岡は今大会登録メンバーの3年生のうち、唯一の受験生。選手権終了後には大学入試が控えている。今大会では、後輩GKである坂口璃久(2年)と高橋謙太郎(1年)にベンチ入りの座を譲っているが、その金岡が勝利への熱い思いを涙ながらに話したのだ。

 普段から「真面目で人一倍の努力家」とチームメイトが評する3年生GKの率直な思い。DF鈴木大誠(3年生)やMF杉原啓太(3年)らは「熱いっすよね」「こいつのためにもやってやる。負けられねぇと思いました」と振り返る。涙ながらの檄を受けて、選手たちは金岡へ「一緒に頑張るぞ!」と応答。金岡は「本当に自分の思いが伝わってよかった」と言う。初めて見せた熱き守護神の涙。星稜高の選手たちは勝利へ向けて、さらに一つになった。

 金岡は「このまま負けたら中途半端な形でサッカーを終えることになると思った。この状況で受験勉強が始まっても、今度は勉強が中途半端になると。そのためにも、とにかく勝って最後までいって欲しい。勝ち上がることで自分がトレーニングする期間も伸びて、ベンチ入りするチャンスも広がるし、悔いなくできると思うので」と当時を振り返ると、「本当に思ったことを言っただけ。それでも3年間を思い出すとこみ上げてくるものがあったんです」とハニかみながら涙の理由を明かした。

 金岡の涙をきっかけに、さらにまとまりが増した星稜高は、この日の準決勝・日大藤沢高戦に3-0で勝利した。指揮を執る木原力斗監督代行は金岡について「練習の合間に勉強をしたり、本当に大変だとは思う。それでも彼のサポートはチームにいい影響をたくさん与えていると思っています」と話す。

 受験を控える守護神は、準決勝前日も、空き時間には一人で受験勉強を続けていたという。決勝戦は中1日で迎える12日に行われる。金岡にとっての高校サッカーも残るは1試合。ベンチ入りできるかどうかの瀬戸際だ。守護神は「あすの練習が最後のチャンス。自分が3年間で得てきたものを出し切りたい。メンバーに入れなかったとしても、できる形でチームに貢献したい」と力強く語った。

(取材・文 片岡涼)
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