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[プリンスリーグ関東]亡き母へ“母の日のプレゼント”、山梨学院CB大沼主将が浦和ユースから涙の白星!

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[5.9 高円宮杯プリンスリーグ関東第6節 浦和ユース 1-2 山梨学院高 埼玉スタジアム第3G]

 試合終了を告げる笛が鳴ると、山梨学院高のキャプテンマークを巻いたCB大沼士恭主将(3年)は目を涙で潤ませながらチームメートとハイタッチや抱擁を繰り返した。彼にとって、母の日である5月10日の前日に手にした白星は、亡き母へ捧げる“母の日のプレゼント”。特に後半は浦和ユースに一方的に攻め込まれる展開となったが、チームの精神的支柱は心から欲していた白星を勝ち取るためにチームメートと声をかけあい、自身も集中を切らさない守りで危険をかき消して首位撃破を達成した。

 母の弘子さんが52歳の若さで亡くなったのは昨年。大阪の実家を離れて山梨の強豪へ進んでいた大沼は「自分はお母さんっ子っていうか。母さん亡くなった後は落ち込んでいて、サッカーする気にもなれなかった」という。だが、悲しみを乗り越えて168cmの“小さな”CBは成長。「お母さんは長い間闘病していて。こっち(山梨学院へ)来る時からお母さんには『覚悟しておけ』って言われていた。自分は絶対に全国出てやるっていう気持ちで来ていた。お母さんが亡くなってからはお母さんのためにという気持ちが強くなった」。努力を続け、精神的支柱として、全国レベルの強豪をまとめる存在となった。

 その大沼は誰よりも強い想いをもって浦和戦に臨んでいた。「昨日の点呼の時に(吉永一明)監督が母の日の話をしていて。『母の日に気持ちを伝えたくても、伝えられない選手がここにはいる』って言っていて、それは自分のことだと分かっていた。その後、監督から呼ばれて『お母さんのためにも頑張ろう』と言われていて、きょう絶対に勝ってやろうと思っていた。試合終わって泣いてしまったんですけど、それ(白星を母の日のプレゼントにすることを)凄い意識していた」

 この日の勝利でチームは連敗を3でストップ。関東大会予選や全国高校総体予選へ向けて、悪い流れを断ち切った。大沼は09年度全高校選手権優勝の山梨学院を再び日本一へ導くために選手としての成長を誓う。「(168cmで高さがないので)カバーのスピードや裏への意識は考えている。足下がない分、声とか気持ち、カバーの部分では負けたくない。(大柄なCBに負けることなく)ちっちゃいからこそできるCBになりたい」。最愛の母や、大阪から時間をつくって応援に駆け付けてくれるという父、仲間たちのためにも頑張ることができる。「(母は)どっかで見てくれているんで、そのためにも自分は頑張ります!」。強い信念を持ってチームを引っ張る山梨学院の主将がこの日のようにチームメートたちと戦いぬき、今年度、全国舞台で歓喜に舞う。

(取材・文 吉田太郎)
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