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NIKE FCで“試合を決める強烈な個性”求めるトレーニング、8名が8月の「HYPERVENOM CAMP」へ

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 ナイキジャパンが手がける育成年代の特別強化プログラム「NIKE FC」は6月27日、今年最初のセッションをレッズランド(埼玉県さいたま市)で行い、中学2年生から大学2年生まで、54名のプレーヤーが参加した。今年のメインテーマは「決定力」。“試合を決める強烈な個性”を求めるトレーニングは「HYPERVENOM TRAINING」と名付けられた。

「NIKE FC」は10年に発足。「もっとうまくなりたい」「本気で上を目指したい」と願う育成年代のプレーヤーが所属チームのトレーニングの他に、エリートトレーニングを受けることによってその可能性を広げられるように、「プラスアルファ」を提供する“もうひとつのチーム”として活動を行ってきた。

 今回、“特別コーチ”としてトレーニングを指揮したのは、09年9月のオープン当初からFCバルセロナ・スクール福岡校で初代テクニカル・ディレクターを務めたイバン・パランコ。数時間に及ぶトレーニングが終わると、選手たちの輪に向かって彼はこう話した。

「わずかな時間で、すべてのコンセプトを伝えるのはとても難しい。でも、君たちはたった数時間のトレーニングで成長したし、わずかなヒントによって自分が変化したことを感じたと思う。ぜひ、その感覚を大事にしてほしい」

 計4時間のトレーニングメニューは多岐にわたった。四角形を作って動きながらボールを回すパス回し。「7対3+1(フリーマン)」のロンド、ハーフコートを3つのゾーンに分けた「8対8+1(フリーマン)」のスモールゲーム。さらに“決定力”を意識した「HYPERVENOM TRAINING」では、アタッキングエリアで行う「3対2+GK」、ハーフコートで行う「4対4+1(フリーマン)」のスモールゲームと続く。

 計4時間に及ぶトレーニングの中で、コーチのイバンは何度も笛を鳴らしてプレーを止め、そのトレーニングにおける「コンセプト」を伝えた。彼が選手たちに求めたのは、「考えること」だった。

 ただパスを受ければいいわけじゃない。どのような体の向きで、どのようなトラップをすれば次のプレイに移りやすいのか。どのようなコースを走れば、相手のマークを引き剥がせるのか。数的優位な状況で、どのようなパスを選択したら相手がイヤがり、効果的な攻撃を生めるのか。仲間がシュートを打ったら、自分は何をすべきなのか。どのようなポジショニングを取ることで可能性が広がるのか――。

 動き方、パスの受け方、パスのテンポ、体の向き、タイミング、視野の確保、考え方、ポジショニング、ファーストタッチ。正解を提示するのではなく、時にはクイズ形式にしながら、イバンは選手たちに「考えること」を促した。

「前に急ぐばかりが攻撃じゃない! 無闇に走るだけがゴールに近づくことじゃない! パスのテンポ、動きのタイミングをもっと考えて!」

「ファーストタッチは“技術”じゃない。ボールをどこに置くかによって、“戦術”が決まるんだ!」

「味方はどこにいる? それを活かすためには、どのタイミングでパスを出せばいい? どうしてうまくいったのか、どうしてうまくいかなかったのかを、もっと考えて!」

「日本の“頑張りますカルチャー”はとても大事。でも、ボールを走らせる。ボールを頑張らせるという選択肢もあるんだ!」

 決定力の向上を目的とする「HYPERVENOM TRAINING」では、スペースと時間を有効に、少ないタッチ数で作るための意識付けが徹底された。スペースと時間をコントロールする“個性”こそが、試合を決める――。そんなメッセージを読み取ることができる。

 トレーニング終了後、この日のために長崎から駆け付けた中学3年生のMF徳正弥(KICKS)に話を聞いた。彼は2年前から毎年このプログラムに参加し、今回が3度目。「うまくなりたい。プロになりたい」と力強く話す。

「ここに来ると高いレベルでプレーできるので、自分の力を高めたいと思って来ました。今日はトレーニングでは、自分に足りないところが分かりました。僕はいつも“前”ばかりを意識してしまうんです。パスを受ける時には常に前を向こうとするし、縦パスを出すことばかり考えてしまいます。でも、今日のトレーニングでイバンコーチの話を聞いて、違う選択肢もあることが分かりました。状況によっては、後ろにパスを出したほうが、縦に早く攻められることもあるし、自分が活きることもある。すごく勉強になりました」

 トレーニング終了後のミーティングで、イバンはこう続けた。

「“考えながらプレーすること”を習慣化させて、“考えなくてもできるプレイ”にする。そうやって少しずつ、自分の幅、自分の可能性を広げていくんだ。サッカーでは、本当にごくわずかな差が勝負を分ける。もしみんながプロの選手になりたいと願うなら、どんな小さなことにもこだわり、選手としての可能性を高めるために“細部”にこだわってほしい」

 そして次に、この日のトレーニングから8月の「HYPERVENOM CAMP」に進出する8名として、MF田中祐希(resfala)、FW横田風真(八潮高)、FW坂巻一輝(豊島学院高)、FW小山彩武(光明学園相模原高)、FW馬場航平(光明学園相模原高)、MF大崎泰河(多摩大附聖ケ丘高)、MF徳本魁人(多摩大附聖ケ丘高)、MF石井達大(実践学園高)が発表された。評価を勝ち取った8名はさらなるプラスアルファを得るため、8月に2日間の合宿に臨む。

 その一人、小山に話を聞いた。

「すごく嬉しいです。NIKE FCには前から興味があって、今回初めて参加しました。自分と周りの選手を比較して、自分に足りないところを知ることができたと思います。僕はFWで、フィジカルの強さに自信がある。そのプレースタイルを武器としながら、例えばパスを受ける時に体の向きやポジショニングを工夫することで、自分の特長をもっと活かせると感じました。チームに戻って、すべての面で上達して合宿に臨みたいと思います」

 イバンが言う。

「今日はとてもいいトレーニングだったと思います。選手たちはわずかな時間で変化したし、考えることの大切さを理解してくれた。僕には日本の子どもたちを指導した経験があるが、“決定力”について技術的に何かが足りないとは思わない。失敗を恐れる気質もあるかもしれないが、決して“心臓が小さい”とは思いません(笑)。だから、意識や考え方次第で、必ず上達するはずです」

 決定力を養うための特効薬は、「考える」こと。イバンはそう断言する。

「例えば、ゴール前でこぼれ球に必ず反応することは、決して簡単じゃない。自分の目の前にこぼれ球が落ちてくる可能性は、決して高くないから。でも、信じて走らなければチャンスは生まれない。信じて走れば、いつか必ずチャンスは来る。そういうすべての可能性を信じること。サッカーではそれが最も大切だと思うし、可能性があることを知るというためには、自分で考え、身に付けていかなければならないと僕は思う」

「NIKE FC」による特別プログラムは続く。7月20日にはレッズランド、同29日にはJ-GREEN堺(大阪府堺市)で行われ、それぞれのプログラムで選出されたプレーヤーたちは、さらなるレベルアップのための特別プログラムである「HYPERVENOM CAMP」で“強烈な個性”を磨く。

[写真]評価を勝ち取り「HYPERVENOM CAMP」への進出を決めた8名

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