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[クラブユース選手権(U-18)]創設4年目、当初はメンバー不足でゲームできず、転校も考えた・・・長崎U-18が劇的な全国大会初勝利!!

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[7.23 日本クラブユース選手権(U-18)大会GS第2節 徳島ユース 0-1 長崎U-18 宮城総合]

 時計の針は80分を既に2分回っている。アディショナルタイムの掲示は3分。もう時間がほとんどないことは誰もがわかっていた。左サイドにボールが出る。「アディショナルタイムに入ってチャンスも少ないと思ったので、自分が決めるしかないと思って」左足を振り抜いた野中魁のシュートは、信じられない軌道を描いてゴール左隅へ突き刺さる。「あれが彼の特徴なんです。シュートはいっぱい打つんですけど、簡単なシュートほど外すんですよ。それでああいう難しいシュートがたまに入ったりするのでね」と苦笑した原田武男監督もベンチで喜びを隠せない。全国初勝利を引き寄せる劇的な決勝弾。「決まった時は本当に泣きそうになりました」というキャプテンの池田久哉は、歓喜の輪に加わりながら様々なことを思い出していた。

 今回の第39回日本クラブユース選手権(U-18)大会で初めて全国の舞台に立つことになったV・ファーレン長崎U-18。12年に創設されてまだ4年目という新興チームは、13年度から本格的に活動を開始したが、U-15の一期生に当たる池田たちがU-18へ昇格したその年のメンバーはわずかに9人。初めて挑んだクラブユース選手権の九州予選ではロアッソ熊本ユースに1-14という大敗を喫している。「最初は9人しかいなかったので大会にも出られなくて、ジュニアユースから人を借りたりしていたので、ハッキリ言って惨めというか、『他の学校に転校しようかな』と思うくらい正直しんどかったですね。練習ではゲームもできないですし、試合感覚もなくなってきて、1回本当に辞めようと思ってコーチに電話したんです」と当時を振り返る池田。その年のJユースカップでは予選リーグで結果的に日本一となるヴィッセル神戸U-18と対戦し、やはり0-14で大敗した。

 しかし、「本当にコテンパンにやられた中でも、そこでやられたことで学ぶことは非常に多かったですし、『あのくらいの力がないと日本一にはなれない』ということを僕らが言うより彼らは体験してきているので、そういった意味では僕らも指導はしやすかったです」と原田監督。日本一への“モノサシ”ができた彼らは、敗戦を重ねながらもそれを基準にして、日々練習に明け暮れる。そして今年の5月。今大会に繋がる九州予選に臨んだ長崎は、わずか2年前に14点を叩き込まれた熊本を1-0で下すと、大分トリニータU-18には惜敗したものの、サガン鳥栖U-18を3-0で倒して、悲願の全国切符を手に入れる。「立ち上げて早々だったのでメンバーが少ない中、彼らが1年生の時から3年間やり続けた結果です」とチームを創設時から率いてきた指揮官も認める彼らの努力は、この2年でチームを取り巻く環境を劇的に変えていた。

 22日に開幕した全国大会。初戦で優勝候補の一角にも挙げられる鹿島アントラーズユースと激突した長崎は、先制を許しながらも一時は追い付く健闘を見せる。結果的には1-2で敗れたとはいえ、敵将の熊谷浩二監督も「長崎さんも非常にマジメな良いチームですから、非常に厳しい戦いだろうと思っていました」と話すなど、その力は強豪相手にも間違いなく通用した。迎えた2戦目の徳島ヴォルティスユース戦。前半は相手のシュートを0本に抑え、一方的に押し込みながらも無得点に終わると、後半は決定機の数も徳島が上回っていく。坂本尚幸が相手の決定的なシュートをライン上で必死に掻き出せば、守護神の山本祥輝は枠内ギリギリを襲ったFKをファインセーブで何とか凌ぐ。そして冒頭の場面。土壇場で野中が記録したゴールは、そのまま決勝点となる。

 応援席では涙を拭う方の姿も見られた。おそらくは選手の保護者の方だろう。息子たちの苦労する姿を一番間近で見てきたからこその、様々な想いの詰まった涙。「最初はずっと負け続けて苦しい想いしかなかったので、この3年間積み上げてきたものを全国の舞台で出せて勝ったというのは本当に嬉しかったですし、自分たちがしてきたサッカーが間違ってはいなかったんだなと思いました。本当にこのチームに残って良かったです」。試合後、池田は良く日に焼けた笑顔を見せながら、そう言葉を紡いだ。

 大会は続く。全国初勝利の感慨を問われた原田監督は「子供たちには『常に高い目標を持ってやろう』と、『一番高い所を俺らは見てきた訳だから、1つでもそこに近付けるように』というのを言い続けていますし、本当に今日の勝利というのは嬉しいんですけど、僕もそうですし彼らも満足はしていないと思うので、明日からまたチャレンジしていきたいなと思います」と視線を前へ向ける。「僕たちの代のほとんどは中学1年から一緒にやってきたメンバーなので、みんなの気持ちもわかりますし、仲は良いですね。まとまりがあって最高だと思います」と池田。6年間の集大成。彼ら3年生にとって最高の仲間と戦うことのできる最後の夏は、まだまだ終わらない。

(取材・文 土屋雅史)
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