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[選手権予選]U-17代表FW高橋負傷から「変わった」埼玉栄が川越東に5発逆転勝ち:埼玉

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[10.12 全国高校選手権埼玉県予選決勝T2回戦 埼玉栄高 5-1 川越東高 埼玉スタジアム第4G]

 12日、第94回全国高校サッカー選手権埼玉県予選決勝トーナメント2回戦が行われ、07年度以来なる全国大会出場を目指す埼玉栄高と川越東高との一戦は5-1で埼玉栄が逆転勝ち。早大本庄高と戦う3回戦へ進出した。

 エースの負傷がいい意味でチームを変えた。埼玉栄は9月13日の県1部リーグ・西武台高戦でU-17日本代表のエースFW高橋利樹主将(3年)が左腕を骨折。全治8週間の診断を受け、10月10日の1回戦、10月12日の2回戦出場は絶望視された。チームも同リーグで連敗が続く中でエースの負傷。だが、大目標の選手権予選が迫る中、自然と高まってきていた選手たちの意識は、この危機でさらなる自覚を促した。MF塩川尚輝(3年)は「ずっと利樹に頼っていたのがあった。それでも何枚もマークつかれて崩せなくて、自分たちの時間ができなくて失点してという試合が続いていた。(だが高橋が負傷して)『自分たちがやんなきゃ』とみんな思ったと思う」。
 
 個々の技術は高く、スピードのあるサイド攻撃という武器もある。だが、これまではどうしても高橋頼みになりがちなところがあった。そのチームが見せた変化。腕にプレートが入ったまま試合に臨むことを決意し、一週間前に合流した高橋は「1対1とか練習の中でも激しさが見えた。チームとして意識高くやってくれている。(以前は)荷物とかも後輩(が持ったり)とかだったけれど、自分たちの代とかもやってくれていたし、自分がいなくても全然大丈夫なチームだなと思いました」。

 そして当初は出場困難とされていた高橋が初戦から出場。この2回戦でもピッチに立った。塩川は「自分たちがやんなきゃいけないという気持ちと、利樹がいるという安心感がいい試合になった」。この日は試合開始直後の2分、川越東FW小林大祐主将(3年)の左CKからDFの前に入ったMF宮倉樹里杏(1年)に先制ヘッドを決められてしまう。それでも埼玉栄は15分、塩川のスルーパスで抜けだしたFW森山虎太郎(3年)がGKとの1対1を制して同点の右足シュートを決める。

 勇気を持って高いラインを敷いてきた川越東にシュートシーンをつくられ、インターセプトからMF石井皓士(2年)が放った左足シュートやMF小田一貴(3年)の右足シュートにゴールを脅かされた。また川越東GK谷崎快斗(2年)にDF背後のスペースを消されるなど攻めあぐねたが、40分に右サイドから仕掛けた高橋がDFをかわして出したラストパスをMF蔵川慎吾(3年)が左足で叩くなどチャンスをつくった埼玉栄は後半に加速する。9分、左SB飯田勇吹(3年)の右CKをGKの前に飛び込んだ塩川が頭で合わせて勝ち越し。さらに10分には右サイドのスペースを突いた高橋の折り返しを塩川がゴールへ流し込んで3-1とする。

 CB赤荻翔基(3年)を前線に上げてまず1点差にしようとする川越東の反撃を受けたものの、埼玉栄は33分に交代出場のFW宮崎直樹(3年)のアシストから右SB鈴木翔太(2年)が右足シュートを沈めて4点目。そして39分には再び右サイドを攻略し、今度は鈴木のラストパスを宮崎がゴールへ沈めた。埼玉栄は主力の右SB高野俊晟(3年)も鼻骨骨折で欠場するアクシデントもある中、16強入り。稲垣忠司監督はチームが成長してきたポイントについて「今まで高橋利樹、高橋利樹とやってきた。それ以外の選手たちが取れるようになってきたのは強み。みんなで何とかしようとする姿勢が出てきた。それが成長してきたところかなと思います」と目を細めた。

 相手がボールサイドに寄ってきている中、空いているスペースを上手く活用できず、攻略するまでに時間を擁した。精度の課題もある。指揮官も「スペースを使う狙いはできたのはいいけれど、至るまでの過程が未熟」と指摘。より判断の向上も求めたが、高橋の負傷によってSBから中盤へ再コンバートされた塩川が存在感を発揮し、この日は高野に代わって起用された鈴木が1得点1アシストと勝利に貢献した。交代選手も力を発揮するなどチームの雰囲気はいい。高橋は「まず県を取りたい」。8年ぶりの全国へ、エース頼みから「変わった」埼玉栄の士気は高まっている。

[写真]後半33分、埼玉栄は右SB鈴木のゴールで4-1とする

(取材・文 吉田太郎)
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