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[選手権予選]粘って、走って、DF東岡が延長FK弾!堀越が全国総体4強の関東一破る!:東京A

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[10.18 全国高校選手権東京都Aブロック予選準々決勝 関東一高 1-2(延長)堀越高 大泉高G]

 第94回全国高校サッカー選手権東京都Aブロック予選は18日に準々決勝4試合を行った。今夏の全国高校総体で東京都勢として9年ぶりとなる準決勝進出を果たした関東一高と91年度以来24年ぶりの全国選手権出場を狙う堀越高との一戦は延長戦の末、堀越が2-1で勝利。堀越は11月7日の準決勝で多摩大目黒高と戦う。

 関東一は夏の全国大会でV候補の大津高や広島皆実高、清水桜が丘高といった強豪を打ち倒して堂々の4強入り。同大会優秀選手のMF冨山大輔(2年)、MF道願翼(3年)、FW岡崎仁太朗(3年)、岡崎とともに大会得点王(他2名)に輝いたFW鈴木隼平主将(3年)らを擁して今大会も本命視されていたが、その強豪を堀越が飲み込んだ。1-1の延長後半3分、堀越はカウンターからMF齊藤一輝(2年)のスルーパスに反応したFW照井基也(2年)が馬力ある動きで一気に抜けだそうとする。関東一はカバーしたCB鈴木友也(2年)がPAやや外側でのチャージでよくストップしたが、ファウルの判定。堀越にFKが与えられた。キッカーは同じく立候補したDF富樫草太主将(3年)を「信じろ」と制止したDF東岡信幸(3年)。「きょうは異様に落ち着いていて、入る気がしていた」という背番号20がゴール正面左寄りの位置から右足で巻くように狙った一撃が、鋭く変化して逆サイドのゴールネットへ吸い込まれた。

 衝撃的な一撃が決まると、キッカーの東岡は飛び上がって富樫と歓喜の抱擁。勝利を信じて応援を続けていた堀越の応援席が沸き返った。このゴールで勝利へ大きく近づいた堀越に対し、関東一も諦めずに反撃する。だが、8分にDFのマークを振りきった岡崎がDF唐木澤友輝(3年)の左クロスに合わせた右足シュートは枠上。10分にも左クロスを鈴木隼が落とし、混戦から冨山が右足ボレーで狙ったが、GK横山洋(3年)と堀越の紫白の壁に阻まれてしまう。まもなく、大ピンチを全員で乗り越えた堀越の勝利を告げるホイッスル。関東一の選手権初出場の夢はここで潰えた。

 堀越の佐藤実監督は「(関東一は)力的なところとかは彼らは凄く高い水準にありますし、それを全国で証明している。(それに対して)我々は何ができるか、関一さんが相手に決まってから1か月弱ですけど、準備してきました。粘り強くやるというところと、ゴール前いくら剥がされても点取られないようなことというのは彼らはひとつイメージがあった。非常によくやったかなと思います」。堀越は日大豊山高との2回戦で走り負けていたこともあってこの1か月弱の間、走力を重点的に強化。ナイターで行われた東京都2部リーグ戦の翌朝8時に集合して時間走(クーパー走)などのメニューを行うなど、かつてないほど走りこんできた。指揮官は「関一さんのレベルが高くて、ふつうにやったら勝てないのが分かっているから。それをやって初めて同じ土俵に立てるかな、というところだったので、そこをみんながやり切れたのは凄く大きかった」と振り返ったが、主将の富樫も「日大豊山戦が終わってから走って、メンタル面を鍛えられて、走ることだったり、攻められても耐えられるところは強くなったと思う」と走りで得られた力を勝因に挙げていた。

 自分たちのやってきたことを信じて戦った結果の勝利だ。前半13分、関東一は道願のグラウンダーの右CKを手前の2人がスルーし、最後は鈴木隼が右足ダイレクトで決めて先制ゴールを奪う。だが、リードされても富樫が「(失点は)事故みたいな感じ。気にしないで自分たちのいいところを信じてやっていました」という堀越は気落ちすることなく試合を進める。関東一は巧みにスペースへボールを運び岡崎や鈴木隼が追加点を狙うが、堀越は富樫、東岡、DF小澤颯(3年)の3バック中心に対応。そして、カウンター攻撃を警戒してか関東一がやや引き気味に試合を進めていたこともあってボールを保持した堀越は、敵陣でプレーする時間帯を増やす。FW新井真汰(3年)がPAでのオーバーヘッドキックでボールを繋いでそれに富樫が飛び込み、インターセプトから右サイドを突いた俊足MF小磯雄大(2年)がクロスへ持ち込むなど反撃した。

 後半、堀越は2列目に位置するMF齋藤拓磨(3年)とMF加藤悠矢(2年)のプレッシャーが強度を増すなど、関東一に思い通りの攻撃を許さない。迎えた10分、カウンターから敵陣へボールを運んだ堀越はMF広瀬智也(2年)からのパスを左中間で受けたMF斉藤一輝(2年)が縦へのフェイクを入れてから対応したDF2人の間を通す右足シュート。「(DFが)2枚いてその間を狙って。入ると思わなかった。関一は前に出てこないでゴール前を守る感じ。外に開いてもずれたりしないので、監督とかキャプテンにロングシュートを狙うことを言われていた」。これが逆サイドのゴールを見事に射抜く鮮やかな同点弾となった。勢いづいた堀越は小磯が抜群のスピードで右サイドを駆け上がり、新井や交代出場FW鈴木龍河(3年)のがむしゃらなプレーが2点目を予感させる。対して関東一は、守備面こそ安定していたものの、攻撃面でなかなかギアを上げることができない。26分に冨山の左CKをファーサイドの左SB石島春輔(2年)が頭で合わせたが、これをGK横山がビッグセーブ。この後、関東一は交代出場のFW新翼(3年)、MF堤優太(2年)がドリブルでサイドを破ったが、いずれもゴール前で堀越DFがクリアし、1-1で延長戦へ持ち込んだ。

 そして押し込まれる時間の長かった延長戦で逆に1点を奪い取った堀越が勝利。主軸FW高橋快斗(3年)が欠場したほか、負傷者やコンディション不良の選手が出た中での戦いで敗れた関東一の小野貴裕監督は「(アクシデントがあったが)凌がないといけない試合だった。素直に堀越の方がきょうゲームは良かったと思いますね。守備が破綻していたわけではないのでウチも上回られた訳ではないと思う。だが、相手を攻略するという部分でいうと、アイディアだとかがちょっと力がなかった」。4-4-2から3-5-2のシステムへスイッチして延長戦では流れを取り戻していたが、勝負どころで上回ることができなかった。

 一方、決勝FKを決めた堀越DF東岡は「やる前から全然負ける気がしなかった。あんまり失うものがなかったので、気持ち入れてやるだけだと思っていました。『食ってやるだけだ』、キャプテン中心にそういうモチベーションでした」と振り返る。そして成し遂げられた全国的にもインパクトのある勝利。だが、昨年度の決勝で三鷹高に敗れて全国進出を逃しているチームは「ここから」の思いを強く持っている。全国に出てこそ価値高まる1勝。決して充実したタレントを擁している訳ではないが、粘り強い守りからスピードある攻撃で扉を開くか。斉藤一は「関一の分まで全国行きたいですね」と語り、佐藤監督は「『ちょっとやるじゃん』とOBの皆さんが思ってくれるように。昔みたいな綺麗ないいサッカーはできないですけど、今の彼らなりの力でそういうスタイルで頑張ってやっていますというところは見せられるかなと思います」。全国4強の相手に勝ち切ったこの日のように自分たちを信じて戦い、約四半世紀ぶりとなる全国切符を勝ち取る。

[写真]延長後半3分、堀越はDF東岡が決勝点となるFK弾!

(取材・文 吉田太郎)
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